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大手食品企業のCSRの第三者評価と先進的な対応Ⅷ(サステナビリティー、SDGs、ESG、CSV:共有価値の創造)

5.まとめ

東洋経済の『CSR企業総覧』、『CSR企業白書』から、そのCSR評価について検証を試みた。大手食品企業の評価ポイントは僅差となっているが、企業間を詳細に比較する査定をおこなった結果、大きな差があることが判明した。

CSR関連のWebサイトの内容を精査した結果、大手食品企業のそのページ数は売上高に深く関連しており、それぞれの企業に多くの課題があることが明らかとなった。

日経BP社『環境ブランド調査』の結果から、大手食品企業の社会的評価とCSR関連Webの情報開示量とは強い相関がみられた。

経営戦略をCSRからCSVへ、また環境マネジメントをISO14001外部審査認証から自己適合宣言へ転換している状況を示した。

あとがき

かって、著者は自社工場についてISO14001認証取得を進めたが、高額な維持経費の点から関係会社の工場について手をこまねいていた。キリンビールの研究所がエコアクション21(EA21)の認証を登録したことをWeb上で知って、先進的な食品企業もEA21で対応していることを理由にして、これを実行に移した。

このEA21認証登録状況を「社会・環境報告書」に記載したところ、その次年度に同業他社が「環境報告書」に記載した。その担当部署の長が、「参考にさせてもらった。次の一手はどうする。」と聞いてきたので、「経費の点からも、本社のISO認証取得によるマルチサイト化だ。」と答えた。その後は自社も他社もその通りに進めることになった。また別の他社の担当者からは、「CSRレポートに変えましたね。参考にさせてもらいました。」と丁寧に挨拶頂いたこともあった。

競合する他社とは競争しながらも協調し合い、切磋琢磨しながら環境およびCSRの対応を進めてきたし、それは現在も変わらないはずである。

今回、東洋経済の「CSR企業総覧」、CSR関連のWebサイトから、それらの企業を見直したところ、GRIスタンダードの準拠およびSDGsを組み込みなど、大きな進展も見られたが、変化していないと感じることもあった。

例えば、関係会社に対する統治力が依然と弱いこと、かって他企業を参考にした項目を記載続けているにもかかわらず、本家の企業にはその記載がないこと、グローバルな視野が不足していること、社会的に大問題となった事件を引きずった状態が続いていること、マスコミで取り上げられた事故、事件の情報さえも開示していないことなどである。

これも、それも、企業の体質と風土は一朝一夕には変わらないということかも知れない。

著者は企業で勤めるかたわら、東京理科大学で2003年から6年間教鞭をとっていた。毎年、「環境報告書」または「CSRレポート」を、大手企業4社から120冊送ってもらい、これを工業化学科3年の学生に配布し、「装置工学」講座の教材とさせてもらっていた。

東京電力の現社長である小早川智明氏が営業で何度か来社を受けるなど、東京ガスさんと東京ガスさんとは様々な場面でお付き合いがあり、その報告書をエネルギー、地球温暖化問題の教材として、JFEさんとは早大大学院の同期で、還元剤として廃プラスチックの高炉投入を推進した研究所部長(現東北大学名誉教授の有山達郎氏)に照会してもらい、その報告書を重工業における環境対策の教材とした。またキリンビールさんとは当時の環境部長が学科は異なるが大学の2年先輩で、よく相談にのってくれていたこともあり、その報告書は本業である食品企業からの選択であった。その内容がアサヒ、サントリーとそれと比較して、広告色が薄く、先進的であり、かつ教科書といえるほど教材として優れていたからである。

当時、ビール三社には数多くの工場を見せてもらい、自社工場の冷凍設備や用排水処理の新増設および新工場の建設の参考にもさせてもらった。アサヒビールさんは「ノンフロン工場」など、当時としては、やり過ぎではないかと思うほどの華々しい環境対策を旭興一専務が率先して講じていたが、その報告書は企業内の楽しさを売りにしたような印象だった。今ではこれを理路整然としたものに作り変えている。また、サントリーさんは環境関連の用語解説集をWeb上で掲載するほど、環境対策に力を入れていた。現在は「天然水」を売りにして環境性と高品質を高らかに広報し続けている。そのホームページには『ビール・発泡酒の仕込の水として使用している「天然水」は、深井戸から採る良質な天然水です。』とある。深井戸、浅井戸に違いがあることは承知しているが、その井戸水を「天然水」と称してCM放送するうまさと、その発信力が際立っている。ただし、ピンチテクノロジーによる用水削減、食品業界で最大級の太陽光発電の設置、PETボトルのダイレクトリサイクルなどの環境対策を実質的に講じている。一方、キリンさんは観念的と言えなくもないが、先進的で論理的な攻めの経営姿勢は変わっていないように思う。

どの時代でも、環境対策、CSR(狭義・広義)、ESG、SDGs、サステナビリティ、CSVであろうが、社会の動向と制約を素早く捉え、実質的な活動を行うことによって企業価値を高め、企業ブランドと社会的イメージを上げるべく、真摯に情報公開することが肝要である。


by ecospec33 | 2019-11-06 10:39 | ●CSRと環境対策  

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