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「環境報告ガイドライン」の公表(2012年版、ISO26000、CSR報告書、環境配慮促進法)

今日4月28日からゴールデンウィークが始まった。
ウォーキングフェスタ東京のために、野川沿いのいつもの散歩道が銀座通りのように混雑していた。後方部隊なのか高齢者が多いように見受けられた。
対岸を一団とは逆方向に歩いていたら、自転車の女性二人組が追い越しざまに、「参加費用が2000円もかかるらしいの。何に使うのかしら。」という声が聞こえた。埼玉県東松山市の大きな旗を持って歩く人もいて、遠くから参加される方々には申し訳ないが、近くに住む者にとって高額?のお金を取られるのは納得がいかない。せめて500円である。
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ところで、4月26日に環境省が2007年版を改定した「環境報告ガイドライン(2012年版)」を公表した。昨年10月に開催された第一回「環境報告ガイドライン等改訂に関する検討委員会」を傍聴し、その問題点を10月7日のブログに「企業の環境報告のあり方」というテーマで記した。
そのポイントは、『2010年11月にISO26000(社会的責任に関する手引き(Guidance on social responsibility))が発行している。その目的は、経済、社会、環境のバランスがとれた持続可能な社会の形成としている。近い将来、企業、事業者、全ての組織はISO26000をいかに適合し、吸収したかを発信することが求められるのであり、環境情報の発信は、その中に包含されると考えている。』として、環境側面だけの「環境報告ガイドライン」には限界があることを示した。

各社が環境報告書を作成していた7、8年前に、業界団体の環境会議の席上、明治乳業の作成責任者に対し、「エネルギー原単位、CO2排出原単位の表現内容が過激過ぎるので改めるように。」と促したことがあった。原単位の分母が明らかに異なっているにもかかわらず、業界平均より優れていることを強調していたためである。翌年から明治乳業はこれを受け入れた。
5、6年ほど前に、メグミルクの担当者から「よくぞ社会・環境報告書へ転換しましたね。貴社の報告書を参考に作成しています。」との話があった。
また、3、4年ほど前には、明治乳業の担当者から「CSRレポートより環境報告書の方が面白かったし、参考になった。」という話があった。環境からCSRへとコンテンツは増大したが、ページ数が増えないために、環境に割くページが減り、業界で参考となるような具体的な内容が書き込めなくなったためである。
このように、作成に携わる関係者は切磋琢磨しながら、「環境報告書」から「社会・環境報告書」、さらに「CSR報告書」へと転換させた。
「環境報告ガイドライン」の公表(2012年版、ISO26000、CSR報告書、環境配慮促進法)_e0223735_19224439.jpg
食品業で売上高1,000億円を超える上場企業42社について、2011年度の環境を含めた報告書の形式を調査した。
50%超がCSR報告書(CSRレポート、サステナビリティレポート含む)であり、その内上位2社が環境報告書も作成していた。環境報告書だけの企業は7%にとどまった。このような報告実態であり、「環境報告ガイドライン」では片手落ちなのである。

事業者の理念、経営ビジョンから始まる様々な経営(財務)実態を、株主、投資家に提示するのが「年次報告書(事業報告書、アニュアルレポート:annual report)」であるが、事業者の活動を社会的側面、経済的側面、環境側面から社会的責任を、消費者などに提示するのが「CSR報告書」である。
数年前にはそれぞれ別な冊子を貰い受けたことがあったが、今では年次報告書にサステナビリティー(Sustainability)報告を組み入れているヨーロッパのグローバル企業もある。
日本ではCSR報告書に喧伝するために金をかけ、年次報告書より立派に作成するが、これは本末転倒なのかも知れない。
リクルート冊子かと見間違う派手な「CSR報告書」が氾濫する。11月末ごろになって公表する企業すらある。これは企業の本質に何らかの誤りがある査証である。

原則に戻って、環境配慮促進法(環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律)では、事業者が環境報告書の公表その他のその事業活動に係る環境配慮等の状況の公表を行うように努めるとともに、その記載事項を規定している。
一 事業活動に係る環境配慮の方針等
二 主要な事業内容、対象とする事業年度等
三 事業活動に係る環境配慮の計画
四 事業活動に係る環境配慮の取組の体制等
五 事業活動に係る環境配慮の取組の状況等
六 製品等に係る環境配慮の情報
七 その他

「環境報告ガイドライン」より簡潔である。「環境報告書」を公表していない大手企業も残っている。早急に作成することが社会の要請である。

by ecospec33 | 2012-04-28 19:28 | ●CSRと環境対策  

原発再稼働と電力需給問題Ⅱ(需給検証委員会、関西広域連合、大飯原発、住民説明会)

昨日4月26日に、関西電力の電力需給と大飯原発再稼働の両問題に関して、様々なレベルで動きがあった。
国では国家戦力室第2回「需給検証委員会」、関西では関西広域連合による政府への「運転再開の6項目提言」の申し入れ、福井県の地元おおい町では国の「運転再開の住民説明会」が行われた。

国家戦力室第2回「需給検証委員会」では、電力供給に新たな積み増しは困難との見方で一致し、次回以降は、ピーク時の需要抑制策を引き続き検証するそうである。
第1回会合で、経済団体連合会と日本商工会議所が事業者を代表して昨年の電力需給ひっ迫対応を説明している。しかしながら、このような国家レベルの重要な事象は、経済産業省が把握しておくべきことであり、事業者に対し直接的に調査しなかったのだろうかと訝しく思っている。
また、住友電工が関西地区の工場で自家用発電設備4,000kWを増設するなどを説明したが、このような事業者は多いに違いない。確かに、食品会社の関西地区の2工場でも合計約7,000kWの自家用発電設備を6月末までに設置すると承知している。
経済産業省が事業者に対し、このような実態調査を積極的に行うべきであり、電力需要抑制の予測を提示すべきである。一方、関西電力に対しては供給義務を果たすために、やや大型の火力発電設備の増設を推進させるべきであったと思う。
とかく、関西地区は東日本大震災と福島第一原発事故の直接的な影響を受けなかったために、関東・東北地区に比べ、昨年の夏は節電に対する緊迫感が少なかったのである。
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関西地区の7府県2市からなる関西広域連合が取りまとめ政府への「運転再開の6項目提言」は次のとおりである。
「政府が進める原子力発電所再稼働に関する申し入れ」(4月26日)
1 大飯原発の再稼働に関し、このたび公表された安全基準の各項目がどのようなレベルで満たされているのかを原子力安全委員会が判断し、政府として関西広域連合に説明すること
2 原子力発電に関し、中立性が確保され、科学的、客観的な判断を行いうる体制を早急に構築すること
3 世界的に見ても最高水準といえる安全対策を講じること
4 万が一の事故に備え、政府や事業者のとるべき対策を速やかに講じるとともに、防災指針、防災基本計画や原子力防災体制を緊急に整備すること
5 我が国の将来のエネルギー政策の姿とそこに至るプロセスを示すこと
6 今夏の電力需給について徹底した検証を行うとともに、その全てを公開すること

前回記したとおり、大阪府市が8提言、京都府と滋賀県が7提言をそれぞれまとめていたが、大飯原発の周辺地域がそれよりも政治的に意義のある提言を提出したということであり、これを国が如何にクリアするかということになった。

福井県のおおい町での「大飯発電所3・4号機再起動に係る町民説明会」は1回しか行われない。町民約8,000名に対し約550名が参加したが、この住民説明会は運転再開手続き上の一行事に過ぎない。
産経新聞のアンケート調査(4月18~24日)によると、福井県議とおおい町議は8割超が再稼働を容認している。このため、福井県知事は大飯原発運転再開を容認するだろうが、隣接する滋賀県、京都府は上記の6項目に対する政府の回答次第となった。

ともあれ、小沢議員を巡るくだらない政局動向は別として、生活に直結する電力、エネルギー問題を注視していく必要がある。

by ecospec33 | 2012-04-27 09:16 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原発再稼働と電力需給問題Ⅰ(需給検証委員会、大阪府市、滋賀県、京都府、提言)

4月26日午前中に小沢被告に黒に近い灰色の無罪判決がでた。はたまた政局が混乱して政治が低迷することはまっぴら御免である。2010年6月に菅前首相が「小沢さんにはしばらく静かにしていてほしい」と言ったが、これからも、そうしてもらいたい。

4月23日に国家戦略室が第一回「需給検証委員会」を開催した。第三者機関で2012年夏場の電力需給の見通しを検証し、5月連休明け目途に取りまとめる予定であるという。
このような事案は、今でも経済産業省が所管する立場にあるだろうが、原発推進の姿勢が国民の信頼を失ったこともあり、国家戦略室が担うことになっている。
九州、関西、北海道の各電力会社が夏場に電力不足に陥ることを表明しているが、大飯原原発再稼働問題と敦賀原発直下の活断層問題を抱えている関西電力の需給問題が、本検討委員会の最重要テーマである。

大飯原発運転再開に関する直近の世論調査の結果は次のとおりである。
●NHK(4月13~15日):大飯町で賛成54%、反対36%、周辺自治体で賛成22%、反対60%、大阪市で賛成28%、反対62%
●朝日新聞(4月21、22日):福井で賛成36%、反対43%、近畿では賛成29%、反対52%
大飯原発再稼働に向けた政府の拙速な手続きが国民の不信感を深めたといって良い。このように事がこじれたからには、大飯原発に限らず全ての原発の再稼働については、2、3年期待できないと考えた方が良いだろう。
4月24日に「維新の会」を率いる大阪市の橋本徹市長が「原発再稼働の8項目の提言」を政府に申し入れた。これは、彼の政治パフォーマンスに近いが、4月17日に京都府の山田啓二知事と滋賀県の嘉田由紀子知事が共同でまとめた「国民的理解のための原発政策への提言」の方が建設的である。

大阪府市の「大飯原発再稼働の8項目の提言」(4月24日)
一、 原発から100キロ圏内の都道府県と安全協定を締結できる仕組みを構築する
一、 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現に取り組む
一、 国民が信頼できる規制機関として、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立する
一、 新体制のもとで安全基準を根本から作り直す
一、 新たな安全基準に基づいた完全な安全評価(ストレステスト)の実施
一、 重大な原発事故に対応できる防災基本計画と危機管理体制の構築 
一、 電力需給の徹底的検証と結果の開示
一、 事故収束と損害賠償など原発事故で生じるリスクに対応できる仕組みの構築

京都府と滋賀県の「国民的理解のための原発政策への提言」(4月17日)
1 中立性の確立~政治的な見解ではなく信頼のおける中立的な機関による専門的な判断を~
2 透明性の確保~国民の納得できる情報公開を~
3 福島原発事故を踏まえた安全性の実現~免震事務棟、防潮堤などの恒久的な対策ができていない段階における安全性の説明を~
4 緊急性の証明~事故調査が終わらない段階において稼働するだけの緊急性の証明を~
5 中長期的な見通しの提示~脱原発依存の実現の工程表を示し、それまでの核燃料サイクルの見通しを~
6 事故の場合の対応の確立~オフサイトセンターの整備やマックス2、スピーディなどのシステムの整備とそれに伴う避難体制の確立を~
7 福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮について~東京電力はもちろんのこと、国においても福島原発事故被害者に責任を持って対応するとともに、福井県の今までの努力に対し配慮を~

ともあれ、原子力規制庁を早急に設置し、脱原発の工程を明らかにし、福島第一原発事故の原因を踏まえた安全対策の実施など原発再稼働の手順を明確にすることが必要である。

by ecospec33 | 2012-04-26 14:43 | ●原発問題と電力需給逼迫  

日本の電力供給システムを考えるⅡ(自家用発電設備、分散型電源、余剰電力、逆潮流)

4月17日にワシントンで石原都知事が尖閣諸島購入計画を突然発表した。
2010年9月に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件における当時の仙石官房長官の愚鈍な対応は忘れることが出来ないが、これはある意味で痛快な発表であった。「自衛隊を暴力装置」と発言し、政治家としての感性に乏しいとしか思えない仙石政策調査会長代行が何故か大飯原発再稼働の閣僚協議に加わり、原発再稼働を画策し原発擁護を訴えることに対し、民主党政権の危うさを感じる国民も多いのではないだろうか。

尖閣諸島中国漁船衝突事件の前後に、上海に駐在している義兄と義母の容態についてメールで何度もやり取りしていたところ、私からの「尖閣諸島」の言葉を入れたメールだけが彼に届かなったことがあった。中国はそのような国家であると認識しておかなくてはならない。

日本の電力供給システムを再整理すると下図とおりである。
日本の電力供給システムを考えるⅡ(自家用発電設備、分散型電源、余剰電力、逆潮流)_e0223735_100871.jpg
4.自家用発電設備を保有する発電事業者
この自家発電設備は、電力会社などの大規模集中型発電に対して分散型電源に相当する。
ソフトバンクのオーナーである孫正義氏は福島第一原発事故直後に、大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの再生可能(自然)エネルギーを普及するために、「自然エネルギー財団」を創設した。このメガソーラーで発生した電力を電力会社や新電力会社などに販売する事業者は太陽光発電事業者であり、同様に風力発電事業者地熱発電事業者と呼ばれる。

震災直後に東京電力と東北電力管内では電力供給不足が叫ばれため、緊急的に自家発電設備を設置して電力需給調整をおこなう事業所が多かった。ある大手食品会社は中古の500kW級のディーゼル・エンジン発電機を10台あまり購入し、関連する生産工場に設置することにしたが、設置する工事業者の手が足りず、肝心の夏場を過ぎてしまった工場もあったという。

発電するだけのモノジェネ緊急用のならば短期間で設置できるが、排気熱も利用するコージェネレーションとなると、発電以外の温水や蒸気の取出しに関わる付帯工事も多くなり容易ではない。
大震災直後の5月に政府は、「自家発電設備導入促進事業」として総額100億円の補助金を用意し、東京電力と東北電力管内の事業者に自家発電設備の早期導入を図ったが、稼働すべき夏場には間に合わなかったものと思われる。また、11月には平成23年度第3次補正でも総額299.9億円の補助金が用意され、全国でトヨタ自動車、日本製紙、アサヒビールなど名だたる大手企業が応募しているが、大型物件ゆえに本年2012年の夏場にも到底間に合うはずもないだろう。
この補助金合計約400億円が全て消化されたとすれば、自家発電設備の投資額を0.2百万円/kW(2000年前後の相場の2倍、東北電力東通原発は約0.4百万/kW)と仮定して、
40,000百万円÷0.2百万円/kW÷1/3(補助率)=600,000kW と算定される。
これは、原発0.6基分に相当する規模の自家用発電設備が新設されたことになる。
ここで、応募したトヨタ自動車の5工場だけで合計約70,000kWの規模という。

1994年代から食品会社で多くのコージェネレーションを工場に導入したが、発電電力が自家消費電力より多い場合に、連系している商用電力系統(電力会社)に余剰電力を流す、いわゆる逆潮流することは許されなかった。しかしながら、新電力のエネットへ電力を売却するという逆潮流を前提にして、2006年に6,000kW級×2基を設置した。1基分相当の電力量を逆潮流したが、規模の大きく安定した自家発電設備でないと電力会社は逆潮流を嫌うのである。
東京電力は昨年2011年夏の電力需給ひっ迫に対し、IHI瑞穂工場の自家発電設備の稼働を要請し、その余剰電力を購入したという。このガスタービン発電設備の能力は41,000kWであり、自工場内で使用する7,400kWの残りの33,600kWを売却に当てた。
また、関西電力は本年2012年1~3月の3か月間に、アサヒビール西宮工場の自家発電設備の余剰電力を購入したという。このガスタービン・コージェネレーションの発電能力は6,500キロワットであり、工場内で約7割を消費した残りの約3割分を売却に当てた。

このように、再生可能エネルギーを用いた自家用発電設備、また工場のコージェネレーション含めた自家発電設備から発生する電力が原子力発電を代替する電力として、その重要性を高めている。
ちなみに、現在の自家発電設備の発電能力(設備容量)は原子力発電所約55基分に相当する。

by ecospec33 | 2012-04-19 16:42 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅠ(原発再稼働、電力自由化、発送電分離、IPP、PPS、新電力)

4月15日に、枝野経済産業大臣は徳島市の講演で、「全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」と述べ、北海道電力泊原子力発電所3号機が運転を停止するまでに、関西電力大飯原子力発電所の運転を再開するのは難しいという認識を示したそうである。
昨日16日には、民主党の仙谷政策調査会長代行が名古屋市の講演で、「電力なしには生活できないことになっていることは、昨年の東京電力の計画停電騒ぎで極めて明らかであります。(定期点検で)止めた原子力発電所を一切動かさないということをせよという話であるとするならば、日本がある意味で集団自殺をするようなものになってしますのではないか。」と述べ、大飯原発ばかりでなく全ての原発再開の必要性を強調したそうである。
一方、朝日新聞の世論調査によれば、国民の大半以上が電力会社と政府が作った電力受給逼迫と見ており、原発再稼働への安全基準を信頼しておらず、再稼働に反対しているという。

野田政権の中枢にいる政治家個々人のご意見がどうであれ、政治の停滞が国の停滞を助長させている。このような政治とは別に、日本の電力供給システムを見直すことが必要である。
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1.電力供給システム概要と電力自由化
日本の電気事業制度は、1995年から発電部門においては、卸供給事業者として独立発電事業者(IPP:Independent Power Producer)を認めることによって競争原理を導入するとともに、2000年から小売(配電)部門においては、新電力(特定規模電気事業者、PPS:Power Product & Supplier)を新規参入させ、特別高圧から高圧需要家へと小売り自由化の範囲を順次拡大してきた。しかしながら、送電部門については、公平性と中立性を確保した上で、一般電気事業者(東京電力などの電力10社)が地域独占している。
この地域独占のために競争原理が機能しないなどの理由から、送電部門についても自由化を図るという電力会社の発送電分離が問われており、また、この分離を行うことによって、福島第一原発事故の賠償を東京電力が送電部門の売却で賄うという考えを打ち出すことが出来る。
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2.卸供給事業者(独立発電事業者:IPPなど)
神戸市の麻耶埠頭に立地する食品工場では、場内の空調用フィルターの目詰まりが予想外に早かった。目詰まりは微細な黒色の粉によるものであり、直線距離で約1.3km離れた神戸製鋼所の石炭火力発電所から飛散する石炭の微粉末であると推定できた。
この神鋼神戸発電所は2002年4月に1号機、2004年4月に2号機を運転開始し、神戸製鋼所は合計発電量140万kWを有する国内最大の独立発電事業者(IPP)となった。
当時、IPPが実施する石炭火力発電所によってCO2排出が増大することが懸念されたことも事実である。
1995年の電気事業法改正により、2010年3月末までに「みなし卸電気事業者」であった北海道などの公営水力と鹿島共同火力発電所などの共同火力のほとんどが卸供給事業者となり、また一部は自家発電用設備の保有事業者となり、一部は電力会社に売却された。

3.新電力会社(特定電気事業者、PPS)
NTTファシリティー、東京ガス、大阪ガスが設立したエネットは国内最大の新電力会社(特定規模電気事業者)である。2006年前後であったと思うが、本社が入る事務所ビルの電力料金を削減するためにエネットと交渉した。上司である取締役は変化を好まないことから異を唱えたが、経営トップは非常に柔軟であった。この東京電力からエネットへの契約変更によって、年間数百万円の料金値下げが出来たと記憶している。その後もダイヤモンド・パワーなどの新電力会社と工場の電力について交渉したが、相手にされなかった。それは、事務所ビルと違って工場の電力料金単価が低く設定されているためである。

東京電力が大口需要家向け電気料金を本年4月1日から平均17%値上げすると表明したことによって、いちやく新電力会社に注目が集まり、官民挙げて競って交渉を試みたが、期待通りの結果とはならなかったようである。これは、新電力会社は販売する電力の調達が難しく、また採算の見通しが立ちにくくなっているためである。新電力会社として現在53社が経済産業省に登録されてはいるが、実際に事業を行っているのは約半数の26社であるという。

電力自由化は絵空事に近いのである。次回から定量的に確認していきたい。

by ecospec33 | 2012-04-17 10:10 | 〇日本の電力供給システム  

小金井の桜(野川沿い、武蔵野公園、野川公園、多磨霊園)

先週8日(日)に国立の桜並木に出かけ、花見客の多さに驚いた。
昨年は震災後の自主規制で「小金井さくら祭り」が開催されなかったが、今年は4月6~8日に開催されたものの、長引いた寒さのために桜の開花が遅れたことから、満開でのお祭りとはいかなかった。
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                      武蔵野公園のさくら
国立は近くまで車で行く用事があったので立ち寄ったのだが、小金井公園をはじめとして、自宅近辺には桜の見どころが多い。
野川沿い、武蔵野公園、野川公園、多磨霊園、府中運転免許試験場、府中の桜並木である。
ソメイヨシノが終わりに近くなると、野川沿いのしだれ桜が見ごろとなる。今日も列をなしていた。
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                     野川沿いのさくら
この後は、武蔵野公園の一葉、楊貴妃、照月、関山などの八重桜が楽しみである。

by ecospec33 | 2012-04-15 14:50 | ●季節の変化と日常生活  

大飯原発の再稼働と原発依存からの脱却は矛盾?(枝野経済産業大臣、福井県、エネルギー基本計画)

昨日4月14日に、枝野経済産業大臣が福井県の西野県知事と会談し、関西電力大飯原発3、4号機の再運転への理解を求めた。
この会談で、枝野経産大臣は、「これまで基幹電源として電力供給を担ってきた原子力発電所を、安全確保と、さらなる信頼性向上を妥協なく追及していくことを大前提に、今後とも引き続き重要な電源として活用することが必要と考えております。知事はじめ地元の皆さまにご理解いただき、この再稼働についてご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。」と述べた。
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その前日13日に開かれた衆議院の経済産業委員会で、福島第一原発事故を受けて、新たな「エネルギー基本計画」の策定を目指す経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本計画委員会が、2030年の時点で全電力に占める原発の比率を0%から35%までとする5つの選択肢を示していることに関して、枝野経産大臣は、「原発依存からの脱却を最大限進めていくことは政府としての明確な方針だ。私自身も、できるだけ早く原発依存から脱却して原発への依存をゼロにしたい。」と述べている。

総合資源エネルギー調査会基本計画委員会では、このような矛盾した政府の対応を持論に結びつける委員が多い。
原発廃止派は政府の原発依存からの脱却を金科玉条として崇めているが、この原発再稼働は科学的が根拠ないからこそ、学識経験者である原発擁護派の意見を重用しろと言わんばかりの発言をする。
また、原発へ政府の対応が矛盾していると考える国民も多いかと思うが、大飯原発再稼働という短期的な電力逼迫問題と原発依存からの脱却という中長期的なエネルギー問題を同列視してはならない。そう理解したいと思っている。

ともあれ、総合資源エネルギー調査会基本計画委員会では、『・・・2030年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行う・・・・』とした現行の「エネルギー基本計画」策定にも参画した原発擁護派、中での学識経験者(科学者、工学者)は、福島第一原発事故は科学者、工学者の失態の結果であったことも念頭に入れて発言しなくてはならない。

by ecospec33 | 2012-04-15 09:22 | ●原発問題と電力需給逼迫  

大飯原発再稼働と中長期エネルギー政策(基本問題委員会、原発廃止派、擁護派、ベストミックス、新電力)

関西電力管内の今夏の電力供給不足が見込まれことから、福井県にある大飯原発の運転再開が進められている。
政府の原発再稼働の進め方が拙速であるとの国民からの批判が多いが、大飯原発が立地する福井県は再稼働を容認している。一方、原発から100km圏内に入る大坂市の橋本徹市長をはじめとして、滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二知事は異を唱えている。
これは数か月または数年間で結論がでる短期的なエネルギー問題であるが、2030年までの長中期的なエネルギーの基本政策については、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が「エネルギー基本計画」(2010年6月策定)を全面的に見直している。
昨年10月から開始された委員会の様子は、ニコニコ動画で臨場感ある映像として見ることが出来る。

「エネルギー基本計画」(2010年6月策定)より抜粋: 
『・・・・2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008 年度)約60%、(1998年度)約84%)。さらに、2030 年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含むゼロ・エミッション電源比率を、2020 年までに50%以上、2030 年までに約70%とすることを目指す。・・・・・・』
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経済産業省は基本問題委員会が進められている間に、原子力および水力、地熱、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー由来の電源を示す「ゼロエミッション電源」という言葉と、原子力を中核とした水力、火力など、安全性・経済性・安定性・環境保全性で最適な電源構成を示す「電源ベストミックス」という言葉が、原子力発電を推進することを前提に使用されていることなどを理由に、その使用を中止させた。
また、エネット、サミットエナジー、ダイヤモンドパワーなど電力小売自由化で新規参入者となった「特定規模電気事業者(PPS:Power Product & Supplier)」を、既存の電力10社に対比させるために「新電力会社」と呼称を変更させた。
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委員会では2030年の電源構成について審議され続けているが、原発廃止派と原発擁護派との意見が全く噛み合わない。
原発廃止派は原発擁護派に対し、電源構成における原発割合が維持または増加する根拠を明確にするよう要求し、一方、原発擁護派は原発廃止派に対し、再生可能エネルギー割合が大幅に増加する根拠を明確にするよう要求する。

原発を擁護する学識経験者、通産官僚出身者、企業経営者の委員は、原発を原則的に40年で廃炉にするという政府の閣議決定は何ら科学的根拠がなく、原発の安全性に対する政治からの中立性が保たれていない、米国では60年を超す原発も多い、原発の稼働率を海外と同様に高くできると主張する。極めて消化不良な「核の傘と原発」を論じて、日本の原発関連技術の世界的な優位性、継続性、必要性から原発を擁護する国際派委員もいるが、持論を展開するにはふさわしくない場であることを承知の上での発言としか思えない。
過激な発言で周囲から毎回批判されるのは、再生可能エネルギーを崇める原発廃止派の委員である。もちろん環境省が好む消費者代表、背景が不明な市民代表も原発廃止派である。彼らには社会を変えたいという信念は強く感じるが、残念ながら根拠となる技術的なバックグラウンドがない。
彼ら委員から、中庸をとった現実的と思われる電源構成、「エネルギーミックス」が導かれることは決してないだろう。
大飯原発再稼働と中長期エネルギー政策(基本問題委員会、原発廃止派、擁護派、ベストミックス、新電力)_e0223735_10205020.jpg
ここで重要なことは、東日本大震災と福島第一原発事故を契機に開催された本委員会の理念に委員各位が立ち返ることである。おのずから結論が見えてくるはずである。

ともあれ、国民はこの委員会に注視していくことが必要である。

by ecospec33 | 2012-04-13 10:22 | ●原発問題と電力需給逼迫  

多難な新年度(南海トラフ巨大地震、事業継続計画、国家存亡危機、リスボン地震、被害額)

2012年度を迎えた。入学式には都合がよいが、寒さが続いて、楽しみの桜は予想以上に遅れている。昨日1日に自転車で多磨霊園内を通過したが、しだれ桜だけがやっと開花したところであった。

年度初めに賑わしている話題は、消費税増税、電気料金値上げ、電力逼迫と原発再稼働、食品の放射性セシウム新基準であるが、東日本大震災は1年を過ぎて見直された東京直下型地震と南海トラフ巨大地震は、過去の想定をはるかに上回る震度と津波が想定され、国、地方自治体、事業者、国民それぞれが防災、減災に対して様々な対応が必至となった。
多難な新年度(南海トラフ巨大地震、事業継続計画、国家存亡危機、リスボン地震、被害額)_e0223735_1012337.jpg
私も担当したが、各事業者は2003年に公表された南海・東南海・東海地震の震度と津波の想定図を基に、本社、営業所、工場、関係会社などの被害想定をし、復旧に関わる問題の抽出と検討、そして対応策の検討と対策を講じてきたであろうが、2011年の東日本大震災の大規模被害と福島原発事故による電力逼迫を受け、また昨日、一昨日の新たな大地震の公表を受け、事業継続計画(Business continuity planning、BCP)の大幅な見直しが必須となった。

この南海トラフ巨大地震発生は、事業者だけでなく国家の存亡危機の問題である。
浜岡原発で建設中されている18mの防潮堤を3m乗り越える可能性があるという象徴的な問題だけではない。
2003年に想定された南海・東南海・東海地震の直接的・間接的な経済被害総額は53兆円~81兆円であったが、南海トラフ大地震による被害総額はこれを遥かに凌ぐものである。
確実に被害を受ける震度6強以上の面積が2003年の約5倍に拡大したことから、約250兆円の被害を受けることが算定される。これは約500兆円のGDPの半分に相当する莫大な金額である。
ちなみに、内閣府が阪神淡路大震災と東日本大震災によるストック(建築物、ライフライン施設、社会基盤施設など)といった直接被害額をそれぞれ、9.6兆円、16.9兆円と推計している。

1755年にポルトガルで発生したマグニチュード8.5~9.0のリスボン地震によって、首都リスボンを中心に約6万人が死亡し、国力が大幅に低下し、国際的地位が失墜した。このときはポルトガルのGDPの3割~5割が失われたそうである。
このため、南海トラフ大地震と首都直下型地震の問題は、政争化した消費税増税などを吹き飛ばすほどの桁違いに大きい国家戦略上の命題である。

自治体による被害想定と対策の見直し、首都機能移転・分散の計画など早急な対応が求められることになり、引き続き国家多難な新年度を迎えることになった。

by ecospec33 | 2012-04-02 10:16 | ●その他社会問題