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カテゴリ:〇利根川水系の水質汚濁( 7 )

 

利根川水系の水質汚濁事件の終結(埼玉県、群馬県、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)

6月7日に、埼玉県は「浄水場におけるホルムアルデヒド検出事案の原因調査結果について」を、群馬県は「利根川水系の浄水場におけるホルムアルデヒド検出事案の調査結果について」を公表し、5月19日から20日にかけて千葉県で最大計35万世帯余りが断水した、大規模な水質汚濁事件の第1ステップの終結を宣言した。

同日、埼玉県はヘキサメチレンテトラミンを含んだアルカリ廃液を排出したDOWAハイテックに対し、「ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の適正処理について」を提示し、再発防止の行政指導をおこなった。また、群馬県と高崎市も、この廃液を中和処理して利根川に流出した高崎金属工業に対し行政指導を行う予定という。

両社ともに、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)と水質汚濁防止法の違反は認められず、行政指導にとどまる結果であった。
埼玉県と群馬県が公表した調査結果については、これまで私が工学的に検証した推定と相違点があり、疑問が残るが、事業者への法的な責任を問うことが出来ないため、行政指導が妥当であると思っている。

1980年代初めに、大手乳業会社の福岡県の子会社工場が水質汚濁防止法違反で、子会社と製造課長が数万円の罰金を科せられた事件があった。このときは、市民からの白濁した水が流れているとの通報を受けて警察が内偵し、現行犯として罰則であった。
また、2005年に、キリンビール横浜工場が水質汚濁防止法違反で、企業とキリンエンジニアリングの担当者が罰則を受けた事案も、横浜海上保安部が海上監視作業中に異変を確認した現行犯としての罰則であった。
今回のように推定だけでは、水質汚濁法違反を問うことは難しいのである。

6月6日に、周辺自治体などの水道事業者43団体でつくる「利根川・荒川水系水道事業者連絡協議会」が厚生労働省と環境省に対して、「ホルムアルデヒド検出に関する緊急要望書」を提出した。
『ホルムアルデヒドの生成能としての環境基準化及び排水基準化』と『産業廃棄物排出企業への、指導及び監視の仕組みの強化』の要望である。ホルムアルデヒド生成能については、5月29日に「利根川水系の水質汚濁の検証Ⅲ」で、私が記述したとおりである。

ともあれ、大規模な水質汚濁事件の第1ステップの終結であり、再発防止への第2ステップの始まりである。

by ecospec33 | 2012-06-08 19:12 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅵ(千葉県の断水、DOWA、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)

約2週間近くの間、利根川水系の水質汚濁について、出来る限り事実に即して工学的に検証を続けてきた。
この間に、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が3回開催され、2030年のエネルギーミックスの選択肢が決まり、大飯原発再稼動に向けた動きが強まった。
このエネルギーの話題に戻るために、今回を検証の最後とする。

⑮ DOWAハイテックの主張の問題点
5月29日にDOWAハイテックが埼玉県に報告書を提出した。
その時のDOWAハイテックの正当性の主張とその問題点を交互に示す。
●全窒素などを明示した分析結果、廃液のサンプルを処理業者に提供した。
○廃棄物処理業者への情報提供は、廃棄物運搬業者2件を介した間接的なものであった。
●ヘキサメチレンテトラミンが全窒素を構成する窒素化合物のため、全窒素を排水基準値以下に処理すればヘキサメチレンテトラミンなどの濃度も低減される。
○有毒なホルムアルデヒドを生成する危険性があるヘキサメチレンテトラミンが含有している廃液であることの告知をしていない。
○廃棄物処理業者の水質汚濁防止法違反を主張しているが、事前に廃棄物処理業者の現地確認し、廃液処理能力を確認することで、未然に防止できたと推定できる。
●群馬県高崎市の廃棄物処理業者で現地確認を行った。
○5月17日は委託契約前ではなく、事後の現地確認である。
○事前に現地確認を確認していれば、廃液を処理する能力が不足していることを認識できたと推定できる。
○当日は廃液が未処理のまま流出しているにもかかわらず、危険性の確認を怠っている。
●廃棄物処理業者から「問題なく処理されている」との説明を受けた。
○5月17日の現地確認当日の話である。自ら処理現場を確認しているのであるから、何ら根拠がない主張である。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅵ(千葉県の断水、DOWA、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)_e0223735_16123837.jpg
DOWAハイテックの主張の問題点を再整理する。
●ポイント1:
DOWAハイテックが高崎金属工業の廃液処理現場を確認したのが5月17日である。
検証したとおり、当日はヘキサメチレンテトラミンを大量に流出させていたのであり、DOWAハイテックが9年前の事件を認識していたのであれば、その場でヘキサメチレンテトラミンの危険性を問いただし、流出を止めることが出来たと思われる。
●ポイント2:
DOWAハイテックは排水処理設備を有している。
昨年2011年に、『植物を利用した独自の排水浄化施設「ビオパレット」の導入で放流河川の保全』というテーマで、埼玉県の「第12回さいたま環境賞」を受けている。
この受賞内容から排水処理に関する知見は少なくないと考えられる。
●ポイント3:
2011年6月にDOWAハイテックが埼玉県に提出した「産業廃棄物処理計画書」から、
ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液はアルカリ廃液と認識でき、そのアルカリ廃液は年間5000トン排出され、その処理方法は焼却と記している。、しかしながら、今回の事案は、廃液を焼却処理から廃液を排水処理に変更したことにより発生した。

これらの結論は、『DOWAハイテックは9年前の事件以降、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液を排水処理では処理できず、焼却処理しかないことを認識していた。しかしながら、廃棄物運搬業者の紹介で熟慮せずに処理方法を排水処理に変更したことによって、千葉県民35万人の断水問題を発生させた。』である。

廃棄物運搬業者が安価な廃棄物処理業者を紹介する話は少なくない。この紹介の他に廃棄物処理の状況を逐一監視する業務を加えて業としている企業もある。廃棄物を排出する企業と委託される処理業者の双方から利益を得る仕組みである。
ここで注意すべきことは、その紹介業者には廃棄物処理法の違反は課せられず、違反があった場合は自らが負うことを認識して付き合う必要がある

by ecospec33 | 2012-06-01 16:18 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅴ(DOWA、高崎金属工業、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)

⑬ 高崎金属工業の廃液(排水)処理設備
埼玉県本庄市のDOWAハイテックがヘキサメチレンテトラミンを含んだ廃液の処理を委託した群馬県高崎市の高崎金属工業の排水処理設備の映像が、FNNニュースなどに記録されている。また、Googleマップから、その全容をつかむことが可能である。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅴ(DOWA、高崎金属工業、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)_e0223735_858436.jpg
処理工程順に、概要は次のとおり推定できる。
●中和調整槽:15m×5m×3m=225m3
●凝集沈殿槽:φ7.5m
○無機物除去の清澄水放流
●接触酸化槽(生物処理):5m×5m×4m=100m3
●凝集沈殿槽:φ11.5m
○有機物除去の清澄水放流
中和調整槽(225m3)+凝集沈殿槽(φ7.5m)で溶解している無機物(金属類)などを分離除去し、接触酸化槽(生物処理)(100m3)+凝集沈殿槽(φ11.5m槽)で化学物質などの有機物を分解除去する処理工程と推定される。
アルミ鋳物などの高崎金属工業団地内の南側にある高崎金属工業は、工業団地から排出される無機物廃液を処理する機能が主体と考えるのが妥当である。

掲げられている産業廃棄物中間処理施設としての許可内容は、次の通りである。
●産業廃棄物の種類:廃酸・腐食性、廃アルカリ・腐食性
●処理方法・能力:中和・廃酸20m3/日、廃アルカリ20m3/日

廃棄物処理業として許可されている中和処理が処理の主体であって、微生物による酸化分解処理は、接触酸化槽の推定容積から勘案して、DOWAハイテックの廃液を処理するには十分な機能はなかったと考える。
これを次章で検証する。

⑭ DOWAハイテックの廃液のBOD負荷量と高崎金属工業の廃液処理能力
排水、廃液などに含まれる有機、無機の汚濁物量が処理施設に対する負荷量、汚濁負荷量である。
化学物質など微生物によって分解される有機物量を、BOD(生物化学的酸素要求量、Biochemical Oxygen Demand)負荷量として表す。
次の反応式から、ヘキサメチレンテトラミン140gが分解するために要する酸素量は、288gである。
C6H12N4+9O2→6CO2+6H2O+2N2
DOWAハイテックは廃液60トンを、5月10日から1日1回10トン、計6回、高崎金属工業にJFEグループの産業廃棄物収集運搬業者に依頼し移送したという。この廃液には、ヘキサメチレンテトラミンが37%含まれていたことから、この化学物質を分解するために必要な酸素量、BOD負荷量は、次のとおり、7,600kg/日と算定される。
10トン/日×0.37÷140g×288g×1,000kg/トン≒7,600kg/日
ここで、接触酸化槽、活性汚泥槽などの曝気(エアレーション)処理する容積に対する廃液(排水)のBOD負荷量がBOD容積負荷量であり、処理設備の設計に重要な指標である。
それぞれの処理設備メーカーはBOD容積負荷量の経験値を有しており、それを使用して処理設備を設計しているが、一般論として、0.3~1.0kgBOD/(m3・日)としてよい。
高崎金属工業のヘキサメチレンテトラミン廃液のBOD容積負荷量は、接触酸化槽の推定容積が100m3であることから、次のとおり、76kgBOD/(m3・日)と算定される。
7,600kg/日÷100m3=76kg/(m3・日)
これは異常に高い数値である。安定的な処理は不可能であり、ヘキサメチレンテトラミン廃液が微生物によって酸化分解されないまま、流出したことを示している。

次回は、DOWAハイテックの様々な対応について、工学的に検証する。

by ecospec33 | 2012-06-01 09:07 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅳ(DOWA、埼玉県、群馬県、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)

2004年前後の夏前に、栃木県の環境保全担当部門から突然に電話が入った。
本社の商品担当部署と宇都宮市の県庁に出向くと、「また、あなたでしたか?」と嫌みを言われ、商品が不法投棄されている写真をみせられた。その2年ほど前にも、ある工場が廃棄物処理で問題を起こし、付き添い役として出向いたことがあったためである。

1週間後に、その商品の製造委託先、冷蔵保管委託先、廃棄物処理業者など数名を伴って、産業廃棄物処理委託契約書産業廃棄物管理票(マニフェスト)に加えて、新たに作成した製造から販売までの流れ図、廃棄物量を入れた廃棄物処理の流れ図などを携えて、再度出向いた。
担当官2、3名、警察官2名だったと記憶するが、どこで、どのように廃棄処理し、産業廃棄物処理委託契約書と産業廃棄物管理票(マニフェスト)に不備がないことを説明したところ、「だれが商品全体の流れを把握しているのか。だから、不法投棄につながるのではないか。栃木県はごみ捨て場ではない。」と凄まれた。
しかしながら、話をする中で埼玉県の廃棄物処理業者が廃棄物を横流ししたことを白状したことから、当方としては始末書と改善書を提出することで決着した。
ただし、上司の役員らが押印を拒んだために、両書類とも環境保全担当部署の部署長名にせざるを得なかった。

その後の社内の取り組みについては別途紹介するとして、食品を扱っているため、その廃棄物が有害物に変化することはないが、似たような廃棄物処理の構図が、DOWAハイテックにも見られるようである。

⑫ DOWAハイテックの報告内容とDOWAホールディングズの動き
5月29日に、DOWAホールディングズは「子会社「DOWAハイテック(株)」に対する報道について (第2報)」を発表した。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅳ(DOWA、埼玉県、群馬県、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン)_e0223735_1829647.jpg

5月25日の埼玉県の報告徴収命令を受けて、29日にDOWA ハイテックが外部処理を委託した廃棄物に関わる契約書、マニフェストなどの資料を提出し、この資料で、『処理会社側へ廃液分析値および廃液の実サンプルを提示し、処理会社から「処理が出来る」旨の回答を得た上で契約締結などの手続きを踏み、適切に外部委託したことを報告しています。』と弁明している。
最後に、『今回の外部処理委託にあたって適切な手続きを踏んでいたものと認識しているところであり、今後も関係行政機関の調査に協力してまいります。』とあるが、社会に対する謝罪は一切見られない

5月30日の毎日新聞地方版には、29日の報告徴収時の様子を記している。
『D社(DOWA ハイテック)は、全窒素などを明示した分析結果、廃液のサンプルを処理業者に提供したと説明。HMT(ヘキサメチレンテトラミン)が全窒素を構成する窒素化合物のため、全窒素を排水基準値以下に処理すればHMTなどの濃度も低減されるとした。(5月)17日には群馬県高崎市の処理業者で現地確認も行ったとし、処理業者から「問題なく処理されている」との説明を受けたとしている。だが(埼玉)県は、17日の現地確認以外は運搬業者2件を介した情報のやり取りだったとし、「必要な情報を運搬業者2件任せにしている」(葛西聡・産業廃棄物指導課長)と指摘。運搬業者2件にも詳しい報告を求めるとともに、処理業者については群馬県と高崎市と連携して対応し、告知義務違反に当たるかどうか全容解明を進める方針だ。』

この記事から、DOWAハイテックは契約締結前ではなく、ヘキサメチレンテトラミンを大量に含んだ廃液が流出している最中に、廃棄物処理業者である高崎金属工業の排水処理設備を確認していたことが判明した。まことに悠長な他人事のような話である。
また、『処理会社の工程が全窒素およびホルムアルデヒドを処理可能な酸化分解および生物処理を含んでおり、HMT等の窒素化合物も処理可能である』というDOWAホールディングズの発表内容から、排水処理設備の工程も垣間見ることができる。
次回は、この設備について、工学的な検討を加える。

なお、5月28日に、埼玉県はJFEグループの産業廃棄物収集運搬業者に対して報告の徴収命令を出し、また5月29日に、群馬県高崎市は産業廃棄物処理会社2社から、DOWAハイテックとの委託契約書や産業廃棄物管理票などを受けたそうである。

by ecospec33 | 2012-05-31 16:41 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅲ(千葉県、取水停止、総ホルムアルデヒド生成能、ガバナンス)

参考:⑤ ホルムアルデヒド検出の経時的変化
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅲ(千葉県、取水停止、総ホルムアルデヒド生成能、ガバナンス)_e0223735_17245022.jpg

⑨ ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の流出日時の推定
高崎市の廃棄物処理業者から廃液が排出され、烏川から利根川、江戸川の浄水場(取水口)まで下っていった。この排出源から浄水場の取水口までの距離とホルムアルデヒドが0.1mg/L検出された時点の時間との関係を図に示す。
水道水の原水(河川水)を処理した浄水については、処理されるまでに約7時間かかることから、7時間前の原水に換算して点線で表示した。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅲ(千葉県、取水停止、総ホルムアルデヒド生成能、ガバナンス)_e0223735_17255118.jpg
これによって、17日以前については情報がないために不明であるが、排出源である廃棄物処理業者が廃液の多くを烏川に流出させたのは、5月17日であったことが推定された。

⑩ 総ホルムアルデヒド生成能として排出規制
1992年12月に、クロロホルム(CHCl3)、ブロモジクロロメタン(CHBrCl2)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、ブロモホルム(CHBr3)の有害な4種の有機塩素化合物と、それらを合計した総トリハロメタン生成能(THMFP:Trihalomethane Formation Potential)がトリハロメタン前駆物質量の指標として、水道水の水質基準に加わった。
浄水過程において、原水の有機物と消毒用塩素が反応して有機塩素化合物を生成する。この有機塩素化合物を生成する潜在的能力が総トリハロメタン生成能である。
この年の年末年始にかけて、関係する約30の工場の水質を慌ただしく検査し、支障がないことを確認したことを記憶している。
1993年5月に「公共用水域の水質汚濁に係る環境基準」が改正され、健康項目に有機塩素化合物が追加され、また、1994年5月に「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法」が施行され、地域によって一定規模以上の事業場からの排出水中のトリハロメタン生成能の排出規制が行われることとなった。
このトリハロメタン生成能と同様に、ヘキサメチレンテトラミンなどの多種なアミン類について、ホルムアルデヒドを生成する前駆物質について、総ホルムアルデヒド生成能(FADHFP:Formaldehyde Formation Potential)として排出規制が可能である。
再発防止のために、早急な法制化が必要である。

⑪ 廃棄物管理の基本
1994年に経済産業省は、廃棄物問題への企業経営の取組みについて、「廃棄物・リサイクルガバナンス」という新たな概念を持ち込み、排出者である事業者に対し、ガバナンスの構築を明確にした。
「DOWAハイテック」では9年前にも同様な事件を起こしたおり、このガバナンスが有効に働いていなかったために、事件を再発させたものと推測される。
廃棄物処理業者の高崎金属工業は今回が初めての委託であったという。
9年も経過すれば、廃棄物や排水などの管理担当部門の人員は一新されており、過去の経緯を熟知する人物は少ないだろう。子会社の経営者は事業の失敗を隠す傾向にあるため、なおさらである。
実務に精通していない、技術系でない管理系の廃棄物管理担当者が、経済性から安易な気持ちで廃棄物処理業者を選択したのだろう。150トンの廃液のうち、90トンについては高崎市内の廃棄物処理業者が適正に焼却処理したそうであるから、この不適切な水処理による廃液処理費用が安価であったことは間違いない。
廃棄物処理業者から処理方法と能力など様々な情報を収集することも、排出者の責務である。
私の経験から、マニフェスト管理を処理業者に任せきりの工場も少なくない。委託を開始するのなら処理する現地の確認が欠かせないし、その後も年1回以上の確認は欠かしてはならないことである。
それでもリスクは皆無とは言えないのである。
生産工程から排出される廃棄物、排水などの管理の適否は、事業者の組織と個人の資質に帰結する。

by ecospec33 | 2012-05-29 17:33 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅱ(千葉県、取水停止、ホルムアルデヒド、へキサメチレンテトラミン)

⑤ ホルムアルデヒド検出の経時的変化
埼玉県、茨城県、千葉県で公開されている浄水場の水道の原水と浄水などの数値を基に作成した。
埼玉県春日部市の庄和浄水場の16日午後の月一回の定期検査で、処理後の浄水からホルムアルデヒドが検出されたのが事の発端であり、その値が0.045mg/Lであった。
また、厚生労働省が北千葉浄水場で19日に採取された水道原水から検出したヘキサメチレンテトラミンをホルムアルデヒドに換算して記入した。
庄和浄水場において江戸川の河川水(原水)を取水してから水道水として浄化処理されるまでに約7時間かかる(庄和浄水場に確認済み)ことから、原水の推定線を図上に記入した。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅱ(千葉県、取水停止、ホルムアルデヒド、へキサメチレンテトラミン)_e0223735_17174094.jpg
これより次のとおり結論づけることができる。
●ホルムアルデヒド濃度はピークを有しており、排出源からインパルス(瞬間)的に利根川に流出したと推定される。
●そのピーク(最大値)は約0.33mg/Lまで上昇したと推定される。
●利根川上流側から行田浄水場、庄和浄水場、北千葉浄水場の順に、濃度の山が移動している。
●栗山浄水場が取水している江戸川の河川水(原水)は北千葉導水路(利根川から江戸川への導水路)によって、また北総浄水場が取水している利根川の河川水(原水)は鬼怒川と小貝川によって希釈されている。
●利根川の刀水橋の測定値は右岸が高い数値を示している。このことは、排出源の烏川が利根川の右岸側から合流しており、化学物質が河川の幅全体に分散していないことを示しており、利根川右岸の行田浄水場と右に分流する江戸川の各浄水場に被害が多かったことが推定された。

⑥ ホルムアルデヒド総量の推定
行田浄水場と庄和浄水場における原水のホルムアルデヒド総量は、破線部分の検出値を経時的に積分し、これに利根川の水量を積算することによって推定できる。
利根川の平均水量は利根大堰手前で367m3/秒(17日)~452m3/秒(21日)であることから約400m3/秒とし、化学物質は河川全体に均一に広がっていると想定した。
(0.1mg/L×5日相当分)×400m3/秒×360秒/時×24時/日≒17トン
これによって、生成されたホルムアルデヒド総量を約17トンと推定した。
ただし、廃棄物処理業者が5月10日にヘキサメチレンテトラミンを含む廃液を受け入れたそうであるが、10日から17日までの水質が不明であるため、これ以上が流出した可能性がある。
ここで、栗山浄水場の原水は、北千葉導水路(利根川から江戸川への導水路)によって希釈されたため、また北総浄水場の原水は、利根川に鬼怒川と小貝川が合流しているために、本推定に入れなかった。

⑦ ヘキサメチレンテトラミン流入量の推定
ヘキサメチレンテトラミンは化加水分解して、有害物質のホルムアルデヒドとアンモニアが生成する。
反応式は次のとおりであり、140gのヘキサメチレンテトラミンからホルムアルデヒドが180g生成する。
C6H12N4+4HCl+6H2O→6CH2O+4NH4Cl
17トン×140÷180≒13トン
これによって、へキサメチレンテトラミンが烏川から利根川に流入量した総量を約13トンと推定した。
5月24日に厚生労働省は流入量を0.6~4トンと公表しているが、推定の手法に誤りがあると思われる。
DOWAテックはヘキサメチレンテトラミン約37%含む廃液約60トンを、高崎市内の産業廃棄物業者である高崎金属工業に委託していたことから、へキサメチレンテトラミンの総量は約22トンと推定される。
廃棄物処理業者の排水処理では廃液処理が不十分であったという報道があり、また処理業者の許可内容から中和処理と凝集沈殿と考えられることから、へキサメチレンテトラミンを無害化することは全く出来なかったと思われる。このため、ホルムアルデヒドが検出された17日から19日の間に、へキサメチレンテトラミン廃液の約60%が利根川から江戸川を流下したと推定される。

⑧ ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の流出流量の推定
⑤で、ホルムアルデヒドの検出ピーク(最大値)は、約0.33mg/Lであったことが、推定されている。これを反応式から、ヘキサメチレンテトラミンに換算すると約0.26mg/Lとなる。
廃液は希釈されながら利根川を流下するので、利根川の流量から廃液の流出流量を推定できる。
これによって、
400m3/秒:X=370,000mg/L: 0.26mg/L
X=400m3/秒×60秒/分×60分/時×0.26mg/L÷370,000mg/L≒1.0m3/時=24.3m3/日
と推定される。
群馬県が廃棄物処理業者である高崎金属工業の許可内容をHPで公表している。廃酸、廃アルカリ、廃酸・腐食性、廃アルカリ・腐食性の廃液4種類を処理する能力が20m3/日と記されている。
ただし、この処理能力が廃液それぞれであるか、廃液の合計であるかは明確ではないが、推定された流出流量と齟齬はないと言えるだろう。

by ecospec33 | 2012-05-29 17:22 | 〇利根川水系の水質汚濁  

利根川水系の水質汚濁の検証Ⅰ(千葉県、埼玉県、取水停止、ホルムアルデヒド、へキサメチレンテトラミン)

千葉県の利根川水系(江戸川)の浄水場3か所で水質基準を超えるホルムアルデヒド(Formaldehyde)が検出され、長時間取水を停止したため、5月19日から20日にかけて、野田市・柏市・我孫子市・八千代市・流山市で最大計35万世帯余りが断水する事態となった。5月21日に環境省と厚生労働省が動き出していたが、当時、森田健作知事は国に原因究明を要請した。

5月24日に、厚生労働省がその原因物質を化学物質のヘキサメチレンテトラミン(HMTA:Hexamethylenetetramine、Hexamine)であると特定したと公表した。
千葉県流山市にある北千葉浄水場で19日午前5時~午後6時半にかけて採取した水道原水9検体すべてで、0.041~0.2mg/Lのヘキサメチレンテトラミンを検出し、その流入量を0.6~4トンと推定した。

埼玉県の情報提供に対する群馬県の危機管理の甘さと初動の遅れが排出源の特定を困難にしていたが、5月25日に埼玉県が突き止めた。
5月10日に、埼玉県本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」が、ヘキサメチレンテトラミン37%を含む約60トンの廃液処理を群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者である「高崎金属工業」に委託し、この業者が事情を知らずに利根川の支流の烏川に流出したという。
NHKによれば、9年前にも、「DOWAハイテック」は利根川水系にヘキサメチレンテトラミンを流出させる事件を起こしているそうである。
この企業は廃棄物から貴金属などを回収するなど、循環社会を牽引する「DOWAホールディングズ」の子会社であるが、廃棄物処理法の排出者責任違反の疑いが濃厚になり、また水質汚濁防止法に対する道義的責任と大きな社会問題を引き起こした社会的責任が問われることになった

浄水場で塩素殺菌によって有害なホルムアルデヒドを生成するアミン類は水質汚濁防止法の規制外であることから、23日に埼玉県の上田清司知事が国に対し規制を要求し、25日に細野環境大臣は再発防止に向けた制度面の対応を急ぐ考えを示している。
法規制への動きだけでは、この大規模な水質汚濁事件が落着したとは言えないので、これまでの情報を整理し、工学的に分析し、問題点を検証する必要があるだろう。

① 利根川水系と浄水場
下図は利根川水系の流域図であり、利根川と江戸川から取水している浄水場と排出源を記した。
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅰ(千葉県、埼玉県、取水停止、ホルムアルデヒド、へキサメチレンテトラミン)_e0223735_15493852.jpg
②浄水場の取水制限・停止期間
利根川水系の水質汚濁の検証Ⅰ(千葉県、埼玉県、取水停止、ホルムアルデヒド、へキサメチレンテトラミン)_e0223735_1552156.jpg
③ 高度処理(オゾン酸化と生物活性炭)施設を有する浄水場の優位点
高度処理施設を有する新三郷、金町、ちば野菊の里の3つの浄水場では、ホルムアルデヒドが水質基準を超えることはなかった。
これによって、化学物質などの有機物をオゾンで酸化分解し、生物活性炭で吸着する処理する高度処理方式の有効性、有利性が再認識された。

④ 国土交通省関東整備局による被害拡大防止
18日から、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都の要請に基づき、関東整備局は利根川水系の浄水場の取水障害を取り除く対策として、水質汚濁物質の希釈と拡散を図るために、北千葉導水路(利根川から江戸川への導水路)、渡良瀬貯水池からの緊急放流、武蔵水路(利根川から荒川への導水路)の導水停止、藤原ダムからの放流量の増大などを実施した。
24日までに、これら一連の対策は順次解除された。

by ecospec33 | 2012-05-29 15:55 | 〇利根川水系の水質汚濁