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カテゴリ:●原発問題と電力需給逼迫( 30 )

 

原子力行政の更なる見直しⅢ(原子力委員会、原子力政策大綱、策定会議、廃止)

新たな『原子力政策大綱』の策定が完全に中止となった。
2日に原子力委員会が「新大綱策定会議の廃止等」と題して、『新たな原子力政策大綱の策定を見合わせることが適当と考える。そこで、同会議における審議を中止するとともに、同会議を本日付けをもって廃止する。』と公表した。

2010年12月から開始された新大綱策定会議は、福島第1原発事故による中断後、2011年9月に再開され、2012年の9月を目途に取りまとめられる予定であった。しかしながら、この6月に電力業界など原発推進側だけを集めた核燃料サイクルの秘密会議が発覚し、内外から批判を受けて再中断を余儀なくされた。それにもかかわらず、8月には原子力委員会メンバーのみで取りまとめるべく検討していたが、ここで力尽きたようである。
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また、「新大綱策定会議の廃止等」の最後に、『原子力委員会は、原子力利用に関する政策を企画し審議し決定するとの職責を果たす観点から、今後も、中立性、公正性、透明性に十分配慮しつつ、有識者からのヒアリング等による専門的知見の集積に努め、これまでの新大綱策定会議での審議内容も考慮し、原子力利用に関する政策の重要課題毎に提言等を行っていくこととする。』とある。
原子力員会は原子力政策決定の法的な権限があると自ら認めているにもかかわらず、政策の重要課題毎に提言等を行うことに留めている。原子力委員会に対しては、この自己矛盾を放置し続けたことによって、その重責を回避し続けることが出来たかを問いたいところである。

これら関しては、9月26日付で「原子力行政の更なる見直しⅠ、Ⅱ」で、『原子力規制委員会発足ばかりでなく、原子力委員会の法的な役割と組織上の立場に齟齬があり、原子力委員会が原子力政策大綱を作る資格に欠けるなどの問題が露呈しており、原子力行政を見直す必要がある。』と、記したとおりである。
原子力行政の更なる見直しⅠ:http://ecoeng.exblog.jp/18933500/
原子力行政の更なる見直しⅡ:http://ecoeng.exblog.jp/18933532/

by ecospec33 | 2012-10-04 08:38 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原子力行政の更なる見直しⅡ(原子力基本法、原子力委員会、松田美夜子、原子力白書、原子力政策大綱)

2007年の正月に、松田美夜子女史から年賀状が届いた。それは原子力委員会の委員就任の挨拶状でもあった。
女史は、家庭ごみの分別排出とリサイクルを進めた市民活動の経験から生活環境評論家となり、各種のリサイクル法の審議会委員として法成立に関与し、その間、富士常葉大学環境防災学部の教授を務めた人物である。2005年から6年にかけての「容器包装リサイクル法」の改正時にお近づきにさせていただき、企業の立場を聞いて頂いたが、華やかで快活で、いつも笑顔の“おばちゃま”という感じであった。
私から女史に次のメールを差し上げたところ、ご指摘の通りとの返信があった。
「・・・長年のご活躍が、より大きな社会貢献の場へと飛躍されたことを心よりお喜び申し上げます。4年前の原子力発電所の不具合隠蔽問題、昨年の水力発電所(その後、原発にも波及)の検査改ざん問題など、電力会社と行政に対する社会の不信感を払拭させなければ、原子力発電所の核廃棄物の適正処理に科学的根拠があったとしても、長期にわたっての安全性の維持確保が求められる処理システムに対して、社会・市民からの同意は得られないのではないでしょうか。・・・」
その後の女史の原子力委員会委員としての活躍は承知していないが、今般、原子力規制委員長に就任した田中俊一氏が原子力委員会委員長代理であった当時の1期3年間務め、2009年末に下りられたそうである。

原子力委員会の委員には、松田美夜子女史のような経験と専門性が求められるが、原子力行政の実態がどうであろうとも、委員会として法で規定された役割と権限を認識し、それに伴う責任を痛切に感じてもらわなくてはならないだろう。それが全う出来ないのであれば、実態に適した法の改正が求められるのである。
骨抜きされたと言われる『革新的エネルギー・環境政策』の(2)原発に依存しない社会の実現向けた5 つの政策の中でも、「政府は、以下の内容を盛り込んだ新たな原子力政策を、エネルギー・環境会議の場を中心として確立する。なお原子力委員会についは平和的利用の確認など機能に留意しつつ、その在り方に関する検討場を設け、 組織の 廃止 ・改編 も含めて抜本的 に見直す。」と記載されている。

原子力委員会は原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画を示す、新たな「原子力政策大綱」の策定作業を進めてきたが、本年8月中旬に発覚した原子力推進派だけの秘密会議問題で頓挫している。
平成21年版「原子力白書」を最後に発行できていないにもかかわらず、「原子力政策大綱」だけを策定しようとするのが不思議なことで、また法律に規定された「エネルギー基本計画」や「科学技術基本計画」と同列に捉えて、これを策定するのが委員会の役割と思い込んでいること自体が誤りである。

ともあれ、原子力規制委員会が発足したが、原子力行政の根幹である原子力委員会の早晩の見直しが必要である。

by ecospec33 | 2012-09-26 12:20 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原子力行政の更なる見直しⅠ(原子力基本法、原子力委員会、規制委員会、革新的エネルギー・環境戦略)

原子力行政の更なる見直しⅠ(原子力基本法、原子力委員会、原子力規制委員会、革新的エネルギー・環境戦略)
9月19日に、内閣は14日に「エネルギー・環境会議」で決定した、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」との目標を掲げた『革新的エネルギー・環境戦略』について、次のとおり閣議決定した。
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経団連米倉弘昌会長の「国家戦略会議」への出席拒否と辞任示唆、経済3団体合同の記者会見に見られる財界の強硬な反発、および米国への配慮などにより、閣議で決定されるはずであった『革新的エネルギー・環境戦略』は骨抜きされ、資料としての扱いとなったのである。
今後は、「エネルギー政策基本法」に規定され、閣議で決定されるべき「エネルギー基本計画」の取り扱いに注視する必要があるが、そのとりまとめは容易ではない。
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同日19日に、『原子力規制委員会』と、その事務局である『原子力規制庁』が環境省の外局に発足した。原子力規制委員会の初代委員長に、この原子力委員会委員長代理を務めたことのある田中俊一氏が就任した。このため、これまで原子力を推進してきた『原子力村』の中心人物であるとして、この人事を批判する声が与党内もあがった。
この『原子力委員会』と『原子力規制委員会』の役割と権限は、6月に新たに改正された「原子力基本法」、「原子力委員会設置法」と、新たに成立した「原子力規制委員会設置法」に規定されている。
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『原子力委員会』については改定前と変更なく、次のとおり規定されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「原子力基本法」第五条(任務)
原子力委員会は、原子力利用に関する事項(安全の確保のうちその実施に関するものを除く。)について企画し、審議し、及び決定する。
「原子力委員会設置法」第二条(所掌事務)
委員会は、次の各号に掲げる事項(安全の確保のうちその実施に関するものを除く)について企画し、審議し、及び決定する。
一 原子力利用に関する政策に関すること。
二 関係行政機関の原子力利用に関する事務の調整に関すること。
三 関係行政機関の原子力利用に関する経費の見積り及び配分計画に関すること。
四 核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。
五 原子力利用に関する試験及び研究の助成に関すること。
六 原子力利用に関する研究者及び技術者の養成及び訓練(大学における教授及び研究に係るものを除く。)に関すること。
七 原子力利用に関する資料の収集、統計の作成及び調査に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項に関すること。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これによって、原子力委員会は法的には大きな権限と役割を担っていることが分かるが、行政組織としての位置づけは内閣府の一審議会であり、また一諮問委員会なのである。このため、文部科学省の原子力の研究開発の政策、経済産業省のエネルギーに関する原子力政策、外務省の科学及び原子力の平和的利用に係る外交政策などについて、原子力委員会が調整のための審議をしているだけで、「原子力利用に関する政策を決定」しているかのように振る舞っているに過ぎない。

2011年4月25日に、福島第一原発事故後に何ら行動をおこさない原子力委員会に対し、業を煮やした野党が衆議院科学技術特別委員会で「火事場は見ているだけか」のように詰問したのに対し、近藤駿介原子力委員長と鈴木達治委員長代理が法で規定されている責任から逃れるような肩透かしな答弁をした。原子力委員会の法の規定と原子力行政の実態がかい離していることからすれば、この答弁は止むを得ないものと理解できるが、法に規定された権限の裏返しである責任は免れない。

by ecospec33 | 2012-09-26 12:13 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原発再稼働と電力需給問題Ⅲ(需給検証委員会、大阪府市、大飯原発再稼働、揚水式水力発電、総合効率)

5月4日の大阪府市の第8回エネルギー戦略会議では、関西電力の岩根茂樹副社長は「(大飯原発3、4号機を再稼働させた場合、揚水発電の増加量は)百数十万kW」と発言し、大飯原発再稼働させても、約5%の電力供給不足であることを認めていたが、その詳細な説明を拒んでいた。
しかしながら、昨日5月10日の国家戦略室の第5回需給検証委員会において、関西電力は大飯原発再稼働によって揚水発電の発電量が210万kW増加するとして、電力需給ギャップが解消されると報告したのである。
関西電力の情報開示が数日間遅れたことに違和感を覚えるが、第5回需給検証委員会が示した資料が次である。
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ここで、資源エネルギー庁がHPで公開している「発受電電力量」から揚水式水力発電の総合効率(揚水用電力に対する発電量の割合)を算定した。年間ベースなので総合効率が100%を超過することもあるだろうが、関西電力を除いて信頼性に欠けるデータである。
関西電力の6年間の平均効率は67.5%であり、需給検証委員会の資料では効率に70.0%を使用しているので、夏場の需給見通しについては信用できそうである。
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ともあれ、5月8日に福井県原子力専門委員会が政府の大飯原発の安全判断を追認する方針としたそうであるが、今夏までに大飯原発再稼働はありえないことを前提にして、昨年の東京電力管内がそうであったように、関西電力管内は緊迫感をもって対応しなくてはならない。

by ecospec33 | 2012-05-11 14:08 | ●原発問題と電力需給逼迫  

クールビズ、サマータイムと電力需給ひっ迫(関西電力、需給ギャップ、大飯原発、おおい町、小浜市)

今日5月3日は大雨になったが、今年のゴールデンウィークは昨年とは違って、東京近郊はどこも混雑しているようだ。
4月30日は武蔵野公園と野川公園のバーベキュー広場は大混雑し、周囲に特有の匂いが漂っていた、また、蕎麦屋に列をなすほど参拝客が多い深大寺では、護摩焚きの後にお坊さんが、「昨年は様々な行事を中止しましたが、今年はコンサートや薪能もやりますので・・・・。」と話した。
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5月1日から官公庁で「クールビズ」(COOL BIZ)が始まった。
環境省は、昨年より1か月前倒しで1か月延長の10月末までの実施を呼びかけた。原子力発電停止による電力逼迫意識を国民に徹底させるためである。
6、7年前これが開始された当時は、小池百合子環境大臣が沖縄の「かりゆしウェア」でアピールしていたが、経営者はノーネクタイなどのだらしなさを嫌って、ISO14001を認証している大手企業でさえ本気になって取り組まなかった。しかしながら、今年は「クールビズ」と同時に「サマータイム」も導入した企業もあり、電力使用の節減、仕事の効率アップ、残業の低減などを図る。
この活動を企業宣伝に当て込む大手企業も現れる始末であるが、実効ある節電が望まれる。
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図に示すとおり、関西電力管内の電力需給ギャップは非常に大きい。
国家戦略室の需給検証委員会はこのギャップを縮小させる技術的、経済的な対応を検討しているが、昨日5月2日に、関西電力の電力供給の積み増しは望めないものの、政府が電力需要の抑制を再検討した結果、需給ギャップを16.3%から15%まで縮小する可能性を示したそうである。
需給検証委員会の配布資料には作成責任者が記されていないが、やっと経済産業省が乗り出したのだろう。前回も指摘したが、官庁は民間より情報を得る能力があり、多くの情報を持っているだから、経団連、日商などの民間に任せず、率先して公平な情報を提示し、委員会に公正な判断を委ねる必要がある。原子力発電の安全問題についても同様である。

5月1日に、大飯原発が立地するおおい町に隣接し、市役所が大飯原発の10km圏内にある小浜市「関西電力大飯原子力発電所3・4号機の再稼働にかかる市議会・原子力発電小浜市環境安全対策協議会に対する説明会」が開催された。
住民からは再稼働に慎重な意見が多く出され、市長は明言を避け、議長は反対を表明したが、市長、議長ともに電源三法交付金がおおい町の六分の一程度しかないことに不満を示したという。
福島第一原発事故の規模の大きさが、原発立地問題を根本的に改革する起爆剤になっていることを認識しなくては、原発再稼働は困難ということである。それには相当な時間を要する。

by ecospec33 | 2012-05-03 09:46 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原発再稼働と電力需給問題Ⅱ(需給検証委員会、関西広域連合、大飯原発、住民説明会)

昨日4月26日に、関西電力の電力需給と大飯原発再稼働の両問題に関して、様々なレベルで動きがあった。
国では国家戦力室第2回「需給検証委員会」、関西では関西広域連合による政府への「運転再開の6項目提言」の申し入れ、福井県の地元おおい町では国の「運転再開の住民説明会」が行われた。

国家戦力室第2回「需給検証委員会」では、電力供給に新たな積み増しは困難との見方で一致し、次回以降は、ピーク時の需要抑制策を引き続き検証するそうである。
第1回会合で、経済団体連合会と日本商工会議所が事業者を代表して昨年の電力需給ひっ迫対応を説明している。しかしながら、このような国家レベルの重要な事象は、経済産業省が把握しておくべきことであり、事業者に対し直接的に調査しなかったのだろうかと訝しく思っている。
また、住友電工が関西地区の工場で自家用発電設備4,000kWを増設するなどを説明したが、このような事業者は多いに違いない。確かに、食品会社の関西地区の2工場でも合計約7,000kWの自家用発電設備を6月末までに設置すると承知している。
経済産業省が事業者に対し、このような実態調査を積極的に行うべきであり、電力需要抑制の予測を提示すべきである。一方、関西電力に対しては供給義務を果たすために、やや大型の火力発電設備の増設を推進させるべきであったと思う。
とかく、関西地区は東日本大震災と福島第一原発事故の直接的な影響を受けなかったために、関東・東北地区に比べ、昨年の夏は節電に対する緊迫感が少なかったのである。
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関西地区の7府県2市からなる関西広域連合が取りまとめ政府への「運転再開の6項目提言」は次のとおりである。
「政府が進める原子力発電所再稼働に関する申し入れ」(4月26日)
1 大飯原発の再稼働に関し、このたび公表された安全基準の各項目がどのようなレベルで満たされているのかを原子力安全委員会が判断し、政府として関西広域連合に説明すること
2 原子力発電に関し、中立性が確保され、科学的、客観的な判断を行いうる体制を早急に構築すること
3 世界的に見ても最高水準といえる安全対策を講じること
4 万が一の事故に備え、政府や事業者のとるべき対策を速やかに講じるとともに、防災指針、防災基本計画や原子力防災体制を緊急に整備すること
5 我が国の将来のエネルギー政策の姿とそこに至るプロセスを示すこと
6 今夏の電力需給について徹底した検証を行うとともに、その全てを公開すること

前回記したとおり、大阪府市が8提言、京都府と滋賀県が7提言をそれぞれまとめていたが、大飯原発の周辺地域がそれよりも政治的に意義のある提言を提出したということであり、これを国が如何にクリアするかということになった。

福井県のおおい町での「大飯発電所3・4号機再起動に係る町民説明会」は1回しか行われない。町民約8,000名に対し約550名が参加したが、この住民説明会は運転再開手続き上の一行事に過ぎない。
産経新聞のアンケート調査(4月18~24日)によると、福井県議とおおい町議は8割超が再稼働を容認している。このため、福井県知事は大飯原発運転再開を容認するだろうが、隣接する滋賀県、京都府は上記の6項目に対する政府の回答次第となった。

ともあれ、小沢議員を巡るくだらない政局動向は別として、生活に直結する電力、エネルギー問題を注視していく必要がある。

by ecospec33 | 2012-04-27 09:16 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原発再稼働と電力需給問題Ⅰ(需給検証委員会、大阪府市、滋賀県、京都府、提言)

4月26日午前中に小沢被告に黒に近い灰色の無罪判決がでた。はたまた政局が混乱して政治が低迷することはまっぴら御免である。2010年6月に菅前首相が「小沢さんにはしばらく静かにしていてほしい」と言ったが、これからも、そうしてもらいたい。

4月23日に国家戦略室が第一回「需給検証委員会」を開催した。第三者機関で2012年夏場の電力需給の見通しを検証し、5月連休明け目途に取りまとめる予定であるという。
このような事案は、今でも経済産業省が所管する立場にあるだろうが、原発推進の姿勢が国民の信頼を失ったこともあり、国家戦略室が担うことになっている。
九州、関西、北海道の各電力会社が夏場に電力不足に陥ることを表明しているが、大飯原原発再稼働問題と敦賀原発直下の活断層問題を抱えている関西電力の需給問題が、本検討委員会の最重要テーマである。

大飯原発運転再開に関する直近の世論調査の結果は次のとおりである。
●NHK(4月13~15日):大飯町で賛成54%、反対36%、周辺自治体で賛成22%、反対60%、大阪市で賛成28%、反対62%
●朝日新聞(4月21、22日):福井で賛成36%、反対43%、近畿では賛成29%、反対52%
大飯原発再稼働に向けた政府の拙速な手続きが国民の不信感を深めたといって良い。このように事がこじれたからには、大飯原発に限らず全ての原発の再稼働については、2、3年期待できないと考えた方が良いだろう。
4月24日に「維新の会」を率いる大阪市の橋本徹市長が「原発再稼働の8項目の提言」を政府に申し入れた。これは、彼の政治パフォーマンスに近いが、4月17日に京都府の山田啓二知事と滋賀県の嘉田由紀子知事が共同でまとめた「国民的理解のための原発政策への提言」の方が建設的である。

大阪府市の「大飯原発再稼働の8項目の提言」(4月24日)
一、 原発から100キロ圏内の都道府県と安全協定を締結できる仕組みを構築する
一、 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現に取り組む
一、 国民が信頼できる規制機関として、政府からの独立性が高い三条委員会の規制庁を設立する
一、 新体制のもとで安全基準を根本から作り直す
一、 新たな安全基準に基づいた完全な安全評価(ストレステスト)の実施
一、 重大な原発事故に対応できる防災基本計画と危機管理体制の構築 
一、 電力需給の徹底的検証と結果の開示
一、 事故収束と損害賠償など原発事故で生じるリスクに対応できる仕組みの構築

京都府と滋賀県の「国民的理解のための原発政策への提言」(4月17日)
1 中立性の確立~政治的な見解ではなく信頼のおける中立的な機関による専門的な判断を~
2 透明性の確保~国民の納得できる情報公開を~
3 福島原発事故を踏まえた安全性の実現~免震事務棟、防潮堤などの恒久的な対策ができていない段階における安全性の説明を~
4 緊急性の証明~事故調査が終わらない段階において稼働するだけの緊急性の証明を~
5 中長期的な見通しの提示~脱原発依存の実現の工程表を示し、それまでの核燃料サイクルの見通しを~
6 事故の場合の対応の確立~オフサイトセンターの整備やマックス2、スピーディなどのシステムの整備とそれに伴う避難体制の確立を~
7 福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮について~東京電力はもちろんのこと、国においても福島原発事故被害者に責任を持って対応するとともに、福井県の今までの努力に対し配慮を~

ともあれ、原子力規制庁を早急に設置し、脱原発の工程を明らかにし、福島第一原発事故の原因を踏まえた安全対策の実施など原発再稼働の手順を明確にすることが必要である。

by ecospec33 | 2012-04-26 14:43 | ●原発問題と電力需給逼迫  

大飯原発の再稼働と原発依存からの脱却は矛盾?(枝野経済産業大臣、福井県、エネルギー基本計画)

昨日4月14日に、枝野経済産業大臣が福井県の西野県知事と会談し、関西電力大飯原発3、4号機の再運転への理解を求めた。
この会談で、枝野経産大臣は、「これまで基幹電源として電力供給を担ってきた原子力発電所を、安全確保と、さらなる信頼性向上を妥協なく追及していくことを大前提に、今後とも引き続き重要な電源として活用することが必要と考えております。知事はじめ地元の皆さまにご理解いただき、この再稼働についてご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。」と述べた。
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その前日13日に開かれた衆議院の経済産業委員会で、福島第一原発事故を受けて、新たな「エネルギー基本計画」の策定を目指す経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本計画委員会が、2030年の時点で全電力に占める原発の比率を0%から35%までとする5つの選択肢を示していることに関して、枝野経産大臣は、「原発依存からの脱却を最大限進めていくことは政府としての明確な方針だ。私自身も、できるだけ早く原発依存から脱却して原発への依存をゼロにしたい。」と述べている。

総合資源エネルギー調査会基本計画委員会では、このような矛盾した政府の対応を持論に結びつける委員が多い。
原発廃止派は政府の原発依存からの脱却を金科玉条として崇めているが、この原発再稼働は科学的が根拠ないからこそ、学識経験者である原発擁護派の意見を重用しろと言わんばかりの発言をする。
また、原発へ政府の対応が矛盾していると考える国民も多いかと思うが、大飯原発再稼働という短期的な電力逼迫問題と原発依存からの脱却という中長期的なエネルギー問題を同列視してはならない。そう理解したいと思っている。

ともあれ、総合資源エネルギー調査会基本計画委員会では、『・・・2030年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行う・・・・』とした現行の「エネルギー基本計画」策定にも参画した原発擁護派、中での学識経験者(科学者、工学者)は、福島第一原発事故は科学者、工学者の失態の結果であったことも念頭に入れて発言しなくてはならない。

by ecospec33 | 2012-04-15 09:22 | ●原発問題と電力需給逼迫  

大飯原発再稼働と中長期エネルギー政策(基本問題委員会、原発廃止派、擁護派、ベストミックス、新電力)

関西電力管内の今夏の電力供給不足が見込まれことから、福井県にある大飯原発の運転再開が進められている。
政府の原発再稼働の進め方が拙速であるとの国民からの批判が多いが、大飯原発が立地する福井県は再稼働を容認している。一方、原発から100km圏内に入る大坂市の橋本徹市長をはじめとして、滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二知事は異を唱えている。
これは数か月または数年間で結論がでる短期的なエネルギー問題であるが、2030年までの長中期的なエネルギーの基本政策については、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が「エネルギー基本計画」(2010年6月策定)を全面的に見直している。
昨年10月から開始された委員会の様子は、ニコニコ動画で臨場感ある映像として見ることが出来る。

「エネルギー基本計画」(2010年6月策定)より抜粋: 
『・・・・2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008 年度)約60%、(1998年度)約84%)。さらに、2030 年までに、少なくとも14 基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率約90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含むゼロ・エミッション電源比率を、2020 年までに50%以上、2030 年までに約70%とすることを目指す。・・・・・・』
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経済産業省は基本問題委員会が進められている間に、原子力および水力、地熱、太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギー由来の電源を示す「ゼロエミッション電源」という言葉と、原子力を中核とした水力、火力など、安全性・経済性・安定性・環境保全性で最適な電源構成を示す「電源ベストミックス」という言葉が、原子力発電を推進することを前提に使用されていることなどを理由に、その使用を中止させた。
また、エネット、サミットエナジー、ダイヤモンドパワーなど電力小売自由化で新規参入者となった「特定規模電気事業者(PPS:Power Product & Supplier)」を、既存の電力10社に対比させるために「新電力会社」と呼称を変更させた。
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委員会では2030年の電源構成について審議され続けているが、原発廃止派と原発擁護派との意見が全く噛み合わない。
原発廃止派は原発擁護派に対し、電源構成における原発割合が維持または増加する根拠を明確にするよう要求し、一方、原発擁護派は原発廃止派に対し、再生可能エネルギー割合が大幅に増加する根拠を明確にするよう要求する。

原発を擁護する学識経験者、通産官僚出身者、企業経営者の委員は、原発を原則的に40年で廃炉にするという政府の閣議決定は何ら科学的根拠がなく、原発の安全性に対する政治からの中立性が保たれていない、米国では60年を超す原発も多い、原発の稼働率を海外と同様に高くできると主張する。極めて消化不良な「核の傘と原発」を論じて、日本の原発関連技術の世界的な優位性、継続性、必要性から原発を擁護する国際派委員もいるが、持論を展開するにはふさわしくない場であることを承知の上での発言としか思えない。
過激な発言で周囲から毎回批判されるのは、再生可能エネルギーを崇める原発廃止派の委員である。もちろん環境省が好む消費者代表、背景が不明な市民代表も原発廃止派である。彼らには社会を変えたいという信念は強く感じるが、残念ながら根拠となる技術的なバックグラウンドがない。
彼ら委員から、中庸をとった現実的と思われる電源構成、「エネルギーミックス」が導かれることは決してないだろう。
大飯原発再稼働と中長期エネルギー政策(基本問題委員会、原発廃止派、擁護派、ベストミックス、新電力)_e0223735_10205020.jpg
ここで重要なことは、東日本大震災と福島第一原発事故を契機に開催された本委員会の理念に委員各位が立ち返ることである。おのずから結論が見えてくるはずである。

ともあれ、国民はこの委員会に注視していくことが必要である。

by ecospec33 | 2012-04-13 10:22 | ●原発問題と電力需給逼迫  

原発の防災域拡大と原発事故の被害規模(原発の立地条件)

10月20日に、原子力安全委員会が原発の防災域の拡大案を示した。
これまでの原子力発電所から半径約8~10km圏の防災対策重点地域(EPZ)を廃止し、半径約30km圏の緊急時防護措置準備区域(UPZ)として新たに拡大するものである。
この防災域拡大案によって、対象市町村は水戸市など県庁所在地も含まれ、44市町村から135市町村に、また人口も約205万人から793万人に増加するという。

福島原発事故の被害規模から想定されたものであろうが、きめ細かい防災対策が求められる自治体は困惑しており、原発再稼働に向けて、国も電力会社も同様に困惑していることだろう。
しかしながら、それこそが原子力行政というものの本質だろう。

10月11日に、茨城県東海村の村上村長が細野原発相に、東海第二発電所を廃炉とする文書を手渡した。その理由を、「東海第二は原発の立地条件として不適切。また(運転開始から33年経過した)老朽原発である。半径30キロ圏内に100万人が住み、避難計画策定は不能。」としている。
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9月27日にマイブログで、世界の「原子力発電所の事故による周辺地域への被害影響度について」を報告した。今回は国内の原子力発電の事故による被害規模について、同様な分析を行った。
原子力発電所の出力と半径約30km圏の緊急時防護措置準備区域となる市町村人口との積を、原発事故が発生した場合の被害規模と設定した。

これによれば、東京電力の柏崎刈羽原発の被害規模が最大となり、再稼働が到底無理と思われる浜岡原発が続く。予想に反して、福井県内の敦賀、美浜、大飯、高浜の各原発は中程度であったが、これらを合計すれば、浜岡原発の被害規模を超える。
東海村の村長が廃炉を求めた東海第二原発は、半径約30km圏の対象人口が100万人を超えるが、原子炉が1基、出力110万kWのため、被害規模は中程度であった。

東海村の村長が指摘しているとおり、国は、安全対策実施状況、老朽化、立地条件などをもとに、原発の廃止および再稼働の優先順位を早急に提示すべきである。

by ecospec33 | 2011-10-22 10:34 | ●原発問題と電力需給逼迫