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カーボンフットプリントは曲がり角Ⅳ(CFP宣言認定製品、マーク、グリーンエネルギー認証制度、GEマーク)

「グリーンエネルギー」には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギー(再生可能エネルギー)から発電された「グリーン電力」と、太陽光、雪氷などの自然エネルギーから得られた熱である「グリーン熱」がある。ともに、再生可能エネルギーである。
「グリーンエネルギー」は環境に良好なエネルギーであることから、エネルギー(電力と熱)そのものの価値と切り離して、グリーン(環境良好性)という「環境付加価値」を「グリーン電力証書」、「グリーン熱証書」という形で取引することが可能となっている。これを「グリーンエネルギー認証制度(システム)」と呼ぶ。
2002年に東京電力など主要電力会社が出資して「日本自然エネルギー株式会社」が設立され、グリーン電力の取引が先行して開始された。その後、数社が参入した。
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2008年5月にグリーンエネルギーを普及させるために、経済産業省資源エネルギー庁は財団法人日本エネルギー経済研究所グリーンエネルギー認証センターに委託し、『国民のグリーン電力証書等に対する認知度の向上を図るとともに、消費者がグリーン電力等を使用した商品を信頼して購入できることを目的』に「グリーン・エネルギー・マーク(GEマーク)」を制定した。製品やサービスなどに使用したエネルギーをグリーンエネルギーで賄ったことを示すものです。
また、2008年6月に経済産業省資源エネルギー庁の指導のもとに、「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」が創設された。グリーン電力の普及に協力的な事業者、証書発行事業者、発電事業者、自治体などの情報交換の場である。
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グリーンエネルギー認証制度は着実に広がりを見せているが、GEマークも消費者には認知されておらず、グリーン・エネルギー・パートナーシップも活動を停止しているかのようである。
これと同様な構図が「カーボンフットプリント」にも見られる。
●所管:省経済産業省環境調和産業推進室/資源エネルギー庁新エネルギー対策課
●マーク:「カーボンフットプリント・マーク」/「グリーン・エネルギー・マーク」
●情報交換:「カーボンフットプリント日本フォーラム」/「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」
●事務局:社団法人産業環境管理協会/財団法人新エネルギー財団と財団法人日本エネルギー経済研究所
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CFP宣言認定製品には「カーボンフットプリント・マーク」を使用することができる。しかしながら、前述したとおり、このマークの認知度は低く、また、2012年度からCFP制度の事業運営を産業環境管理協会に民間移行し、2013年度から様々な手続きとマークの使用が有料化されることから、CFP制度が消滅しかねない様相を見せている。
CPFに関する情報交換の場である「カーボンフットプリント日本フォーラム」も活動停止になりかねないのである。

ともあれ、カーボンフットプリントは曲がり角に来ており、CFP宣言認定製品をマークで消費者にアピールすることは二義的なこととして、その基礎となるデータの収集と精度を上げ、公表し利用できるようにすることに重点をおき、事業者にCO2削減を促していくことが必要である。

by ecospec33 | 2012-11-29 15:44 | 〇カーボン・フットプリント  

カーボンフットプリントは曲がり角Ⅲ(CFP宣言認定製品、LCA、パレート図、CO2見える化、低炭素化社会)

前回、「CFP(カーボンフットプリント)宣言認定製品」の品目数増加の推移を示した。次に、このCFP認定製品を有する全121社の事業者別CFP認定品目数のパレート図を示す。
事業者の中には60を超える品目を有する事業者(企業)もあるが、その多くが1、2品目に留まっており、上位10社だけでCFP認定製品の全572品目の50%を占め、上位37社で80%を占めていることが分かる。
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CFP認定製品の68%を占める上位20社とその認定製品数を列挙する。これに加えて、2008年度に経済産業省が大々的に取り組みを開始した「CFP制度の実用化・普及推進研究会」の参加企業31社を右欄に示す。
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これによって、2008年に組み込まれた参加企業の大半が脱落していることが明確である。
特に、イオン、日本生活協同組合を除いた多くの小売り業が脱落したことによって、小売り業の力を借りて消費財メーカーに協力させるという、経済産業省の構想は崩れたのである。


また、上位10社の5社が2012年1月に開始された「システム認証方式」の登録者であるが、登録後に、この方式を活用したのは2社のみに限定されている。
ちなみに、「個品別検証方式」が製品ごとに第三者検証を行なう方式に対し、「システム認証方式」とは事業者がCFPの算定と検証し、登録と公開申請を行うシステムを構築し、それを第三者が認証することで、個別のCFP検証の手続きを経ることなく、認証を受けた種類の製品について、簡便にCFP登録することができる方式であり、現在6社が登録されている。

2009年9月に、日本LCA(ライフサイクルアセスメント)学会が核となって「カーボンフットプリント日本フォーラム(CFP-Japanフォーラム)」という任意団体が創設された。『低炭素社会実現のため、民間主導での産学官民プラットフォームとして・・・』というCPFに関する情報交換の場である。その事務局は「CFP制度試行事業」の事務局と同じ産業環境管理協会であることから、民間主導で発足されたのではなく、経済産業省の指導によって発足されたと言って良い。
そこには61の企業、10の民間団体などの参加が公表されている。しかしながら、参加企業61社のうちCFP認定製品を有するのは15社のみであり、その割合は約25%である。事業者はさまざまな思惑からこのフォーラムに参加しているのだろうが、様子見の状態となっている。
この実態から、産学官の内「学官」はやる気十分であっても、「産」は遠巻きにしている姿が透けて見える。

これらを総括すると、一部の事業者はCFP制度に積極的に取り組んでいるが、多くの事業者は消極的であり、CFP制度の理解が浸透していないことが明白となった。
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2012年度行政事業レビューによれば、2009年から2011年までの3年間の「CFP制度試行事業(CFP制度構築等事業)」に支出した国税は約15億円であった。この費用対効果については様々な見方が出来るが、2013年度からは事業者がCFPに関わる検証と認証、研修等および登録と公開の費用などを負担しなくてはならない。
「金の切れ目が縁の切れ目」となって、遠巻きにしていた事業者は遠ざかる。
CFP制度はCO2を直接的に低減する管理手法ではなく、消費者の購買行動などが事業者のCO2低減行動を促す可能性がある(かも知れないという)管理手法である。このような手法では事業者が納得するようなインセンティブがなく、ましてやCFP制度に法的根拠がないのであるから、事業者はさらに遠ざかるに違いない。

この4年半のCFP制度構築には日本LCA学会の関係者の活躍を見過ごすことが出来ない。
低炭素社会構築という高邁な精神を持っているかは知る由もないが、彼らは国家の先兵となって行動しているという誇りと、国家の威光を借りて若干の優越感を持って、消極的な企業内と統制が取りにくい業界内で多大の努力をされた方もいるだろう。
しかしながら、CFP 制度におけるLCAは実態の分析と把握であり、その後のCO2低減の改善を担保しているものではありず、またCFPマーク(ラベル)は製品の一部の側面を表しているに過ぎないことを、冷静に判断してもらいたいものである。
多分に個人の資質によるのだろうが、時流に担ぎ出される一部の過激な有識者に縛られては社会が混乱するだけである。

by ecospec33 | 2012-11-21 09:32 | 〇カーボン・フットプリント  

カーボンフットプリントは曲がり角Ⅱ(CFP、PCR 、増加の推移、CO2の見える化、産業環境管理協会)

2008年6月から経済産業省が主導して進めた「CFP(カーボンフットプリント)制度の実用化・普及推進研究会」と2009年度から2011年度の3年間の「CFP(カーボンフットプリント)制度試行事業」、2012年度から本事業が民間に移行され、社団法人産業環境管理協会(JEMAI)が継承して進めている「CFPプログラム(カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム)」、この約4年半の成果(評価)は、消費者のCFTの認知度(知名度)向上および事業者による「CFP(カーボンフットプリント)宣言認定製品」の品目数増加と業界団体による「認定CFP-PCR(PCR:Product Category Rule、商品(製品)種別基準)」の件数増加で示すことが出来るだろう。
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消費者のCFTの認知度については、環境省の「消費者のアンケート調査結果」(2012年1月)によって知ることが出来る。他の環境に関わるマークに比べて、カーボンフットプリントは非常に低調な結果であった。
事業者による「CFP宣言認定製品」の品目数増加と業界団体による「認定CFP-PCR」の件数増加については、その推移を「見える化」する。
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両者とも着実に増加し、11月15日現在、CFP宣言認定製品の品目数は572件、認定CFP-PCR は80件に達している。しかしながら、CFT認定製品の品目数は認定PCRの件数の約7倍に留まっており、CFP認定製品の品目数は極めて少ないと言ってよいだろう。
CFP認定製品の製品群別割合は次のとおりである。
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これについて経済産業省は「食品、生活用品、衣料品、印刷、オフィス関連の認証商品が多い。 複雑なサプライチェーン構造を有するエネルギー使用製品の参加が少ない。」と表現する。ここで、『複雑なサプライチェーン構造を有するエネルギー使用製品』とは、『グローバル・サプライチェーンの中で“ものづくり”を進める、海外を含む複雑で長いサプライチェーンを有する電機・電子製品など』を示す。
このことから、経済産業省の狙いを知ることができるだろう。経済産業省は国内で消費される食品などの最終消費財に重点を置いているのでなく、国際競争力を有する製品に重点を置いているということである。
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2012年2月に産業環境管理協会はCFP制度の事業運営を民間移行するに際し「当面の目標」として、数値を掲げている。
認知度、CFPマーク使用商品の市場流通は何とも推定出来ないが、認証商品は現在の状況のままで増加すれば、2014年末に達成するだろう。
「当面(当座、さしあたり、暫くの間)の目標」は、昨日衆議院を解散させた野田首相の「近いうち」よりも曖昧な表現である。達成の期間さえも決めていない目標、すなわち目標とは言えない「目標」である。
(次回に続く)

by ecospec33 | 2012-11-17 08:01 | 〇カーボン・フットプリント  

カーボンフットプリントは曲がり角Ⅰ(CFP、CO2、見える化、ISO140067、低炭素化、経済産業省)

2008年6月に経済産業省が「CFP(カーボンフットプリント)制度の実用化・普及推進研究会」を立ち上げ、2009年度から3年間、経済産業省が主導して進めてきた「CFP制度試行事業」が終了し、2012年4月から、この事務局を担っていた経済産業省所管の社団法人産業環境管理協会(JEMAI)が「CFPプログラム(カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム)」の運用を開始した。

このことは、経済産業省と関係する環境省、農林水産省、国土交通省が進めたCFP制度化に向けた事業が終了し、CFP制度の運用が民間に移行させたことを示し、事業者の『製品のCO2の「見える化」』に向けた行動が事業者の主体性に任されたことを意味する。
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一方、このCFPの国際規格であるISO140067(Carbon Footprint of Products Requirements and Guidelines for Quantification and Communication)は、予定より約1年半遅れて、2013年7月に発行される予定である。
2008年にCFPに関する国際規格化への機運が高まり、その年にイギリスが英国規格(BSI)のPAS 2050を発効させている。日本においては経済産業省がこの国際規格の策定に向けて力を発揮するために、日本LCA学会の協力を得て、CFP取り組みを事業者に要請した一面があることを認識しておきたい。
このことは、2008年6月9日に、当時の福田首相が発表した『「低炭素社会・日本」をめざして』の中で知ることが出来る。

「2.国全体を低炭素化へ動かすしくみで」で、排出量取引、税制改革(環境税)、見える化の三つの方策を挙げ、次のように述べている。
『見える化:自分の出す炭素に自ら責任を持つことが求められるのは、産業界だけの話ではありません。国民一人ひとりが、低炭素社会の実現に向けて、賢く、そして責任ある行動をとることが必要となります。  そのためには、CO2排出の見える化によって、消費者が的確な選択を行うための情報を提供すること、これが重要となります。
イギリスなどでは、製品や食品の製造から輸送、廃棄に至る過程で排出されるCO2を測定して商品に表示する、カーボン・フットプリント制度やフードマイレージ制度が試行されております。これを国際的にも広げていこうという動きがございます。
我が国としても、このカーボン・フットプリント制度などの国際的なルールづくりに積極的に関与して、そして、わが国の国内での削減を進めるために、来年度から試行的な導入実験を開始したいと思っております。そのための準備を関係省庁に指示するとともに、産業界にも協力を要請してまいります。これが軌道に乗れば、世界最大級の取組みになると期待されます。』
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日経新聞の2008年6月19日の一面に、この行政の動きに慌てた事業者の記事が掲載された。これは行政におもねる日経新聞の誤報とも言われているが、その後のCFPの取り組みは行政、事業者にとって容易ではなかった。
(次回に続く)

by ecospec33 | 2012-11-15 08:20 | 〇カーボン・フットプリント  

下水道を考えるⅧ(下水道普及率、水質汚濁防止法、排水処理、特別免除、上水道、業務移管、ごみ処理)

1958年に旧法が廃止され、下水道法が制定されたが、水質汚濁防止法が制定された1970年度の下水道普及率は20%に達していなかった。その1970年代の前半に、水質汚濁防止法に基づいて特定施設を有する工場には排水処理設備が完備され、その排出水は河川などの公共用水域に放流されてきた。

「下水道法」には、工場の付近に下水道管が通ったならば、河川放流していた排出水を下水道に接続しなくてはならないという規定がある。
それには、特別免除措置のただし書き付きの条項があり、また違反した場合の罰則規定は見当たらない。
『第十条(排水設備の設置等) 公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従って、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない。ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。』

既存と新設の工場については、排水処理後の排出水を下水道に接続する問題に直面することがあるだろう。
これまで河川などの公共用水域に排出水をタダで放流していたが、下水道に接続することによって応分の費用負担が発生する。この年間数億円にのぼるであろう出費が、工場の存続にも影響を与える大問題となる。
とかく、企業経営者ばかりでなく工場経営者は排水処理の管理に人手と費用がかかるから、下水道法流の方が安価で心配もいらないと安直に考える。しかしながら、下水放流をするにしても規制値があり、それをクリアするためには排水処理設備が必要となり、その維持管理が必要となる場合が多いことを認識していないのである。

次のような事例があることを認識するが必要である。
●既存の工場:
毎年、下水放流への特別免除の許可を得ている関東地方の工場では、高度(三次)処理の設備を施し、その管理には最善を尽くすよう心掛けていた。ただし、工場事務所の汚水は下水放流である。
中国地方では工場前の道路に下水道本管が新たに敷設されたため、市から河川放流に代えて接続を要請されたが、放流の特別免除をお願いし、認められた。
関西地方では市の下水道事業の赤字に対し、市議会が問題視しているからとの理由で、河川放流に代えて接続を要請されたが、一部の排出水を流すことで納め、出費を抑制することができた。
●新設の工場:
関西地方と東北地方の工場を立地する条件の一つに、排水処理後の排出水の海域へ直接放流を加えることで、下水放流の特別免除措置を得た。
●製造施設の増設:
関東地方の既存工場について、増設される製造施設の排出水を下水に接続するよう市からの要請あり、工場経営者らの「下水道財政が赤字だから協力すべき」と綺麗ごとの主張どおりに要請を受け入れた。
しかしながら、その結果は下水放流のための排水処理施設を建設し、また毎年数億円の費用負担となった。工場経営者らはその後企業経営者と格上げになったが、企業経営者として、また企業経営にとって汚点となる、その場逃れの決断であったとの疑念は残る。

これらの事例から、『下水道法での排水区域に組み入れられていたとしても、工場の排水処理施設は水質汚濁防止法に従って設置されたものであり、排出水は水質汚濁防止法または条例に従って河川などに放流しているのであるから、下水放流の特別免除を申し入れることが出来、免除を取りうる。』という結論が導き出せるだろう。
下水道法と水質汚濁防止法の制定には社会背景と目的の違いがあり、下水道という社会基盤の整備には長い期間が必要であった。これに対し、水質汚濁防止法に基づいて短期間で作られた工場の排水処理設備が、下水道が整備されるまでの繋ぎであったはずはない。
基本的な考え方として、下水道の赤字体質を作り出したのは行政の責任であり、その赤字を補填するために工場の排出水を下水道に放流させるという、行政からの要請に軽々しく従ってはならないということである。
全ての工場排水が適用されるとは言えないが、中西準子先生の『工場排水と家庭下水の混合処理の矛盾(批判)』という大命題もあり、また、先生は賛同するか分からないが、『工場の排出水が中小河川の渇水を防止する役割を担っている』ことを忘れてはならない。
さらに、工場の排水処理設備と行政の下水道処理施設という、二重の社会インフラによる社会コストの増大問題もあり、下水に流すという安易な判断は、社会的に許されないのである。

2012年8月に閉鎖されたアサヒビール西宮工場では古くから専用の下水道管を通して下水放流しており、当然ながら、下水放流の規制値を守るための大規模な排水処理設備を備えていた。阪神大震災によって、その下水道管が壊れ、これによって操業の再開が大幅に遅れたと聞いている。
これは、下水道放流のリスクという視点から付け加えておく。

下水道、汚水処理について、様々な観点から8回にわたり連載したが、今回で最終としたい。
さいごに・・・・・
家庭から排出される「一般廃棄物のごみ」の収集・運搬・処理の事業の全てを市町村が管理しているが、家庭から排出される「一般廃棄物のし尿と生活雑排水」、いわゆる汚水の収集・運搬(下水道管)事業を市町村が管理し、処理(流域下水道)事業を都道府県が管理している。
また、東京都の上水道事業はここ数年間で、一部の市を除いて市から東京都に業務移管されている。
生活に密着した上水道、下水道の事業は都が担っているが、ごみ処理事業だけが市に取り残されている。これは、東京都だけの問題でなく、他の府県の問題でもあるだろう。
自宅のある小金井市は自前のごみ焼却施設を持たず、近隣の市町村に委託して処理してもらっている。それがうまくいかず、市長の辞職にも発展したのは、つい数か月前のことである。
一市町村では解決できないごみ処理事業について、上水道、下水道の事業と同様に、都が真剣に取り組まなくてはならない。
・・・・という結論であった。

by ecospec33 | 2012-11-07 06:29 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅦ(技術と法令の歴史、テムズ川、散水ろ床、活性汚泥法、水質汚濁防止法、浄化槽法)

産業革命が終盤を迎えた1800年代の初めのヨーロッパでは、ロンドンなどの大都市に人口が集中する社会状況にあり、近代的な下水道が整備されつつあったが、大地への放出と農地への還元が主流であり、河川への直接放流が当たり前の時代であった。このため、テムズ川では悪臭が発生し、国会が開催できなくなるほどであったという。
1848年から52年にかけて、テムズ川に下水を放流している下流から取水した水を飲料した方が上流よりも、伝染病であるコレラによる死亡率が高いことが突き止められたが、これを防止するための本格的な下水処理施設の建設は1895年以降であった。
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日本でも明治時代の初めから下水道が整備され、1922年に日本で初めての下水道処理施設(sewage treatment plant)三河島汚水処分場で運転を開始した。先進都市のロンドンに遅れること、約30年であった。
その処理法は1870年代から英国で開発が進められ、1895年から1920年にかけて多数の下水処理施設の建設で採用された『散水ろ床法』(Filer bed, Biological filter, Trickle filter)であった。英国では現在も中小規模の下水処理施設で採用されているが、ハエの大量発生ばかりでなく、ろ床に付着した嫌気性汚泥を排除が不完全なことなど大規模施設への対応が困難であった。
これに代わって開発されたのが、『活性汚泥法』(Activated Sludge process)である。1913年に英国で開発されたが、英国ではすでに散水ろ床法の下水処理施設建設に投資されていたために、その採用が遅れ、米国で大幅に採用され、世界の下水処理法の主流となった。
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三河島汚水処分場では、1934年に処理方式を『パドル式活性汚泥法』に代え、1959年から『散気式標準活性汚泥法』へ改修し、現在に至っている。
(国土交通省「下水道の歴史」、東京都下水道局「三河島水再生センター」、P. F. Cooper「Historical aspects of wastewater treatment」を参照)
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『市街地における生活排水や雨水の停滞による不衛生状態を改善し、土地の清潔を保持することを目的』にして、1900年に「旧下水道法」が制定されている。
1958年に旧法が廃止され、『都市の健全な発達と公衆衛生の向上に寄与すること』を目的とした「下水道法」が制定され、1970年には公害対策の観点から『公共用水域の水質保全に資すること』が目的に加わった。
また、同年の1970年に工場の排水処理施設と密接に関連する「水質汚濁防止法」が制定され、また、1983年に浄化槽の設置・保守点検・清掃・製造について規制する「浄化槽法」が制定された。

1970年度の下水道普及率は20%に達しておらず、1983年度でも約35%である。そのような下水道が整備される以前の1970年代の前半に、水質汚濁防止法に基づいて特定施設を有する工場には排水処理施設が完備された。また、家庭などに浄化槽が整備されていった。

by ecospec33 | 2012-11-05 11:39 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅥ(終末処理場、下水処理場、水再生センター、液中膜、流動床型生物膜、技術、展開、移転)

2012年10月24日に、府中市にある北多摩一号水再生センターを視察させてもらった。
かつては有料道路だった稲城大橋に隣接する、多摩川沿いにある流域下水道の『終末処理場』、いわゆる『下水処理場』である。また、これは水質汚濁防止法の『特定施設』に相当する。
処理区域は、府中市と国分寺市の大部分、立川市、小金井市、小平市、東村山市の一部である。
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小金井市東側にある自宅の周辺地域は野川処理区と呼ばれ、ここで処理されるのでなく、直線距離で約25km下流にある東京湾沿いの森が崎水再生センターで処理されている。これは、野川水再生センターの計画がとん挫したためのようであるが、これこそが中西準子先生が河川から水が消え、水循環を途絶えさせ、水環境を悪化させると指摘する流域下水道の問題ではあるが、この野川処理区と小河川の渇水を除いて、多摩川中流域では良好のように思える。
それよりも、汚水と雨水とを同じ管渠で排除する合流式下水道の割合が多いことの方が問題である。
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北多摩一号水再生センターの都職員の方には懇切丁寧なご対応をいただき、食品工場などの産業排水の処理との違い、またA2O法(嫌気無酸素好気法)などの高度処理も知ることができ、非常に有意義な視察であった。
1800年代後半以降から発展した近代的な下水(汚水)処理で培った水処理技術が産業界へと技術移転していったこと、これからも続くであろうことを知っておく必要がある。
これは、液中膜の納入実績の件数を表しているが、し尿処理施設で採用された数年後に、産業排水処理施設に適用されている好事例である。
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2005年に乳業工場の排水処理施設の増設について、この液中膜を検討したことがあったが、設備費および維持費が高額であることから、流動床型生物膜好気性処理+沈殿槽を多段に設置し、スペースを有効に使うことで対応した。
この流動床型生物膜処理も汚水処理から技術展開された技術である。
ともあれ、汚水処理の技術を産業排水処理で採用する際は、その実績による安定性はもちろんのこと、経済性がネックになりうることを確認すべきである。

by ecospec33 | 2012-11-01 13:27 | 〇下水道と汚水処理