人気ブログランキング |

カテゴリ:●地球温暖化問題( 3 )

 

ピンチテクノロジーと省エネ、省水対策(熱ピンチ、水ピンチ、カスケード利用)

ピンチテクノロジー(Pinch Technology)は1970年代に英国のリンホフ博士(Linnhoff)が開発した省エネ手法である。
省エネルギーセンターの用語集では、「ピンチテクノロジー」を『プロセスシステムでは、冷却を要する流体と、加熱を要する流体が混在している。プロセス流体を与熱側と受熱側に分類して、複数の与熱流体に対して、同じ温度区分の熱量を統合すると「与熱複合線」が得られる。同様に複数の受熱流体からなる「受熱複合線」が得られる。これらを重ね合わせて「熱複合線図」を作成することが出来る。与・受熱複合線を、熱量軸に沿ってずらすことによって、プロセス流体間の理論的な最大熱交換量を推算することが出来る。又、与熱複合線と受熱複合線が接する点を「ピンチポイント」と言う。』と説明している。
この用語説明だけでは理解が難しいだろうから、「ピンチテクノロジー」(巽浩之・松田一夫(千代田化工)共著)を参考としていただきたい。
ピンチテクノロジーと省エネ、省水対策(熱ピンチ、水ピンチ、カスケード利用)_e0223735_1894768.jpg
ここでは、殺菌プロセスなどで使用する単体の熱交換装置をイメージしてもらうことが理解の上で最適である。『温度の高い(与熱、加熱、排熱)側と温度の低い(受熱、冷却)側の熱複合線図を図示化することによって、熱再生(熱回収)の最大熱量を見出すことができ、これを基にして省エネ改善を進める手法である。』と言えるだろう。
このような単体の装置(プロセス)での熱の授受の問題にとどまらず、ピンチテクノロジーは複数の装置、設備(プラント)、施設、工場、企業(コンビナート)に広げた熱の授受に関して、「熱のカスケード(Heat Cascade)利用(Heat Cascading)」を徹底する省エネ手法であると言うことも出来る。
ここまでは、熱投入量と排熱量を減らすための熱ピンチテクノロジー(Thermal-Pinch Technology)の概説であるが、用水使用量と排水量を減らすための水ピンチテクノロジー(Water-Pinch Technology)があり、さらには投入資源量と廃棄物を減らすための物質ピンチテクノロジー(Mass Integration)に発展している。
また、ピンチテクノロジーは「プロセス統合化(Process Integration)」の一手法であるとも言われる。
ピンチテクノロジーと省エネ、省水対策(熱ピンチ、水ピンチ、カスケード利用)_e0223735_18101653.jpg
水(ウォーター)ピンチテクノロジーについてはクリタが手掛けており、国内ではサントリーが初めて既設工場でこれに取り込み、飲料工場を新設する際にも適用し、用水使用の原単位を大幅に改善したという。
サントリーのCSR用語集では「ピンチテクノロジー」を『・・・「ピンチ」は、英語で『つまむ』という意味。飲料工場で製品を製造するには中味以外にも空容器の洗浄やタンク、配管、充填機などの設備の洗浄に水を使用する。こうした設備洗浄・冷却に必要な水の品質・量とそれらの使用後に出る水の品質・量を把握し、解析を行うことで使用後の水の再利用を図るしくみのこと。』と紹介している。

この水ピンチテクノロジーを乳業工場で適用したことがあるが、そのキーポイントは次のとおりである。
1.用水、排水の使用量と水質(CODなどのランク付け)を工程別に実態調査する。
2.工程別の用水使用箇所の要求水質を確認調査する。
3.「水質・水量線図(コンポジットカーブ)」を作成する。
4.用水使用量と排水量の削減余地を算定し、削減案を策定する。
5.削減案の経済的と技術的な実現可能性を評価し、改善案を策定する。
6.改善案を実施に移す。

これらの工程は省エネ手法と全く同じであり、水質を温度、水量をエネルギー(熱)量、用水をエネルギー、排水を排熱に代えれば、まったく省エネ手法となる。
複合線図を作成する準備の段階である1.と2.の段階で多くの時間と労力を要するが、その調査過程で削減案、改善案は見出されるものである。
ちなみに、日量約5,000トンの用水を使用する乳業工場では、その約10%に当たる約500トンを削減することが出来た。

by ecospec33 | 2013-02-19 18:18 | ●地球温暖化問題  

COP17の日本の対応方針に賛同(京都議定書、不平等条約、ポスト京都)

昨日11月28日から、南アフリカのダーバンで約190の国と地域が参加して、COP17(第17回 国連気候変動枠組み条約締約国会議:Conference of the Parties to the UNFCCC)が始まった。
京都で開催されたCOP6で採択された京都議定書(Kyoto Protocol)の第一約束期間(1998年から2012年)以降の枠組みであるポスト京都(Post Kyoto Protocol)を協議する会議である。

今日29日に、政府は地球温暖化問題に関する閣僚委員会を開き、COP17の対応方針として、2012年末で温室効果ガス削減の義務づけ期間が終わる京都議定書について、次の約束期間をつくる延長には加わらないことを確認し、仮に延長が決まった場合には参加を拒否し、先進国に削減義務を課す京都議定書の枠組みから離脱する姿勢を鮮明にしたと報道された。
今日の朝刊で、読売新聞と産経新聞がそれぞれ、京都議定書の延長反対と枠組み離脱を主張していた通りの結果となった。

カナダが12月にも京都議定書から脱退する予定と報じられており、京都議定書の枠組みそのものが崩れつつある。
そもそも、1997年12月に京都で開催された国際会議であったために、日本がEUに対して譲歩を重ねて京都議定書を採択したのが問題の始まりだった。言い換えれば、環境省が勇み足で不平等条約を締結せざるを得なかったと言っても過言ではない。
このため、今回の政府の対応方針は当然のこととして受け止めている。
この結果、COP17で国際環境NGOからは、「化石賞に値する日本は最悪国」と批判されるだろうが、日本は世界の正義を正すことに徹底すべきである。

政権交代直後に、鳩山首相が国内のコンセンサスを得ずに、「2020年までに90年比で温室効果ガスの25%削減」という高い目標を国連で国際公約した。
当時は民主党と鳩山首相の異常な政権運営を感じたが、野田首相でやっと正気に戻ったと言える。
大震災、原発事故という大転機があったのであるから、日本国内のエネルギー需給問題と地球温暖化対策の枠組みの再構築を優先して、国際公約を策定し直すことが必要である。

by ecospec33 | 2011-11-29 20:59 | ●地球温暖化問題  

ポスト京都に暗雲(京都議定書、不平等条約、気候変動枠組条約、地球温暖化対策)

6月6日~17日に、ドイツのボンで開催された気候変動枠組み条約の特別作業部会で、ポスト京都(2013年以降の温室効果ガス削減義務など新たな枠組み)に向けた温暖化交渉に進展が見られなかった。
また、環境保護団体「気候行動ネットワーク」が、日本を地球温暖化交渉で後ろ向きな発言をした国として、「化石賞」に選んだという。この受賞理由は、「京都議定書に基づく新たな削減義務をいかなる条件でも拒否する。」との従来の立場をあらためて表明したことだそうである。なお、前回の受賞理由は「発展途上国への原発輸出で先進国が温暖化ガスの排出枠を得られる仕組みを改めて提唱した。」ことだそうだ。

そもそも、「京都議定書」自体が、ヨーロッパ諸国に有利な基準年の設定、米国の脱会しかりで、日本にとって「不平等条約」と考えられること、また最大排出国である中国の傲慢姿勢を考えれば、日本が2013年以降に「京都議定書」の延長を拒否する姿勢を貫くのは、当然の主張と考えている。
1997年当時、京都会議で開催された第3回締約国会議(COP3)と採択された「京都議定書」の内容に関心を持っていた人は少なかったように思う。
この会議が開催された直後に、私は本社に全工場の担当者を集合させた。
各工場でCO2排出量を算出させて会議に臨ませたのであるが、肝心の上司の役員は、この会議の意義をまったく理解せず、従来からの「省資源・省エネルギー会議」の延長としか捉えていなかった。

環境団体からの不満は、日本国民の民意を反映できない、政治家と官僚とのせめぎ合で集約される、日本政府の一貫性に乏しい不連続な対応にあるのではないかと思っている。
そこで、過去を振り返ってみたい。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2007年 5月 安倍首相「美しい星50(Cool Earth 50)」国際交流会議「アジアの未来」
2007年12月 ポーランドのポズナンで「第16回締約会議(COP16)」
2008年 1月 福田首相「クールアース推進構想」世界経済フォーラム年次総会
2008年 6月 福田首相「福田ビジョン」
2008年 7月 第34回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)
2009年 6月 麻生首相「未来を救った世代になろう」
2009年 9月 鳩山首相「鳩山イニシアチブ」国連気候変動首脳会合
2009年12月 デンマークのコペンハーゲンで「第15回締約会議(COP15)」
2011年 5月 菅直人首相「OECD設立50周年式典演説」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
自民党政権では、徐々に「京都議定書」の束縛からの脱却を目指していたかに思うし、またある程度は民意を反映させる努力を取っていたように思うが、民主党政権になってからは、首相個人のパフォーマンスに終止しているように感じる。特に鳩山前首相は尋常ではない。
ともあれ、段階的な脱原発という民意を反映させつつ、2008年~2012年の「京都議定書」第一約束期間における温室効果ガス排出削減を条約通りクリアすることによって、次のステップを踏み出すことが、日本の国際的な信用を取り戻すための必要な手段と考える。

by ecospec33 | 2011-06-20 12:31 | ●地球温暖化問題