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カテゴリ:〇日本の電力供給システム( 6 )

 

日本の電力供給システムを考えるⅥ(自家用発電、コージェネレーション、経済的支援策、導入促進法)

5月18日に、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会総合部会 電力システム改革専門委員会」が、家庭向けの電力小売りについても自由化する方針を示した。
電力小売りに新規参入している新電力(特定規模電気事業者、PPS;Power Producer and Supplier)については、その多くが自前の発電所を所有しないなど経営基盤が脆弱なことから、この電力自由化によって、電力小売りの全市場に競争原理が持ち込まれ、料金が低減されるといった淡い期待はしない方が良い。
また、これによって、電力会社の発電事業と送配電事業の分離も加速させるというが、東京電力を発電事業と送配電事業に早急に分割し、後者を売却して原発事故の賠償資金に充てることを最優先すべきと考える。

10.コージェネレーションと自家発電の課題②:
           発電量などの情報不足と強制力のある導入促進策

資源エネルギー庁は自家用発電に関し発電設備容量と発電量をHPに公開している。「電力調査統計」にある自家用発電所認可出力表、自家用発電及びその他電力量実績などである。
前回も記述したが、2010年度から自家用発電に、独立発電事業者(IPP)と公共水力発電、共同火力発電を加わえたことから、それ以前のデータとの整合性が取れていない。
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「コージェネレーション・高度利用センター(コージェネ・センターと略す)」は、自家用発電に含まれているコージェネレーションの導入実績をHPに公表している。
発電設備容量を「累積発電容量」と記しているので、廃止されたコージェネも含まれているかと思い、問い合わせたところ、休止分は含まれているが、廃止分は除外しているとのことであった。また、コージェネによって発電された電力量は把握していないことも確認した。
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昨年2011年夏の電力需給ひっ迫対応のために、ある大手食品会社は数工場に系統連系を施した500kWの自家用発電設備を緊急的に導入した。
昨年夏場に電力需要のピークカットに大活躍した、このような小規模な自家用発電設備は、資源エネルギー庁は1,000kW以上の自家用発電設備しか集計していないこと、また「コージェネ・センター」はモノジェネ(自家発)を取り扱っていないことから、電力需給に関する統計において無視された存在となっている。
前述のとおり、「コージェネ・センター」では発電量という基礎的なデータが欠落しており、コージェネ含めた自家用発電設備の実態を正確に把握していないために、信頼性の高い将来予測が困難となっている。
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コージェネレーションの燃料について、CO2排出の少ない都市ガスの割合が約48%であり、特に産業用分野での割合が約45%に留まっている。このことは、将来の自家用発電、ひいては国内の電力需給のあり方を左右する要点である。
ちなみに、日本ガス協会は2030年度の発電設備容量を、2010年度末の460万kWから、その約6.5倍の3,000万kWに拡大させる計画を打ち出している。これは、年平均約130万kWの伸びであり、原子力発電所を毎年1基増設する規模であり、日本ガス協会にとっては夢の見込みだろうが、過激な見通しと言わざるを得ない。

これを実行に移すためには、産業用のガス・コージェネばかりでなく家庭用の燃料電池などのガス・コージェネについても、再生可能エネルギーと同様に、設備導入時の経済的な支援策と発電時の全量買い取り制度などの経済的支援策、また強制力のある「コージェネ導入促進法」といった法整備が必要となる。

日本の電力供給システムを考えるⅠ(4月17日 http://ecoeng.exblog.jp/17793136/ )
日本の電力供給システムを考えるⅡ(4月19日 http://ecoeng.exblog.jp/17810463/ )
日本の電力供給システムを考えるⅢ(5月10日 http://ecoeng.exblog.jp/17955765/ )
日本の電力供給システムを考えるⅣ(5月13日 http://ecoeng.exblog.jp/17973363/ )
日本の電力供給システムを考えるⅤ(5月15日 http://ecoeng.exblog.jp/17986890/ )

by ecospec33 | 2012-05-21 07:39 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅤ(自家用発電、コージェネレーション、再稼動、設備利用率、自家消費)

東京電力の家庭向けの電力料金値上げ問題、関西電力管内の電力需給ギャップ問題が、ニュースを賑わしている。

福島第一原発事故後に、コージェネレーションは自家用発電設備に含まれ、原子力発電を代替する分散型電源として、またCO2低減を担うエネルギー合理化設備として復権を果たし、大きな期待をされてはいるが、その課題は多い。

9.コージェネレーションと自家発電の課題①:燃料高騰で運転休止、そして再稼働
関係会社の食品工場に、重油を燃料とする屋外設置のガスエンジン・コージェネレーション(500kW×2基)を2001年に導入した。
このコージェネレーションは、メーカーである三菱重工に、低NOx用アンモニア式脱硝装置の組み込みと超低騒音パッケージ化などの仕様をアップさせた設備で、その先進性ゆえに「三菱重工技報」Vol.39 No.3 (2002)に記載された。
この工場は特殊なユーザー向けの食品を製造していたことから、東京電力の停電対策としての役割を持たせて導入したものの、導入時でさえ、設備の投資回収に11年かかるほど経済性は極めて低かったために、その後の燃料費の高騰によって、年間約2000万円の赤字が出ていた。このため、突発的な停電に備え緊急運転が可能なように保全を徹底することを条件に、企画した張本人である私が、2006年末に関係者社長に運転停止を要請した。
2007年度から運転を休止したが、昨年2011年に東京電力管内の電力需給ひっ迫対応で再稼動させ、これに加えて自家用発電設備500kW、1基を増設したという。
蛇足だが、大手食品会社の最大級の関係会社であっても、損益勘定が出来るような人間が不足しているものである。

このように、大手の事業者は自衛手段としてコージェネレーションを再稼動させる事例は多い。
今夏に電力供給不足となる関西電力管内では、『「三菱自動車工業」はこの夏、京都市のエンジン工場で自家発電設備を6年ぶりに稼働させ、ピーク時の電力使用量を10%余り減らすことを計画しているほか、大手空調機器メーカー「ダイキン工業」も、大阪や滋賀の工場で自家発電設備を稼働させることを検討しています。』(5月13日:NHK)という。
三菱自動車工業については、『京都工場は1997年に都市ガスを燃料とするガスタービン・コージェネレーション(6,000kW×2基)を稼働させたが、燃料代の高騰などを受けて2006年に停止させた。この内の1基について、6年ぶりに再稼働させるが、今夏3か月間の稼動で燃料費など約2,000万円の負担が見込まれるという。』(5月10日:ニュースステーション)、また『夏場の出力は5,000キロワット程度になる見込み。再稼働により、滋賀工場と併せ、同社が京都、滋賀の両地区で使う電力量の約10%をまかなうことができる。』(3月19日:日刊工業新聞)という。
関西電力管内の電力需給ギャップの大きさを勘案すれば、三菱自動車工業は1基だけでなく2基とも再稼動させる必要があるだろうが、1基当たりの設備補修費が約6,000万円と推定されるので、2基目の費用負担は出来ないと判断したと思われる。
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昨年2011年7月29日に資源エネルギー庁「自家発設備の活用状況について」で、自家用火力発電設備を保有する事業者に『「余剰あるが売電不可」とした理由』のアンケート調査を公表している。
この中で、「燃料コストが高い」という割合が29%、「休廃止」している割合が6%であった。火力発電設備の設備容量が約3,900万kWであるから、その6%は230万kW、原発2基分に相当する。
図に示すとおり、燃料費の高騰によって、2005年から自家用火力発電設備の設備利用率は低下し、自家消費する電力の割合が低下している。
ただし、2010年については、自家用発電に独立発電事業者(IPP)と、公共水力発電、共同火力発電が加わったことによって、設備利用率は向上したものの、自家消費割合が急激に低下している。

日本の電力供給システムを考えるⅠ(4月17日 http://ecoeng.exblog.jp/17793136/ )
日本の電力供給システムを考えるⅡ(4月19日 http://ecoeng.exblog.jp/17810463/ )
日本の電力供給システムを考えるⅢ(5月10日 http://ecoeng.exblog.jp/17955765/ )
日本の電力供給システムを考えるⅣ(5月13日 http://ecoeng.exblog.jp/17973363/ )

by ecospec33 | 2012-05-15 09:14 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅣ(電源別、発電電力量、原子力発電、割合、稼働率、基本問題委員会)

5月11日に、東京電力が7月から家庭や商店などの電力料金を値上げしたいと経済産業省に申請した。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」も同時期にスタートすることから、この賦課金と料金値上げ分が上乗せとなる。月額7,000円の標準的な家庭で、値上げ分:480円+賦課金:70~100円=合計:550円~580円が増額される。

7.電源別の発電電力量について
前述した4類型の電気事業者と自家用発電設備を有する事業者の発電量を電源別に図示した。
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これらの図から、次のような実態が明らかとなった。
●石炭、石油、LNGを燃料とする火力発電の発電量は2005年以降約7700億kWhで、全体の約66%を占めている。
●揚水発電などの水力発電と再生可能エネルギーの発電量は約950億kWhで、全体の約9%を占めている。
●原子力発電の発電量は1955年以降約3000億kWhで、全体の約25%を占めている。
このように、原子力発電の寄与は火力発電に比べて大きくないのである。

8.原子力発電の発電割合と設備稼働率
原子力発電について、「エネルギー白書2011」などから、その設備容量、全発電量に対する発電割合および設備稼働率を図示した。
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1998年に原子力発電の発電割合が36.8%、設備稼働率が84.3%と最大を示した。
これ以降は、2002年8月に東京電力の原発トラブル隠し発覚、2004年8月に関西電力の美浜原発蒸気噴出事故の発生、2007年7月に新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の被災などにより、電力会社の原発の安全対応への信頼性が揺らいだために、原子力設備稼働率が70%以下に低下したことから、発電割合も30%以下に低下した。

ここで、原子力発電の発電割合に注意していただきたい。本図では2010年度の数値が28.6%となっているが、前図では24.9%となっていることである。これは、分母が異なっているだけのことであるが、その印象は全く異なる。
本図の分母は一般電気事業者(10電力会社)が取り扱った発電量(発受電電力量+α)であり、前図は自家用に供した発電量を含む日本国内で発電された総発電量であることによる。
また、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では、基本となる2010年度の原子力発電の発電率を26%としている。ここでも分母が異なるのである。
本図の分母に「コージェネ・自家発(※1 コージェネには家庭用燃料電池を含む。ここでの自家発には自己消費のみを含み売電分は含まない。)」を加えた発電量(発受電電力量+α+β)である。
●本図        :28.6%(分母:一般電気事業者の発受電電力量+α)
●基本問題委員会:26.0%(分母:一般電気事業者の発受電電力量+α+β)
●前図        :24.9%(分母:自家発電含めた国内総発電量)

基本問題委員会のエネルギー選択肢の注釈として、5月9日(第21回)になって「※4 2010年度の稼働率は67%。仮に稼働率が80%だった場合、電源構成に占める原子力発電の比率は31%と推定。」を加えた。原子力発電の寄与が大きいことを見せかけたいためと思わざるを得ない。そのような小細工は不要なのではないか。

コージェネレーションなど分散型電源である自家用発電の効用を明確にするためには、国内総発電量を分母として設定することが必要である。

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日本の電力供給システムを考えるⅡ(4月19日 http://ecoeng.exblog.jp/17810463/ )
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by ecospec33 | 2012-05-13 09:06 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅢ(電気事業者、自家用発電、コージェネ、事業者別、発電電力量)

今年のゴールデンウィークは甚大な被害をもたらした大竜巻で終わったが、大気が不安定な状態が続いており、同様に政治も経済も不安定だ。
小沢一郎元民主党代表は党員資格停止処分を解除されたが、控訴され被告人のままであり、またヨーロッパの政治の変革が世界経済に暗い影を落としている。
政治はローカルで進展なく、経済はグローバルで変動多しという世情に動かされることのない、自然環境豊かな野川は豪雨で水量が増えて、下流から大きな鯉がのぼり、水辺には自生のアヤメが咲きだした。
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このゴールデンウィーク中に北海道電力の泊原発3号機が停止し、日本国内全ての原発が停止状態となった。数値を入れて、「日本の電力供給システムを考える」第3回目を記述する。

6.事業者別の発電電力量について
電気事業法に規定されている「電気事業者」は、一般電気事業者(10電力会社)、卸電気事業者(電源開発、日本原子力発電)、特定電気事業者(六本木エネルギーサービスなど4社)、新電力(特定規模電気事業者(PPS)、エネットなど50数社)の4類型である。また、この他に、卸供給事業者(独立発電事業者(IPP)、公営水力と共同火力)と自家用発電設備を所有する民間の発電事業者がある。
しかしながら、これら6類型(事業者)別に発電電力量が公表されてはいない。特に2010年度からは「電気事業者」以外は全て「自家用発電」に包含された。また、1,000kW未満の発電設備(発電所)は含まれていないため、家庭の太陽光発電、事業者がピークカット用に設置した小型の発電設備などはカウントされていないので、注意が必要である。
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これらの図から、次のような実態が明らかとなった。
●2005年度以降、日本国内の二次エネルギーとしての発電電力量は増加していない。
●2000年以降、一般電気事業者と卸電気事業者の発電電力量に大幅な増加は見られない。
特定電気事業者の発電量は少なく、増加傾向にない。
新電力(特定規模電気業者)の発電量は少ないが、増加傾向にある。
新電力50数社中8社しか発電設備を所有しておらず、他の発電事業者から電力を購入し、電力を一般需要家に小売りしている実態があり、電力小売りの自由化が行き詰まることは必定である。
自家用発電設備の発電量は着実に増加してきたが、2005年以降は停滞傾向にある。
2010年は卸供給事業者の発電量が加えられたため急激に増加している。
自家用発電設備の発電量のうち、電力事業者に売却する割合が増え、自家消費する割合が年々低下している。自家発電には自家消費が多いコージェネレーションが含まれているが、燃料費の高騰によってコージェネレーションを停止させている設備が多いためと思われる。これについては次々回以降に詳述する予定である。
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次回第4回は、「7.電源種別の発電電力量」について記述する。

by ecospec33 | 2012-05-10 12:13 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅡ(自家用発電設備、分散型電源、余剰電力、逆潮流)

4月17日にワシントンで石原都知事が尖閣諸島購入計画を突然発表した。
2010年9月に発生した尖閣諸島中国漁船衝突事件における当時の仙石官房長官の愚鈍な対応は忘れることが出来ないが、これはある意味で痛快な発表であった。「自衛隊を暴力装置」と発言し、政治家としての感性に乏しいとしか思えない仙石政策調査会長代行が何故か大飯原発再稼働の閣僚協議に加わり、原発再稼働を画策し原発擁護を訴えることに対し、民主党政権の危うさを感じる国民も多いのではないだろうか。

尖閣諸島中国漁船衝突事件の前後に、上海に駐在している義兄と義母の容態についてメールで何度もやり取りしていたところ、私からの「尖閣諸島」の言葉を入れたメールだけが彼に届かなったことがあった。中国はそのような国家であると認識しておかなくてはならない。

日本の電力供給システムを再整理すると下図とおりである。
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4.自家用発電設備を保有する発電事業者
この自家発電設備は、電力会社などの大規模集中型発電に対して分散型電源に相当する。
ソフトバンクのオーナーである孫正義氏は福島第一原発事故直後に、大規模太陽光発電所(メガソーラー)などの再生可能(自然)エネルギーを普及するために、「自然エネルギー財団」を創設した。このメガソーラーで発生した電力を電力会社や新電力会社などに販売する事業者は太陽光発電事業者であり、同様に風力発電事業者地熱発電事業者と呼ばれる。

震災直後に東京電力と東北電力管内では電力供給不足が叫ばれため、緊急的に自家発電設備を設置して電力需給調整をおこなう事業所が多かった。ある大手食品会社は中古の500kW級のディーゼル・エンジン発電機を10台あまり購入し、関連する生産工場に設置することにしたが、設置する工事業者の手が足りず、肝心の夏場を過ぎてしまった工場もあったという。

発電するだけのモノジェネ緊急用のならば短期間で設置できるが、排気熱も利用するコージェネレーションとなると、発電以外の温水や蒸気の取出しに関わる付帯工事も多くなり容易ではない。
大震災直後の5月に政府は、「自家発電設備導入促進事業」として総額100億円の補助金を用意し、東京電力と東北電力管内の事業者に自家発電設備の早期導入を図ったが、稼働すべき夏場には間に合わなかったものと思われる。また、11月には平成23年度第3次補正でも総額299.9億円の補助金が用意され、全国でトヨタ自動車、日本製紙、アサヒビールなど名だたる大手企業が応募しているが、大型物件ゆえに本年2012年の夏場にも到底間に合うはずもないだろう。
この補助金合計約400億円が全て消化されたとすれば、自家発電設備の投資額を0.2百万円/kW(2000年前後の相場の2倍、東北電力東通原発は約0.4百万/kW)と仮定して、
40,000百万円÷0.2百万円/kW÷1/3(補助率)=600,000kW と算定される。
これは、原発0.6基分に相当する規模の自家用発電設備が新設されたことになる。
ここで、応募したトヨタ自動車の5工場だけで合計約70,000kWの規模という。

1994年代から食品会社で多くのコージェネレーションを工場に導入したが、発電電力が自家消費電力より多い場合に、連系している商用電力系統(電力会社)に余剰電力を流す、いわゆる逆潮流することは許されなかった。しかしながら、新電力のエネットへ電力を売却するという逆潮流を前提にして、2006年に6,000kW級×2基を設置した。1基分相当の電力量を逆潮流したが、規模の大きく安定した自家発電設備でないと電力会社は逆潮流を嫌うのである。
東京電力は昨年2011年夏の電力需給ひっ迫に対し、IHI瑞穂工場の自家発電設備の稼働を要請し、その余剰電力を購入したという。このガスタービン発電設備の能力は41,000kWであり、自工場内で使用する7,400kWの残りの33,600kWを売却に当てた。
また、関西電力は本年2012年1~3月の3か月間に、アサヒビール西宮工場の自家発電設備の余剰電力を購入したという。このガスタービン・コージェネレーションの発電能力は6,500キロワットであり、工場内で約7割を消費した残りの約3割分を売却に当てた。

このように、再生可能エネルギーを用いた自家用発電設備、また工場のコージェネレーション含めた自家発電設備から発生する電力が原子力発電を代替する電力として、その重要性を高めている。
ちなみに、現在の自家発電設備の発電能力(設備容量)は原子力発電所約55基分に相当する。

by ecospec33 | 2012-04-19 16:42 | 〇日本の電力供給システム  

日本の電力供給システムを考えるⅠ(原発再稼働、電力自由化、発送電分離、IPP、PPS、新電力)

4月15日に、枝野経済産業大臣は徳島市の講演で、「全国で運転する原発が、恐らく一瞬、来月6日からゼロになる」と述べ、北海道電力泊原子力発電所3号機が運転を停止するまでに、関西電力大飯原子力発電所の運転を再開するのは難しいという認識を示したそうである。
昨日16日には、民主党の仙谷政策調査会長代行が名古屋市の講演で、「電力なしには生活できないことになっていることは、昨年の東京電力の計画停電騒ぎで極めて明らかであります。(定期点検で)止めた原子力発電所を一切動かさないということをせよという話であるとするならば、日本がある意味で集団自殺をするようなものになってしますのではないか。」と述べ、大飯原発ばかりでなく全ての原発再開の必要性を強調したそうである。
一方、朝日新聞の世論調査によれば、国民の大半以上が電力会社と政府が作った電力受給逼迫と見ており、原発再稼働への安全基準を信頼しておらず、再稼働に反対しているという。

野田政権の中枢にいる政治家個々人のご意見がどうであれ、政治の停滞が国の停滞を助長させている。このような政治とは別に、日本の電力供給システムを見直すことが必要である。
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1.電力供給システム概要と電力自由化
日本の電気事業制度は、1995年から発電部門においては、卸供給事業者として独立発電事業者(IPP:Independent Power Producer)を認めることによって競争原理を導入するとともに、2000年から小売(配電)部門においては、新電力(特定規模電気事業者、PPS:Power Product & Supplier)を新規参入させ、特別高圧から高圧需要家へと小売り自由化の範囲を順次拡大してきた。しかしながら、送電部門については、公平性と中立性を確保した上で、一般電気事業者(東京電力などの電力10社)が地域独占している。
この地域独占のために競争原理が機能しないなどの理由から、送電部門についても自由化を図るという電力会社の発送電分離が問われており、また、この分離を行うことによって、福島第一原発事故の賠償を東京電力が送電部門の売却で賄うという考えを打ち出すことが出来る。
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2.卸供給事業者(独立発電事業者:IPPなど)
神戸市の麻耶埠頭に立地する食品工場では、場内の空調用フィルターの目詰まりが予想外に早かった。目詰まりは微細な黒色の粉によるものであり、直線距離で約1.3km離れた神戸製鋼所の石炭火力発電所から飛散する石炭の微粉末であると推定できた。
この神鋼神戸発電所は2002年4月に1号機、2004年4月に2号機を運転開始し、神戸製鋼所は合計発電量140万kWを有する国内最大の独立発電事業者(IPP)となった。
当時、IPPが実施する石炭火力発電所によってCO2排出が増大することが懸念されたことも事実である。
1995年の電気事業法改正により、2010年3月末までに「みなし卸電気事業者」であった北海道などの公営水力と鹿島共同火力発電所などの共同火力のほとんどが卸供給事業者となり、また一部は自家発電用設備の保有事業者となり、一部は電力会社に売却された。

3.新電力会社(特定電気事業者、PPS)
NTTファシリティー、東京ガス、大阪ガスが設立したエネットは国内最大の新電力会社(特定規模電気事業者)である。2006年前後であったと思うが、本社が入る事務所ビルの電力料金を削減するためにエネットと交渉した。上司である取締役は変化を好まないことから異を唱えたが、経営トップは非常に柔軟であった。この東京電力からエネットへの契約変更によって、年間数百万円の料金値下げが出来たと記憶している。その後もダイヤモンド・パワーなどの新電力会社と工場の電力について交渉したが、相手にされなかった。それは、事務所ビルと違って工場の電力料金単価が低く設定されているためである。

東京電力が大口需要家向け電気料金を本年4月1日から平均17%値上げすると表明したことによって、いちやく新電力会社に注目が集まり、官民挙げて競って交渉を試みたが、期待通りの結果とはならなかったようである。これは、新電力会社は販売する電力の調達が難しく、また採算の見通しが立ちにくくなっているためである。新電力会社として現在53社が経済産業省に登録されてはいるが、実際に事業を行っているのは約半数の26社であるという。

電力自由化は絵空事に近いのである。次回から定量的に確認していきたい。

by ecospec33 | 2012-04-17 10:10 | 〇日本の電力供給システム