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大手食品企業のCSRの第三者評価と先進的な対応Ⅶ(サステナビリティー、SDGs、ESG、CSV:共有価値の創造)

4.先進的な対応

4.1 「CSR:社会的責任」から「CSV:共通価値の創造」へ

2003年は、「日本のCSR経営元年」と言われており、ソニー、パナソニック、東芝などグローバル企業が先行してCSR専門部署を組織し、CSRレポートを作成した。食品企業では、2004年にアサヒが、2005年にキリン、サントリー、味の素が続いた。

2011年には、マイケル・ポーターらが「CSV(CreatingShared Value:共通価値の創造):経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略」を提唱した。企業の倫理的な社会的責任を求める「CSR」とは異なり、「CSV」は企業の利益追求するという本来の目的の中で、自社の強みを生かして社会的課題の解決を目指し、社会的価値の創造を図っていく戦略という。

CSV経営の代表格として、国際的な大手食品企業であるネスレとユニリーバが紹介されるが、国内ではキリンHDと味の素HDが、この概念で経営を進めている。

グローバルな意識を醸成するために、参考として「世界の食品企業ランキング」を右図に示す。

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キリンHDは2019年2月に公表した「長期経営構想」の中で、『・・・キリングループを取り巻く環境は、先行きの見通しがますます困難になってきており、国内外で経営に影響を及ぼす様々な社会課題が顕在化してきています。このような中、持続的な成長を実現するには、CSV経営の深化により社会的価値と経済的価値を創出し、社会と共に歩んでいくことが不可欠です。こうした認識のもと、キリングループは、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指す・・・・・。』と述べている。

また、味の素HDは「非財務(ESG)」Webサイトの中で、『味の素グループは、事業を通じた社会的課題解決に取り組み、社会・地域と共有する価値を創出することで経済価値を向上し、成長につなげてきました。この取り組みをASV(Ajinomoto Group Shared Value)と称し、これを進化させていくことが「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」の実現につながると考えています。』と述べている。

また、アサヒグループHDは「サステナビリティ」Webサイトに、「アサヒの強みを活かした価値創造」を掲げ、『企業が持続可能な事業を営むためには、企業を取り巻く環境が抱えている問題を解決しながら、事業を進めていくことが不可欠です。現在、世界人口の増加による食糧不足や栄養・健康問題など、世界には食に関わる様々な問題が存在しています。アサヒグループは自らの事業で培った強みやノウハウを活用して、これらの課題解決に貢献できると考えています。』と、「CSV」の概念を取り込んでいる。

ともあれ、前述したとおり、キリン、味の素ともに「CSR」を先進的に進めてきたが、その舵を「CSV」へ転じた意味は大きいと考えるべきである。

4.2 ISO14001外部審査認証から自己適合宣言へ

2017年に、キリンHD内の主要企業であるキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンの3社について、15年近く維持してきたISO14001外部審査による認証から自己適合宣言に変更した。

著者は、企業においてこの環境マネジメントの管理を長年担当し、本社の頂点としたマルチサイト化を進め、企業内の内部監査員制度を作るなど、その維持経費の削減を進め、また外部審査員の能力不足を感じたことから、審査会社を変更するといった改革も進めた。しかしながら、それでも認証維持に多大な労力と経費を要しており、その効果は大きくないと考えていた。

ステークホルダーとの関連があるから、また世間体があるからと、関係会社についてもEA21(エコアクション21)からISO14001認証取得に変更する企業もあるようだが、先進的なキリンのこの動静を受けて、これまで外部審査によるISO14001認証維持とその範囲を拡大させてきた、全ての食品企業について環境マネジメントシステムを再考する時期にある。


by ecospec33 | 2019-11-06 10:24 | ●CSRと環境対策  

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