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カテゴリ:●用水・排水、上水・下水問題( 10 )

 

井戸水のヒ素汚染とシアン検出問題(地下水、茨城県神栖市、和解、伊藤ハム東京工場)

2012年6月7日に、茨城県は国の公害等調整委員会の裁定を踏まえ、神栖市の住民に和解金として6,000万円を支払うことで住民側と和解した。また6月11日に、住民側は国を相手取っての民事裁判は行わず、正式にこの裁定を受け入れた。

2000年頃から神栖市の住民が手のふるえや頭痛などの健康被害を訴え、2003年に井戸水から旧日本軍の毒ガス兵器に使用された有機ヒ素化合物ジフェニルアルシン酸(Diphenylarsinic Acid;DPAA)が「地下水の水質汚濁に係る環境基準」の450倍検出された。
2006年に地元住民37人が、国の公害等調整委員会に国と茨城県に対して損害賠償を求めて申請し、2012年5月11日に公害等調整委員会は県の責任だけを認め、総額約2,800万円の賠償金を支払う裁定が下っていた。
神栖市の飲用井戸による健康被害と農業用井戸による農作物被害を引き起こした地下水の汚染を、『1983年以降、1997年までの間に、何者かが・・・(井戸周辺の)いけすを埋め戻した際、廃棄物とともに大量の(旧日本陸軍が製造・保管していたヒ素化合物であるジフェニルアルシン酸)DPPAを混入したコンクリートを地中に流し込んだ。本件コンクリート塊に含まれていたDPAAを高濃度に含んだ水は、周辺地下水より重いため、汚染を拡散しながら地下水中を降下浸透した。・・・』と国は裁定している。

この問題が大々的報じられてから、数年後の2008年9月末から10月上旬にかけて、千葉県柏市にある伊藤ハム東京工場の井戸水から水道水の水質基準(0.010 mg-CN/L)を超えるシアン化合物(0.014~0.037 mg-CN/L)が検出され、この井戸水を使用し製造したソーセージやピザを自主回収する回収する騒ぎが発生した。

当初、この工場付近には戦前、陸軍省の基地・施設があり、当時の地図に「毒ガス室」の名称が掲載されていることから、青酸ガスが漏れて地下水に浸透したのではないかとの報道もあったが、その年の12月に第三者調査委員会が、『・・・アンモニア性窒素が多く含む水に塩素を添加して処理を行った際、塩素添加量が不十分である場合は、結合塩素が生じ、この結合塩素と有機物が反応して微量ながらシアンが生成することが、室内実験によって確認された。・・・おそらく、再現試験で実証した現象が、・・・井戸水の水処理において発生し、悪い条件が重なって基準値を超えるシアンが検出されたものと推察される。・・・不十分な塩素処理が行われた要因としては、塩素の注入量の変化や添加する塩素(次亜塩素酸)の有効塩素濃度の低下と推測される。・・・』と結論づけた。

ともすると、地下水から旧日本軍の亡霊が現れる。
神栖市では、環境省が当該のコンクリート塊などの汚染源を掘り出し、焼却処分したが、汚染源に近い井戸水の有機ヒ素化合物の濃度は環境基準を上回っており、基準以下になるに数十年かかるという。

by ecospec33 | 2012-06-12 11:34 | ●用水・排水、上水・下水問題  

IFAT ENTSORGA視察への誘いⅡ(バイオマス、ドイツの下水処理場、アルキメデスの揚水ポンプ)

IFATなど国際的な総合展などを海外視察したとして、その成果を得ることは容易なことでない。
海外視察と称して外遊するのは国会議員、地方議員ばかりでない。民間の企業人も同じことである。
米国へのコージェネレーションなど分散型エネルギーに関する視察団に参加した時には、トヨタは新人に近い若手、ホンダとエンジン・メーカーの一つは定年直前の熟年者が参加していた。企業毎に人選に様々な理由があるだろうが、彼らは外遊のみではないかと思った。また、私ごとになるが、数年前に米国の世界最大級の製紙会社と紙パック・メーカーを視察する要請が関係業界団体からあったが、外遊のみであることから丁重にお断りしたことがあった。

IFAT2002では、廃棄物処理とリサイクルに関する出展も多く、バイオマス・エネルギーに関連するガスエンジンなどの単体展示もあった。当時、日本では大手ゼネコンが乳牛の家畜糞尿をメタン発酵したバイオガスを燃料として発電する極めて高額な設備を進めている時期であったが、ドイツでは、より安価で簡易な設備が普及し終わる段階にあり、前年には補助金が打ち切られたと記憶している。
この視察でバイオマス利活用推進の意を強くした私は、その7年後に、エネルギーアドバンスの若手エンジニアの協力を得て、乳業工場での食品廃棄物のバイオマス・システムを完工させることが出来た。現在も毎年数億円の経済的な利益を得ているシステムである。
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IFAT2002を視察した後に、上司の計らいでドイツ南部の中核都市の下水処理場を視察する機会を得た。この下水処理場は、市内と市外合わせ約23,000人の下水道と乳業工場と麦酒工場の排水も処理していた。
処理方式は、し渣分離→浮上分離→無酸素調整槽→嫌気脱窒槽→水中曝気式好気槽→沈殿槽であり、オーソドックスな嫌気好気方式であるが、余剰汚泥はメタン発酵させ、そのバイオガスを燃料としてディーゼルエンジン発電機(100kW×3基)を動かしていた。ドイツでは、このような小規模な下水処理場でも余剰汚泥による自家発電設備を備えている。歴史的にディーゼルエンジンへの抵抗が少ないのではないかという印象を持った。発酵後の脱水汚泥は場内で乾燥までおこない、堆肥原料として出荷していた。
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また、この下水処理場で注目したのは、ステンレスを多用した清潔な設備、緊急用の液体酸素サイロだけではなかった。沈殿槽からの返送汚泥を「アルキメデスの揚水ポンプ」で汲み上げていたことである。沈殿槽からの返送汚泥を通常のポンプで送液すると高い剪断で凝集した汚泥が壊され、活性汚泥としての機能が低下する。この「アルキメデスの揚水ポンプ」であれば、その不安は解消されるのである。
このポンプは直接実用できないとしても、その数年後に新設した食品工場の排水処理では、
高剪断力ではなく、曝気(エアレーション)機能も期待できる「エアーリフト・ポンプ」を活用することにした。

先日、東京理科大学工業化学科の元教授と会食した際、「図解 古代・中世の超技術38」(小峯達男著)を、「古き時代の技術を学ぶことも必要である。」として頂いた。栞のはさまったページを開くと、この「アルキメデスの揚水ポンプ」であった。
『アルキメデス(古代ギリシャ、BC3世紀)の数学研究のひとつに「らせん」があり、その研究の応用として製作・実用化された器具です。この原理は、現代でもいろいろなところで使われています。』と記され、古代のナイル川の灌漑用ポンプから現代のオランダの風車の灌漑用ポンプとして使われていると解説されていた。

このブログを読んで、「IFAT2012 ENTSORGA」を視察したいと思った方もおられるかも知れないが、環境へのどのような問題意識を持っているか、視野を広げ、視点を増やすことが出来るのか、視察の成果が得られるか、を考えご判断願いたい。
ともあれ、問題意識と目標を持って自主的、積極的に海外視察することが必要である。

by ecospec33 | 2012-03-28 09:12 | ●用水・排水、上水・下水問題  

IFAT ENTSORGA視察への誘いⅠ(水メジャー、水ビジネス)

国際的な展示会も様々であるが、先月ビッグサイトで開催された「Interaqua2012 第3回国際水ソリューション総合展」は、かなり見劣りするものであった。
これについては入場料が無料であったので我慢するとして、2002年5月にドイツで開催された「IFAT2002」を視察する機会があった。日本からは視察ツアーの団体で乗り込む人もいたようであるが、私は環境エンジニアリング会社に勤めている知り合いと二人での視察であった。ちなみに、当時の入場料は約5000円であった。
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「IFAT(International Trade Fair for Water, Sewage, Refuse and Recycling)」(2010年の開催から「IFAT ENTSORGA」と改名)は、ミュンヘンの新国際見本市会場で隔年毎に開催される水と廃棄物など環境全般に関する世界最大の環境ソリューション展である。
上水道、下水道に関連する機器、装置、設備および運用に関わる計装設備などが展示されていた。日本ではポンプも計器も国内製が世界最高レベルであると確信に似た気持を持っていたのだが、そうではなかった。欧米に科学技術を学んだ明治維新からの近代化の歴史を考えれば、当然のことと納得せざるを得なかった。
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当時、日本では上水道の民活と民営化が叫ばれ始めており、また商社などが海外の水メジャーとの提携を始めた時期であったが、海外では電力などのインフラ事業を展開する民間企業が自治体や企業の上水道と下水道事業に手を広げており、これを肌で感じることとなった。
水メジャーとしての多国籍企業であるフランスのヴィヴェンディ(Vivendi、後にヴェオリア・エンバイロメント (Veolia Environment))、オンデオ(Ondeo、後にスエズ・エンバイロメント(Suez Environment))、ドイツのRWE、イギリスのテムズ・ウォーター(Thames Water Utilities)が出展していた。
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ここ数年、日本の経済産業省は水ビジネスの積極的な国際展開を後押しするために、「水ビジネス・国際インフラシステム推進室」を設置し、また地方自治体、商社、エンジニアリング会社、機器メーカーなどと水ビジネスを国際展開していく上で必要な情報収集、現状分析及び課題の明確化並びに具体的な方策等を検討するため、「水ビジネス国際展開研究会」を結成するなど、水ビジネスを国家プロジェクトの一つとしている。
財政が慢性赤字の国に代わって、2200億円の現金や有価証券を保有する東京都水道局、中でも猪瀬副知事はアジア諸国に対する水ビジネスの展開を図っているが、技術的、経済的なリスクは民間企業任せで危うさを感じる。

ともあれ、本年2012年5月に「IFAT2012 ENTSORGA」が開催され、日本に競合する「German Water Partnership」のブースもあり、ドイツの水ビジネス事情、世界の水事情を知ることが可能である。
国内の視察よりも海外視察は遥かに刺激的で有意義である。環境を志す諸氏は是非ともドイツ、ミュンヘンへ足を延ばし見分を広めていただきたい。

by ecospec33 | 2012-03-27 10:11 | ●用水・排水、上水・下水問題  

世界水の日と国際水ソリューション総合展(国連ミレニアム開発、RO膜<NF膜<MF膜<UF膜<濾過)

昨日3月22日は、1992年にリオで開催された「地球サミット」の翌年に国連が定めた「世界水の日」(UN-Water World Water Day )であった。各国で水の大切さを認識し、安全な水の確保を求める運動が行われたそうである。
半世紀以上も前になるが、母方の伯父の家に泊まらされたことがあった。早朝、祖父がアルミの洗面器に水を溜めてから、缶入りの歯磨き粉で歯磨きを始めた。その洗面器に汲んだ水でうがいをした後、顔を洗っていた。今では歯磨き時も洗顔の時も水を流したままで済ます人も多いだろうが、一杯の洗面器の水だけで朝の支度を整えていたのである。
私にとって、水の大切さを考える上で懐かしい思い出である。
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世界に目を移すと、安全な飲料水を利用できない人が11 億人おり、劣悪な衛生環境の下で、世界中で毎年500万を超える人たちが、水に起因する病気により死亡しており、また人口増加、経済発展、気候変動などによって、40カ国以上の国において20億人が水不足の状況にあると言われている。
このため、国連ミレニアム開発目標(MDGs;Millennium Development Goals)では、『2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させる』ことを目標にしているほどである。

先月2月15日から17日まで、ビッグサイトで「Interaqua2012第3回国際水ソリューション総合展」が開催されていたので視察した。しかし、「国際ナノテクノロジー総合展」の一隅で、『日本初!水処理技術から水循環ビジネスまでの国際総合展示会』と銘打つ割には極めて小規模な展示であり、期待できるもの、目新しいものは少なかった。
しいて言えば、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)だけだったように思う。海水の淡水化、排水の再生利用、分散型循環利用・・・事業テーマを異にしているが、その多くは、ROなどの膜の利活用にあった。

工場排水を再利用するには、活性汚泥などの生物処理で得られる清澄水を三次処理する必要がある。その処理方法は再利用の用途レベルによって異なる。私の経験では、その用途が洗トイレ用水や修景用水レベルであれば、RO膜を利用する必要は全くなく、ポリエチレン粒子を使用した上向流濾過で十分であった。
一方、上水を仕込み水に利用する場合や、工業用水を洗浄などの生産用水として利用する場合は膜を活用せざるを得なかった。前者はRO膜であり、後者はMF膜であった。
これらの膜の利活用については、東レなどの膜メーカーよりもクリタといった水処理を専門とするプラントメーカーの方が優れていたと思っている。

by ecospec33 | 2012-03-24 16:29 | ●用水・排水、上水・下水問題  

大阪ダブル選挙と3大経済圏の工業用水道(大阪維新の会、地勢)

昨日の大阪首長ダブル選挙で、大阪維新の会の橋下徹新市長(42歳)と松井一郎新府知事(47歳)が誕生した。
日本の中でも閉塞感が最も強いと思われる近畿地区、その中核である大阪が副首都としての役割を果たしてもらいたいと考えているので、今後の若手の旗手に期待したい。
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ところで、2000年から数年にかけて、東京都、愛知県、兵庫県で食品工場において工業用水の活用を進めた。
工業用水が水道水に比べて安価であるのが、その理由である。ちなみに、その経済的メリットは、年間数億円に達した。
東京都と愛知県の工業用水は極めて簡素な運用であるが、近畿地区の工業用水は複雑である。近畿地区は淀川から引き込むため、府と県、市をまたぐからである。
東京都の工業用水の水質管理は徹底しており、都庁には整理された過去の克明なデータが公開されている。一方、近畿地区は各政令指定都市が管理しているが、公開している水質データは非常に粗く、必要なデータが一箇所では収集出来ないのである。
この近畿地区の工業用水道の管理問題は、大阪市と大阪府における二重行政と希薄行政の問題と符合している。
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この工業用水道の管理問題からしても、「大阪維新の会」が目指す大阪都構想では行政範囲が狭いのではないだろうか。副首都としての機能を大阪都に構想するのであれば、近畿経済圏を広域連合として取りまとめないと、東京都、更には首都圏には太刀打ちが出来ない。
大阪府に比べて東京都が関東平野という広大な後背地に抱え、首都として優れた地勢を有しているから、尚更のことである。

ともすれば忘れがちであるが、日本における首都東京と同様に、世界における日本が優れた地勢を有している利点を忘れてはならない。

by ecospec33 | 2011-11-28 18:33 | ●用水・排水、上水・下水問題  

「阿武隈川から放射性セシウム流出」を検証すると・・・

昨日11月25日、新聞各紙に「阿武隈川河口から1日あたり525億ベクレルの放射性セシウムが海に流出」といった記事が載った。
単位が億であるから大量ということは分かるが、リスクが高いのかは判然としない。

このためには、阿武隈川の水量を把握することが先決である。
国土交通省の河川計画などから、阿武隈川下流域の丸森町における平常時の水量は40m3/秒であり、また高水流量は丸森町、河口部の岩沼市で、それぞれ7100、9200m3/秒を読み取った。
これから、河口部の平常時の流量は、40×9200÷7100=51.8m3/秒 と推定される。
これは1日あたり45億リットルの水量である。
51.8m3/秒×60秒/分×60分/時間×24時間/日×1000L/m3=4.48×10 9L/日 

このため、阿武隈川の放射性セシウムの濃度は、12ベクレル/リットルと算定される。
525億ベクレル/日÷45億リットル/日=11.7ベクレル/リットル
国が定めた放射性セシウムの飲料水の摂取基準が200ベクレル/リットルであるので、飲水してもリスクが少ない濃度と言える。

京都大などの合同調査は、阿武隈川の河川水を取水し、それから放射性物質濃度を測定し、これに水量を掛け合わせることで、海域への放射性物資の流出量を算定したのであろうから、この過程を逆算しただけのことである。
上流域では、これよりも流出量が多いそうであるが、ともあれ、新聞はセンセーショナルな文面にしたがるから注意深く検証した方が良いということである。

by ecospec33 | 2011-11-26 07:30 | ●用水・排水、上水・下水問題  

エセ科学とエセ技術は無くならない(疑似科学と疑似技術、ニセ科学とニセ技術)

20年ほど前になるが、プレート式熱交換器に付着するスケール(汚れ、Fouling)を防止するため、ある水処理装置を組み込んだ実験をおこなった。
これを命じた上司は技術雑誌の広告を見て、熱交換器の熱効率が低下しないので長時間の連続運転が可能となるのではないかと、直観し飛びついたようである。私はこれに対し、新しい技術を容易に見つけ出すことは出来ないと冷静に考えていた。
米国製の水処理装置の販売代理店を直接呼んで効用を聞いたが、NASAの開発した技術であることを前面に出して、水の結晶構造を変えることができるなどと説明するのみで、案の定、科学的な根拠がなく納得の行くものではなかった。

上司の思惑とは裏腹に、長時間運転の実験結果は、その水処理装置の有り無しに関わらず、プレート式熱交換器に付着したスケール量は全く変わらなかった。これに対し、販売代理店は実験した系(システム)が水処理装置と合っていなかったと主張したが、技術的なアドバイスもなく埒が明かないので、それ以上の交渉は止めにした。
その後も、同じような目的で磁気式、電場式などの装置を冷却塔に、また重油を低分子化するという売りの装置をボイラーに実装して実験を試みたが、販売者が宣伝するような効果は見当たらなかった。

その後数年経って、子会社が上述のNASA開発の水処理装置を販売しており、関係する工場に冷却塔の付属装置として納入していることを知って驚いた。その子会社の社長はかつての上司が務めていたから尚更のことであった。
また、この水処理装置をボイラー給水に実装した実験を行っていて、スケールと腐食が防止できボイラー用薬剤が不要となったことを理由に、子会社の営業担当者が全ての工場に展開するよう要請してきた。しかしながら、ボイラーの実装実験が水処理装置の有無の差を実証出来るほどの科学的な方法でなかったことから、その要請を断るとともに、1年以上続いていた実装実験を即時に中止させた。
それでも、子会社は社外への販売は止めずに、水道の赤水防止と水道管の腐食防止にマンションなどに売り込んだりしていたが、あるマンションで漏水事故が発生し、水処理装置の効能がなかったとして提訴されてしまった。訴訟では、「水道管の腐食を抑えることで、漏水事故の発生を遅らせることが出来た。」と屁理屈を通して逃れようとしたが、敗訴したそうである。この裁判があって、子会社は水処理装置の販売から撤退したと聞いた。

ほぼ同時期に、この子会社は結氷を促進するという薬剤の特許を申請し、販促用パンフレットを作成するなど販売を開始していた。それは新聞誌上にも掲載された。
アイスバンク(アイスビルダー、氷蓄熱システム)の中に、その薬剤を投入することによって冷媒の蒸発温度を下げることなどができ、10%もの省エネ効果が得られるという触れ込みで、全工場に展開したいという要請があった。
子会社の開発担当者を呼んで、省エネ効果が得られた実験の方法と結果を見直し、また食品工場のアイスバンクで半年間の実験をおこない検証をおこなった。これも案の定の結果で、担当者の実験は何らの科学的根拠がなく、検証結果も薬剤投入の効果は皆無であった。
これによって、全工場への展開、社外への販売は中止されたが、産業技術総合研究所の博士と共同の特許申請であったために、三菱電機に第三者検証をお願いするなど、多くの時間を費やして打ち消さざるを得なかった。

上司であった子会社の社長とは直接的に話はしなかったが、新技術と思い込んだ装置と近しい担当者への思い入れが、科学的な根拠がないままに進めた事業の失敗であったと思っている。
とかく新技術を触れ込む水処理は、水もの、際物なので細心の注意を図った方が良いというのが私の実体験である。

by ecospec33 | 2011-11-22 06:27 | ●用水・排水、上水・下水問題  

金沢市浅野川の鮎大量死から食品企業の環境リスクを考える(公害防止ガイドライン)

1995年前後に広島市の太田川系の支流で鮎が大量死したことがある。可部にあった乳業工場(協同乳業広島工場と記憶している)の洗浄剤が流出したことが原因であった。
それから5年後に、またもや太田川系の支流で鮎の大量死が見つかり、関係する乳業工場に警察の聞き取り調査の立ち入りがあり、私が急遽現地に飛んで、洗浄剤、殺菌剤の流出の可能性を調査したが、その形跡は全くなかった。
市の調査でも原因は不明であったのだが、鮎の大量死が見つかったという地点が、工場の上流側であったと分かり、安堵したことがあった。
これが、その年の6月5日であった。今回の浅野川の鮎大量死とほぼ同時期に当たるので、何らかの意味があるのだろうかと思う。

数年ほど前にキリンビールの環境部長に、河川への重油流出事故はないかと聞いたところ、『一度もない。リスク管理が徹底している。』との返事が返ってきた。工場での重油漏れ事故は、河川への流出に直結し、大きなリスクとなりうる。
重油はことのほか揮発性に富み、ガソリン様の臭気が漂うので、周辺の集落などでは気づく場合が多い。重油は河川の草木に溜まって、水面に油膜の痕跡を残す。降雨がないと長期間、これが続くのである。また、小魚が弱り、死んで浮上することもある。
工場では、このようなリスクに備え、油吸着シート、オイルフェンス等を用意する必要があるだろう。工場の放流河川の下流に、浄水場の取り入れ口がある場合は、さらに厳しい管理が必要である。
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食品企業にとって、このような環境問題が新聞誌上に載ることだけは避けたいのだが、リスク管理を徹底していると豪語していたキリンビールでさえも、横浜工場で排水の汚泥流出事故を起こし、関係会社社員が書類送検されているのである。
この2005年は、JFEスチール東日本製鉄所と昭和電工千葉事業所など大手企業で相次いで、悪質な公害防止違反事件が発生したため、2006年に経済産業省が企業の社会的責任(CSR)の観点から、新たに「公害防止ガイドライン」を設定した。

このガイドラインの作成は「環境管理における公害防止体制の整備の在り方に関する検討会」で進められ、食品企業の代表としてキッコーマンの環境担当理事が参加していた。
彼は『環境省がやるべきことを経産省が進めている。それに素早さがある。』と、経産省の行動力を称賛していた。
そういう経済産業省であるのだから、原子力発電の安全対策に万全を期してもらいたいものである。

by ecospec33 | 2011-06-17 09:20 | ●用水・排水、上水・下水問題  

排水処理設備の責任体制と運転管理

排水処理設備は食品工場にとって重要な設備ではあるが、その機能から製造設備と比べて、なかなか配慮が行き届かない設備である。このような公害防止設備のある特定工場では工場長が公害防止統括者として公害防止管理者をおいて、水質汚濁、大気汚染に防止に努めなくてはならない。

しかしながら、ある工場長はその任期中の数年間、排水処理設備の現場に一度も行かなかった。トラブルが発生した時は「排水処理の運転者に微生物を知る者がいない。担当者を変える必要がある。」と憮然と構えていた。
また、ある工場長はトラブル時に、排水処理場の管理室の計器を朝から晩まで監視し続けた。監視するだけでは、トラブルを解消できないというのに、これが1週間ほど続いたので、法律上の責務を全うする工場長の姿勢には見習うべきものがあると思った次第である。
1970年に水質汚濁防止法が成立したのだが、1990年代初めというのに、ある県の乳業協会会長を勤めていた社長の工場では、排水処理設備を持たず、排水を適当に希釈して小川のような細い水路に流していた。これでも法律を順守しているのであろうが、このような会社に製造を委託して良いものかと「監査報告書」には記述したこともあった。

排水処理後の清水の放流先は、河川、海域、下水道である。それぞれの規制に合わせた清水にしなくてはならない。排水処理設備は、一次処理として不溶解のごみを除去し、二次処理として溶解している有機物を微生物(活性汚泥)が栄養として取り込み、分解し、その微生物と清水を固液分離させ、三次処理として清水を磨き上げる機能を有する。増殖した微生物に見合う量を系内から除外しなくてはならない。これを怠ると固液分離が出来なくなり、微生物(汚泥)が流出するというトラブルが発生する。

排水処理の微生物を直接的に制御できないため、その環境を維持することが運転管理の要点であり、監視と操作可能な重要項目は、微生物を維持する溶存酸素濃度(DO)と槽内の汚泥濃度(MLSS)であり、前者を0%にしないことと、後者を2000~4000mg/Lに維持することが運転上の要点である。
私は毎年10年近く運転管理を指導していたが、所管する30以上ある工場では、年1回以上はトラブルとなりそうな事故を起こしていた。もちろん、これを防止するために運転管理のの指導というソフト対応ばかりでなく、排水処理設備を改善、増強するというハード対応への努力を怠らなかったのだが、生き物を管理することは非常に難しいことであった。
排水処理設備などとは違って原子力発電所という大規模システムでは、その時代に合わせた安全対策を講じるとしても、容易なことではないことは理解できる。しかしながら、今回の福島第1原発の放射性能物質放出の事故が、非常用発電設備などの付帯設備を改善、増強しておけば防止できたと解釈すれば、安全への危機管理が不足していたと言わざるを得ないだろう。

by ecospec33 | 2011-04-19 15:06 | ●用水・排水、上水・下水問題  

排水処理トラブルと取締役 (技術者、管理畑、原子力安全保安院)

15年ほど前に、関係会社の工場で排水処理のトラブルが発生した。
食品工場で用水処理と排水処理は、製造の入口と出口という形で非常に重要なプロセスである。食品工場はもちろんのこと化学工場でも、排水処理は微生物によって汚濁物質含んだ排水を清水にして放流する。
汚濁濃度が高い排水を嫌気性微生物で処理した後、好気性微生物で処理をする効率の良い処理方法もあるが、どちらも微生物を利用している。好気性の微生物を利用する処理方法を活性汚泥処理法と呼んでいる。
排水処理のトラブルとは、清水と微生物の塊である汚泥が分離できないで、放流水が清水ではなくなることである。キリンビールの横浜工場と言えども、数年前にこの違反で罰せられている。

直属の上司ではないが、全工場を管轄する生産部門の長である取締役の要請で、私はトラブルがあった工場に向かった。
汚濁負荷の増大とエアレーション(曝気)の不足によって、活性汚泥が槽全面に浮上しており、一目して、数時間では簡単に改善できる状況ではないことがわかった。
その取締役は1時間遅れて到着するや否や、関係者に「(生産技術部門の長である)専務の言う通りのことを何故しないのか。言うことが聞けないのか。」と怒声を浴びせた。
出来ない理由と最良の対処方法を述べると、関係会社の会長と社長に対し「君たちは品質事故を起こして、始末書を書いたばかりではないか。君たちは技術者ではないのか。」と訳の分からないことを言い始めた。

関係会社の会長、社長はともに、その直前まで本社の取締役を務めており、怒りを抑えられない生産部門の取締役はその後輩に当たる。立場が変わったとしても、理と情のある言動ではなかった。
会長と社長は黙していたので、私が取締役に対し「技術者とか管理畑とか言う前に、あなたは生産部門の長、技術部門の長でしょう。一方的に責任を押し付ける立場ではないはずだ。」と諭してしまった。
私より4,5歳上の経理部門、経営企画部門など管理畑を歴任した取締役は下を向いて黙ってしまった。その後は応急対策と中期長期の対策を論じていたが、このこじれた会談の最中に、直属の上司である設備部門の長である取締役が来場したのを契機に、その取締役は一言もしゃべらず帰ってしまった。

排水処理は微生物の働きに依存しているため、微生物の良好な環境を維持することが必須であるが、原子力発電の事故ほどではないが、季節、天候の激しい変化などで制御しきれずに、トラブルに至ることもある。
管理畑の人間もその立場になれば、技術の本質を理解し技術部門を統括しなくてはならない。原子力安全保安院は寄り合い所帯の技官の上に、文官が取り仕切っているという。原子力の安全を彼らに託して良いものかと思う。
蛇足ではあるが、当時の生産部門の取締役は一時は期待された人物であったが、関係会社に出ることもなく会社を去った。あの事件から数年ほど経って、関係会社の社長が会社を辞し東北地方の故郷に戻られ、ご自身が仕留めたという鹿の肉を知人を通じて送ってきた。
阿吽の呼吸でしか知ることができない技術の本質と人間の本質は、意外と近いところにあるようだ。

by ecospec33 | 2011-04-17 19:07 | ●用水・排水、上水・下水問題