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下水道を考えるⅤ(し尿処理施設、浄化槽汚泥、液中平膜、広域化、長寿命化、農業集落排水、談合)

1997年に、姫路駅から北へ20kmほど向かった、河川沿いの農地が広がる一角にある、稼働を開始したばかりの中播衛生センターを視察する機会があった。このセンターは姫路市を含め周辺5町のコミュニティプラント、合併浄化槽、単独浄化槽から排出されるし尿と浄化槽汚泥を処理する『し尿処理施設』であり、廃棄物処理法の『一般廃棄物処理施設』に位置づけられる。
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日本庭園を有する日本家屋風な豪華な建造物で、汚水処理場とは思えない佇まいであり、周辺環境に考慮し過ぎていると思うほどであった。機能を優先する一般企業では考えられないほどの費用をかけたであろうことが容易に想像できた。「平成21年度 兵庫県の一般廃棄物処理」によれば、㈱クボタが施工し、1993年に着工、1996年竣工し、その総事業費は約49億円であった。
また、液中平膜(槽浸漬型平膜分離装置)を採用し始めた初期のし尿処理施設の一つであり、視察時には、平膜を引き上げて点検しているところであり、安定運転できているのかと疑義を抱いたことを記憶している。
●視察時の処理方法:膜分離高負荷生物脱窒素処理方式+凝集膜分離+活性炭吸着
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2012年に設備が大幅に設備が改修されてはいるが、改修後も最終段に膜分離を使用している。
発注支援業務を請け負った日本環境衛生センターが下書きしたと思われる公募要領書である「中播衛生センター改良工事 技術提案書公募要領」(中播衛生施設事務組合 平成21年(2009年)9月)から抜粋する。
『・・・中播衛生施設事務組合が所管する施設は、計画処理量130kL/日( 内訳:し尿 90kL/日、浄化槽汚泥40kL/日)、膜分離高負荷脱窒素処理方式によるし尿処理施設で、平成7年(1995年)8月の稼働開始以来、およそ13年を経過している。この間、現有施設では、設備装置の計画的な整備、補修等により、適正維持に努めてきたが、施設各所に経年的劣化が目立つ状況になっている。また、施設に持ち込まれる処理対象物が、従来のし尿主体から浄化槽汚泥主体へと変化し、当初の計画と質的量的に異なるものとなって、施設の安定運転に苦慮している。・・・』
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設備改修するための真の要因は、下水道の普及によって計画当初よりし尿の搬入が減り、浄化槽汚泥の割合が増加し、この固形物濃度が高く負荷変動の大きい浄化槽汚泥によって、これまでも安定運転が困難であったことがうかがえる内容である。
施設が建設される前に、「し尿処理施設に搬入される浄化槽汚泥の問題点」(衛生工学シンポジウム論文集1993-11-01)が提起されているにもかかわらず、これを過小評価して当初の設計が行われたと考えてもよいだろう。
また、施設全般の延命化対策を考慮した表現なのだろうが、『・・13年を経過し・・・経年的劣化が目立つ・・・』は、一般企業では考えれれないほどの早い劣化である。設備の法定耐用年数は超えているのだろうが、経済耐用年数を超えたとは言い難い。
改修にともなって、し渣と脱水汚泥の焼却処理を止め、焼却設備を廃止したことは、焼却用燃料単価の高騰およびリン原料として外部委託単価の低化による運転維持費の低減につながるのであるから、当然な結論である。
●改修後の処理方法:浄化槽汚泥対応型膜分離高負荷生物脱窒素処理方式+活性炭吸着
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かつて視察したことのある中播衛生センターの改修にかかわる問題を記したが、これは、全国のし尿処理施設にかかわる問題でもある。
環境省は「し尿処理広域化マニュアル」(平成22年(2010年)3月)の中で、『近年、し尿処理を取り巻く状況は、大きな転機を迎えている。既存のし尿処理施設では、し尿等収集量の減少や浄化槽汚泥混入率の増加による処理効率の低下、処理設備の老朽化とそれに伴う処理機能の低下、適正な整備運営に対するし尿処理財源の減少など、様々な問題点を抱えている。一方で、施設の整備運営に関する経済性の向上、環境保全対策の強化、廃棄物系バイオマスの利活用推進、地球温暖化防止対策への貢献などは、社会的な要求事項となっている。』と説明している。
また、環境省は「廃棄物処理施設長寿命化計画作成の手引き」(し尿処理施設・汚泥再生処理センター編)(平成22年(2010年)3月)の中で、『し尿処理施設の場合、放流水質基準の強化、搬入物の量及び性状の大きな変化等への対応と設備装置の経年劣化を理由に、竣工から20~30年程度で施設全体の更新が行われるケースが多くなっている。一方、近年は生物学的脱窒素処理方式ならびに各種高度処理方式による技術の確立によって、高度な性能の達成が可能となっている。また、腐食性ガスによる損傷を受けやすいとされる水槽コンクリートについても、防食被覆技術の向上により、その耐用年数をできるだけ長く保持するための対策が可能となっている。 このような状況から、し尿処理施設については、延命化対策の際に併せて新技術の導入により、性能の向上を図ることや、日常の運転管理と定期的な点検整備、基幹的設備の更新等を適正かつ的確に実施することで設備機能を保持し、施設をできるだけ長く維持活用することが求められており、ストックマネジメントの考え方を導入することにより施設の長寿命化を図ることが重要である。』と記してる。

ともあれ、下水道にとどまらず、汚水処理施設には施設の建設費と管理維持費ともに多大な費用がかかる。
ここで、「1998年に全国の市町村の農業集落排水事業の発注をめぐり、大手プラントメーカーが10年以上にわたり談合を繰り返していたとの疑いで、公正取引委員会が、荏原、クボタ、ユニチカ、栗本鉄工所、前沢工業、日立化成テクノプラント、西原環境衛生研究所など10数社を独占禁止法違反容疑で立ち入り検査し、1999年10月5日に内9社に対し独占禁止法違反で警告した。」という事件を忘れてはならない。
この事件の一年前、1997年に農水省は全国の市町村に対し、「農村集落排水事業の設計の約90%受託している日本農業集落排水協会に委託するように強制していない。」という趣旨の局長通達を出したという。
この一連の動きから、産官の馴れ合いを財団法人という隠れ蓑で覆う構図が透けて見えてくる。

このような社会情勢の中で、身近にお付き合いしていた中小の水処理プラントメーカーは、収益性が高いという「うまみ」を失くした官公庁の事業から撤退した。社内での裏金作りが難しくなったためとも聞いた。自由に使える資金がなくなり、銀座に何度かお誘い頂いた責任者らも去っていった。

by ecospec33 | 2012-10-30 12:40 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅣ(汚水処理人口普及率、地方公営企業、繰入金、債務現在高、元利償還額、会計検査院)

前回、汚水処理の用語と、その施設の特性と機能について確認し、地域の地形などの特性、水質保全と災害防止の効果、経済性等を勘案して施設を効率的、計画的に整備する必要があることを記述した。

これらの汚水処理施設の整備による普及を示す、関係する三省が取りまとめている「汚水処理人口普及率」は、2013年度末で88%弱まで進捗している。その多くは下水道による。
注意すべきは、汚水処理がなされたとしてもトイレが水洗化されまでには数年かかるという実態があり、また、この普及率と環境省が公表している「水洗化率」と整合していないことである。
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本題の下水道事業を始めとして、水道事業、交通事業、電気事業、ガス事業、病院事業などは、地方公共団体が一般的な行政活動の他に地域住民の生活や地域の発展に不可欠なサービスを提供する事業として「地方公営企業」と規定されている。これら地方公営企業は独立採算の原則に基づいて、常に企業の経済性を発揮して効率的な運営を行うこととされ、事業の性質上経営に伴う収入を充当することが適当でない行政的な経費、或いは経営収入のみをもって充てることが困難な不採算経費等については、一般会計から繰り入れることができると規定されている。(総務省HPを参考に編集)
下水道含めた汚水処理事業は他からの繰入金で賄っている。繰入金(逆からは繰出金)の規定から、この全てが赤字分とは言えないが、地方財源を圧迫していることは間違いない事実である。
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また、その債務残高は約30兆円あり、水道、病院、交通など他の地方公営企業に比べても非常に高く、旧国鉄の債務約20億円を大幅に超過している。
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地方財政の健全化が求められている中で、下水道事業も財政健全化による債務削減に大きく舵が切られていることは明白であるが、その道は遠いようである。単純計算でも債務を全額償還するまでに約30年がかかり、その間に施設、設備、装置の老朽化が進む。
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本年2012年9月26日に、『会計検査院が全国の下水処理施設の稼働実態を調べたところ、1年以上にわたって使われていないなど余剰設備を抱える施設が約90あり、また建設費用などとして国庫補助金だけで約250億円が無駄に支払われた形で、検査院は下水道事業に補助金を出している国土交通省に改善を要求した。』などと、新聞各紙が報じた。
しかしながら、この債務残高からすれば、それが極めて小さな金額であることを承知しておくことが必要である。

by ecospec33 | 2012-10-23 09:22 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅢ(汚水、生活排水、下水道、浄化槽、処理施設、水質汚濁防止法、廃掃法、所管)

「汚水」は普通一般的に使用されない言葉だが、下水に関して、その用語を整理しておく必要があるだろう。これについては、関連するそれぞれの法律の第2条に「定義」が規定されているので、慣例的、便宜的に使用されている用語も含めて、次の通り整理した。
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ここで、次の用語を確認しておきたい。
●汚水=生活排水+事業系排水+雨水
●生活排水=し尿+生活雑排水=一般廃棄物-ごみなど
●下水道=下水を処理するための、排水施設+処理施設+補完施設
●浄化槽=生活排水を処理するための、合併浄化槽

先に記したとおり、汚水を処理する施設については所管する省庁が異なる。これについても、行政が関連する法令を基に公表している分類に従って、次の通り整理した。
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ここで、汚水処理には集中処理と個別処理があること、また汚水処理施設と所管省庁を確認しておきたい。
●国土交通省所管:公共下水道、流域下水道
●農水省所管:農業集落排水施設、漁業集落排水施設、林業集落排水施設、簡易排水施設
●環境省所管:地域し尿処理施設(コミュニティ・プラント)、特定地域生活排水処理施設、個人設置の合併浄化槽
●総務省所管:小規模集合排水処理施設、個別排水処理施設


「汚水処理施設の効率的な整備・管理に関する有識者会議 報告書」(平成20年 日本下水道協会)から、それぞれの『汚水処理施設の特性』を抜粋する。
●下水道:都市部の市街化区域や人口密度が高く比較的大規模な集落等を対象に、管渠を面的に配置して汚水を収集し処理するものであり、生活排水だけでなく事業場排水や昼間増加人口による排水も受け持っている。また、雨水排除の機能も有しており、都市部等における公衆衛生の向上、浸水の防止、水環境の改善に寄与する公共施設である。管理者は地方公共団体である。
●農業集落排水施設:農業振興地域内の農村集落を対象に、管渠により汚水を収集し処理するものであり、農村環境を改善する農業基盤施設としての性格を有している。法律上は、浄化槽法の適用を受ける。管理者は地方公共団体あるいは土地改良区である。類似の施設に漁業集落排水施設や林業集落排水施設がある。
●合併処理浄化槽:一般的に人口密度が低い地域等を対象に、し尿と雑排水を処理するために宅地等の単位で設置されるもので、大規模な施設もあるが、多くは5人槽、7人槽等の小型のものである。浄化槽法の適用を受け、生活環境や公衆衛生の向上に寄与する施設である。管理者は市町村の場合もあるが、主に個人である。
また、それぞれの『汚水処理施設に求められる処理機能』は、次のとおりとなる。
●下水道:下水処理場は水質汚濁法の特定施設に位置づけられており、排水基準を超過した場合には罰則を受ける規定が設けられている。下水道管理者が放流先水域の水質・水量を勘案して、有機物汚濁の指標であるBOD、湖沼等の富栄養化の指標である窒素、リンについて、計画放流水質を自ら定めることとなっている。計画放流水質は、年間を通じて超過を許容しない水質基準値として位置づけられており、下水道法において遵守義務が規定されている。
●浄化槽(農業集落排水施設を含む):一般的に、501人槽以上の大型合併処理浄化槽が水質汚濁防止法特定施設に位置づけられており、家庭用の小型合併処理浄化槽には、同法は適用されないことになっている。放流水質の基準として、BOD 等について、一律の基準値が設定されている。ただし、合併処理浄化槽の性能評価にあたっては、BOD 等の水質項目ごとに全試験データの75%以上が水質基準値を満足していることが評価基準となっている。

ともあれ、地域の人口密度、地形などの特性、水質保全及び浸水などの災害防止の効果、経済性等を総合的に考慮して、汚染処理施設を効率的、計画的に整備する必要がある。

by ecospec33 | 2012-10-22 08:27 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅡ(小金井小次郎、汚水、雨水吐き室、スクリーン、合流式下水道、分流式、吐口、野川)

小金井市の現代の有名人として、詩人の串田孫一、作詞家の星野哲郎、画家の安野光雅を挙げることができるが、江戸末期から明治時代にかけての有名人は小金井小次郎(1818年~1881年)であった。
小金井小次郎こと関小次郎は、清水次郎長(山本長五郎:1820年~1893年)と並ぶ侠客の一人で、小金井の大名主、関家の次男として生まれたが、13歳で勘当され、府中の藤屋万吉親分(市村万吉:1801年~1865年)に可愛がられ、跡目を相続した。小金井はもとより、青梅街道沿いの小平、五日市街道沿いの四軒寺(吉祥寺)、甲州街道沿いの府中、調布、烏山、笹塚、中野、大久保、新宿、川崎街道沿いの溝の口、東海道沿いの川崎、鶴見、生麦、子安、横浜を縄張りとして、三千人の子分をかかえる博徒の大親分であったという。
彼は維新前後の12年間、三宅島に流罪となっていたが、その間、井戸を掘って荒地の開墾に尽くした人物でもあったという。彼の孫が第2代の小金井市長に就任していたそうであるから、超有名人であったに違いない。
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2009年に、小金井小次郎が眠る鴨下家と関家の墓所の南西角、塀越しに小次郎の石碑が望める場所に「雨水吐き室 スクリーン制御盤」が設置された。
雨水吐き室とは、雨水と汚水を同時に管渠(埋設された排水管)に収集、排除する合流式下水道(⇔分流式下水道)において、降雨時に雨水相当分を越流ぜき(オーバーフロー部)から河川や公共用水路への管渠に排除するために設けられた構造物で、スクリーンは越流ぜき上部に設置され、河川などに夾(きょう)雑物が流れ込まないように分離し、これを下水処理場に流出させるための仕掛けである。
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合流式下水道は、1973年に「下水道施設設計指針」が改訂され、分流式下水道が原則採用される以前に、下水道が整備された大都会に多く、東京都の区部で面積比率の約85%が、多摩地域で40%弱が合流式下水道となっている。
この合流式下水道では、降雨時に未処理下水が河川などに放流され、水質汚濁や悪臭、公衆衛生上の観点から問題視されていたことから、2002年に「下水道法施行令」が改正され、分流式下水道並の汚濁負荷とすること、未処理放流水の回数半減、夾雑物の流出防止を図ることとなった。
この対策の一環が、小金井小次郎のお墓近くの「雨水吐き室 スクリーン制御盤」である。
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この「雨水吐き室」以降の管渠は汚水と雨水に分離され、天神橋の下にある「吐口」から野川に放流されている。
この吐口にはゴミなどの大きな夾雑物が見られ、スクリーンの効果は?と疑問が残った。なお、小金井市では、13か所の雨水吐き室にスクリーンが取り付けられたという。

by ecospec33 | 2012-10-18 12:15 | 〇下水道と汚水処理  

下水道を考えるⅠ(生活排水、生活雑排水、し尿、汚水処理施設、合併浄化槽、農業集落排水)

下水道が普及する前は「汲み取り方式便所」、いわゆる「ポッチャン・トイレ」だった。
かつて住んでいた中野区でも柄杓(ひしゃく)で溜め壺からし尿を汲み取り、これを肥桶(こえたご)に移し替え、天秤棒でバランスよく運んでいた時代があった。1955年に幼稚園から毎日のように寄り道して帰る途中、哲学堂近くの坂下で肥桶がひっくり返り、大騒ぎしているのに出くわしたこともあった。
どこの家でも、木枠に金網を貼った簡単な器具で、便所から湧くハエを捕まえるような非衛生的な時代だったが、1960年前後に「バキュームカーによる汲み取り式」に代わってから、少しは改善された。

1964年の東京オリンピックの直後に、自宅前の道路真下に直径約1mの下水道枝線と直径約3mの下水道幹線が敷設された。幅8mの道路が10m以上の深さまで掘られ、地層がむき出しだった。妙正寺川によって侵食されたため「関東ローム層」はなく、地表近くに「凝灰質粘土層」、その下層に葉っぱの切れ端が混ざる「沖積層」を観察することが出来た。
現在住んでいる多摩地域の小金井市は1972年まで、国分市の知人宅はそれより更に10年遅れて1982年まで汲み取り式が続いていた。人口密度の高い大都市でさえ格差が見られたように、今でも都市と地方との地域間格差は依然として残っている。そこには、下水道を構築、維持する財政面の問題が絡んでいる。
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地域間格差は下水道の普及ばかりの問題ではない。この6日から8日の3連休を利用して仙台から東北地方をレンタカーで廻った友人が、「今年は奥入瀬も十和田湖も紅葉には早かったのだが、復興に沸く仙台市周辺を除いて道は空いていて人がいない。一極集中を続ける都会と過疎化する地方との地域間格差は広まるばかりといった感じで、原発と核燃料再処理工場を立地させたい地方の気持ちも解らないではない。一票の格差是正とは別に解決すべき問題である。」と語っていた。

下水道が整備されるまで、家庭や事務所のし尿以外の生活排水である炊事、洗濯、入浴などに使用された生活雑排水は道路の側溝(どぶ)に流され、そこから川に流れ込んでいた。このため、自宅近くの妙正寺川もどぶ川であった。
妙正寺川が高田馬場近くで合流する神田川は、今でこそ御茶ノ水駅のホームから鯉が泳いでいるのを見ることが出来るが、1960年代後半から1970年代前半は最悪のどぶ川で、嫌気性菌が発生させたメタンガス、硫化水素ガスなどがどす黒い底泥をあちこちで浮き上がらせ、それが浮遊汚泥(スカム)となって流れており、腐敗したような悪臭が漂っていた。
焼玉エンジンの軽やかな音が響くポンポン船が行き交う様はのどかであったが、通った後は巻き上げられた汚泥が黒い痕跡となった。
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家庭と事業所から排出される生活排水と工場から排出される工場排水この汚水を処理する施設は、国土交通省が所管する「下水道」のほかに、環境省所管の「合併浄化槽」と「コミュニティプラント」および農水省所管の「農業集落排水施設」があり、いわゆる縦割り行政の典型である。

by ecospec33 | 2012-10-11 12:02 | 〇下水道と汚水処理  

原子力行政の更なる見直しⅢ(原子力委員会、原子力政策大綱、策定会議、廃止)

新たな『原子力政策大綱』の策定が完全に中止となった。
2日に原子力委員会が「新大綱策定会議の廃止等」と題して、『新たな原子力政策大綱の策定を見合わせることが適当と考える。そこで、同会議における審議を中止するとともに、同会議を本日付けをもって廃止する。』と公表した。

2010年12月から開始された新大綱策定会議は、福島第1原発事故による中断後、2011年9月に再開され、2012年の9月を目途に取りまとめられる予定であった。しかしながら、この6月に電力業界など原発推進側だけを集めた核燃料サイクルの秘密会議が発覚し、内外から批判を受けて再中断を余儀なくされた。それにもかかわらず、8月には原子力委員会メンバーのみで取りまとめるべく検討していたが、ここで力尽きたようである。
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また、「新大綱策定会議の廃止等」の最後に、『原子力委員会は、原子力利用に関する政策を企画し審議し決定するとの職責を果たす観点から、今後も、中立性、公正性、透明性に十分配慮しつつ、有識者からのヒアリング等による専門的知見の集積に努め、これまでの新大綱策定会議での審議内容も考慮し、原子力利用に関する政策の重要課題毎に提言等を行っていくこととする。』とある。
原子力員会は原子力政策決定の法的な権限があると自ら認めているにもかかわらず、政策の重要課題毎に提言等を行うことに留めている。原子力委員会に対しては、この自己矛盾を放置し続けたことによって、その重責を回避し続けることが出来たかを問いたいところである。

これら関しては、9月26日付で「原子力行政の更なる見直しⅠ、Ⅱ」で、『原子力規制委員会発足ばかりでなく、原子力委員会の法的な役割と組織上の立場に齟齬があり、原子力委員会が原子力政策大綱を作る資格に欠けるなどの問題が露呈しており、原子力行政を見直す必要がある。』と、記したとおりである。
原子力行政の更なる見直しⅠ:http://ecoeng.exblog.jp/18933500/
原子力行政の更なる見直しⅡ:http://ecoeng.exblog.jp/18933532/

by ecospec33 | 2012-10-04 08:38 | ●原発問題と電力需給逼迫  

10月が始まった(3R推進月間、環境税、増税、エコポイント、CO2削減、費用対効果、排出量取引)

夜半に台風17号が猛スピードで日本列島を縦断し、10月に入った。

『東京駅』が保存・復元工事を終えて全面開業した。
工事の最終段階には、外壁の要所に貼られた無垢の銅板のあかね色が印象的だった。
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『3R推進月間』が始まった。
環境省が示す趣旨は次のとおりである。
「国民・事業者・行政が一堂に会し、廃棄物問題に関するそれぞれの知識や経験を交換するとともに、参加者一人ひとりが自らのライフスタイルを見直す機会を提供することを通じ、“3R”(廃棄物等の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle))の推進に関する理解を深め、循環型社会の形成に向けた取組をより一層推進します。」(関係8省庁:財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)
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『環境税』が始まった。
経済界も導入反対であったが、静かに審議され、瞬く間に決定された。
2010年に、電力中央研究所が「3兆円の地球温暖化対策予算の費用対効果を問う」というディスカッションペーパーを公表した。『・・・すでに日本の地球温暖化対策予算は3兆円に上るとされる。・・・増税の前に、既存の政策の費用対効果を厳しく評価すべきであろう。』
これらの意見は無視され、何らの評価がないままに環境税という増税が決定された。

環境税は現行の石油・石炭税に上乗せして課税されるが、最終的に消費者が負担することになる。その額は平均世帯で年間約400円、数年後にはその3倍、約1,200円に増額されるという。
民主党は、政権獲得前にガソリン暫定税率分の撤廃、減税をマニフェストに掲げていたが、それも出来ないままに、マニフェストにない消費増税をおこない、はたまた環境税という増税である。
消費増税には社会保障の一体改革という錦の御旗があるが、環境税にも地球温暖化対策という錦の御旗が掲げられている。
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しかながら、これまでも家電エコポイント、住宅エコポイント、エコカー補助金・減税と、いかにも環境(エコ)に相応しい対策をとっていたかのようであるが、景気浮揚が主な目的であり、行政は国民を『エコ』という言葉で巧みに踊らせているようである。
2011年2月に、朝日新聞が大見出し「家電エコポイント、CO2削減試算ずさん 効果6分の1」で、『「二酸化炭素(CO2)の削減効果は年間400万トン」。政府がそううたって2009年5月から進め、家電の買い替えを促した家電エコポイント制度。その根拠となったCO2削減予測値の算出方法が、実態とかけ離れたものだったことが分かった。算出に関する資料の廃棄が昨夏判明し、環境省が当時の担当者に聞き取り調査する中で明らかになった。』という記事を載せた。
これに対し、2011年6月に、環境省、経済産業省、総務省が、「家電エコポイント制度の政策効果等について」で、『総額約6,930億円の予算措置に対し、CO2削減効果は約270万トン/年と推計』と公表した。
新聞記事と行政公表の大きな違いは基準点が異なっているなどのためと思うが、行政の実績効果は目標効果の67.5%でしかなく、その評価は赤点に近い「可」である。これ以外のエコ制度の費用対効果の目標と結果を公表していないので不明であるが、多くは期待出来なのであろう。
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ここで、環境税と家電エコポイントについて、CO2を1トン/年削減する費用を算定し、その費用対効果を比較する。
●環境税:1.9兆円÷600~24,000トン/年=79,000~317,000円/(トン/年)
●家電エコポイント:6,930億円÷270万トン/年=257,000円/(トン/年)
いずれも排出量取引相場の30~100倍であり、費用対効果が極めて低い数値である。
家電エコポイントは直接的に効果が推計できたが、環境税はその使い道によって効果が左右される。このため、費用対効果はさらに低くなる可能性もありうる。

『第三次野田内閣』が発足した。
短命に終わった民主党政権の「最後の内閣」と呼ばれ続けるだろう。目玉であった「事業仕分け」は不毛に終わり、増税の道を歩んだ民主党。政治主導は官僚主導に巧妙にすり替わっているようである。

「環境税」というハードルを首尾よく飛び越えた環境省は、『エコ』という錦の御旗で「排出量取引」に突き進む。

by ecospec33 | 2012-10-03 10:47 | ●その他社会問題  

市民活動団体との連携・協働に必要なもの(社会貢献、CSR、NPO、市民団体、容器包装リサイクル)

企業の社会貢献(CSR: Corporate Social Responsibility)が叫ばれている今こそ、市民団体、行政、事業者(企業)との連携と協働が求められている。
内閣府は「市民団体調査」を数年毎に行っており、その中で市民活動団体を定義している。
『「市民活動団体」の定義は、「継続的、自発的に社会貢献活動を行う、営利を目的としない団体で、特定非営利活動法人(NPO法人)及び権利能力なき社団(いわゆる任意団体:市民団体)」とする。』
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1998年に「特定非営利活動促進法」が制定され、『NPO法人』は増加の一途をたどり、現在約4万5千が認可されている。しかしながら、約1割の法人が解散していることも見逃せない。
生涯スポーツ功労者賞(文部科学大臣表彰)を受けている妹が地域のスポーツ振興を図るために、数年前にNPO法人を立ち上げたが、申請時には手続きの煩雑さに四苦八苦し、認証取得後も自治体との調整など団体経営に忙殺される毎日と聞いている。
NPO法人の役割は様々であり、『市民団体』(任意団体)も同様である。市民団体の数は、NPO法人数より少ない約3万と推定されており、法人化が進んでいるという。
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2006年7月末に、ある容器包装リサイクルに特化した市民団体の20周年記念に参加したことがある。代表は創業者の志を継いだ娘であり、副代表は創業者の活動仲間の女性であった。この2年ほど前に男性の事務局長は仲違いして退会しており、代表と副代表が事務局員を兼ねていた。
その懇親会の席上で、約半年後に原子力委員会委員に就任する松田美夜子富士常葉大学教授から、この市民団体について、「これからは、企業など事業者団体が支援していくのよ。」と、にこやかに話された。これについては後述のとおり、異論を持っていたので、この市民団体との付き合いが長い女史が、この団体の市民活動の低迷を案じていると直感し、「そうですね。」とだけ曖昧に答えた。

その帰途、農水省で環境対策を担当するノンキャリア官僚と列車で乗り合わせた。「このような活動の衰退はこの団体に限ったことでなく、多くの消費者団体にもある。その要因は、一般論として時代の変化による地域社会の基盤変化と社会のニーズの多様化にあり、また個別の問題としては創業者である母親時代が築き上げた市民のネットワークが崩壊していることにある。」と、実務経験の豊富な彼は明快であった。
それを裏付けるように、この市民団体が主催する会議での出席者の割合を確認すると、共催者である事業者の関係者が約56%、関係する事業者が約9%、自治体関係が約23%を占め、市民が主催者と同じく約6%であり、それも高齢者ばかりであった。
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松田女史に言われるまでもなく、この市民団体に対して市民からの支援が皆無になりつつある中、これに代わって業界団体と個別企業が会員として支援しているところであったが、その支援が一部の偏った考えを抱く企業のために、必要以上に増大していた。
ここで、その支援とは活動と事業資金の助成と労働力の提供を示すが、この市民団体は会員に対し、会員と財政(収入・支出)の実態などの情報公開をしていなかった。このような状況を甘受して支援し続ける業界団体も不甲斐ない話であるが、その業界団体には十分な資金の手当てと十分な労働力の支援が容易に出来ることから、市民団体とは馴れ合いの連携と協働が進められたのである。

この市民団体の20周年直後に、代表に半日程度の啓蒙活動に依頼し、給料1月分相当の謝礼を提供したことがあった。1,2週間後に副代表にお礼の挨拶をしたところ、それに関する入金はないと不機嫌であった。
代表が団体名の領収書を直接発行しているにもかかわらず、まことに不可解で不愉快な事件であった。
この真偽を追及しなかったが、この2,3年後にその副代表が退会したことだけは事実である。
社会貢献活動が立派であろうとも、不明朗な実態が市民団体にあったとすれば、『市民団体』という定義から外れている。

個別企業なり、業界団体が市民団体と連携し、協働して社会貢献を果たすために、多大な支援をするからには、その団体の目的が事業者が目指す社会貢献の方向性と合致していることを確認した後、代表と支援者の資質、専門性、年間活動実績、会員の内訳、財政状況(収入、支出、投資)、外部からの支援とネットワークなどを調査することが必要である。
このためには、市民団体に対し、NPO法人と同様な『事業報告書』を提示してもらう必要がある。


市民団体の活動は市民の支援があってこそであり、その活動目標と全てが一致することなどあり得ない事業者がその全てを支援し、代替することは控えなくてはならない。
市民団体としての品格があるかが問題であり、企業(事業者)の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)が問われるならば、それと連携する市民(団体)の社会的責任 (CSR: Citizen Social Responsibility) も問われるのである。

by ecospec33 | 2012-10-01 10:12 | ●CSRと環境対策