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大手食品企業のCSRの第三者評価と先進的な対応Ⅴ(サステナビリティー、SDGs、ESG、CSV)

2.3 CSR情報提供は冊子からWebサイトへ

CSR活動の情報公開については、報告書・レポートといった冊子形式に頼っていたところがあり、これをPDF版化して、これを企業のホームページに公開していた。しかし、インターネットの活用が進んできたことから、ホームページ上に「企業情報」、「IR・投資家情報」などに並んで、「CSR」または「サステナビリティ」のWebサイトを立ち上げ、多くの人に制限なく情報提供できるようになった。

下の表はWebから確認したレポート、報告書であるが、その全てを冊子として提供するわけではない。一般的に、Webだけでの情報公開も増加していると言う。冊子にしなくてはならない要因を再考する必要であるだろう。

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財務情報の「アニュアルレポート」と非財務情報の「CSRレポート」を統合した「統合報告書」を発行する傾向にあり、サントリーHDや明治HDのように、「CSR」または「サステナビリティ」のWebサイト自体をPDF版化して公開する食品企業も出てきている。

また、世界を目指す食品企業については、冊子の英語版化も確実に進んでいる。

2.4 重要な課題と記載すべき項目

大手食品企業の「CSR」、「サステナビリティ」のWebサイトのコンテンツを詳細に調査することによって、重要な課題および記載すべき項目を把握することが出来たので、ここに提示する。

(1)Webサイトの重要な課題

Webのホームページは企業のイメージを印象づける重要な情報発信ツールの一つでもあるが、新たなサイト、コンテンツを追加する際にうまく適合出来ていないようである。大々的なリニューワルを検討すべきと思う企業もあった。

また、ホームページ内で、企業情報、IR・株主情報、CSRまたはサステナビリティと、サイトが分かれているが、コーポレイト・ガバナンス、企業の方針などといった共用する情報を、どのサイトに組み込むか、または参照させるかの課題が散見された。これに対し、サントリーHDは企業情報のサイトに、上記の他のサイトを組み込み統合して、この課題をクリアしている。

サントリーHDのWebサイト内のレベル(階層)は5つで多く、これに対し、アサヒグループHDは3つのレベルに統一しており、内容を全体的に把握しやすいヒエアルキーである。

上述したとおり、サントリーHDなどのように、CSR関連Webサイトの全てをpdf版化することによって、CSR関連情報を一括して読みやすくすることは重要な方法であり、また明治HDのように開示されたページを印刷スタイル化できることも優れた方法である。

CSRに必須な「ステークホルダーとのダイアログ」や「GRIスタンダード対照表」の記載が全くない企業は対応が遅れているとの印象が諌めないし、数値を扱っている項目については、少なくとも自己検証した説明が必要であり、さらなる場合は第三者認証が必須であるという認識を持つべきである。

多くの企業はSDGs適応のプロセスについての記載は極めて控えめに、その結果についても1ページ程度にまとめているが、このプロセスを多く記載している企業がある。報告書の基本的な記載方法は、企業内のプロセスより企業外に伝えるべき結果を重視してもらいたい。

些細なことだが、あるガバナンス図が改正されないまま、また文字化けを掲載しているような企業もある。

(2)記載すべき項目

Web上に記載すべき項目、またはそれ以前の対応として、実施すべき項目を箇条書きで示す。

その多くの項目は、ビール・清涼飲料製造業がWeb上に記載している内容である。

方針・規約の適正な記載方法の検討

事業所の災害拠点化による地域社会への貢献

JAL、ANAなどのマイレージのサービス利用を企業の一括管理とし、その収益を地球温暖化対応に還元

加入している関連業界団体、支援している市民団体また出向者の役職の記載

関連法令と国家資格取得者人数の記載

サイトレポート(各工場の環境データ等の報告書)の記載

アンモニア冷媒使用など脱フロン対応の記載

用水の使用実態とリスク管理の記載

環境を考慮した容器包装の事例の記載

社内教育における社内報の活用の記載

個人情報漏えい問題に対する情報リスクの記載

社員の健康維持活動の記載

グリーン電力購入および蓄熱・蓄電とDSM対応の記載

環境関連の関係会社の記載

事業所の緑化対応、風力・水力・太陽光などエコ見学会開催の記載

休業災害度数率など労働災害の実態の記載

消費者からの声を生かしている事例の記載

水源涵養と排水の放流河川の清掃活動(注1)

エコマイレージ方式採用などによるボランティア活動の推進(注2)

LCA、CFPの記載(注3)

(注1)水源涵養について

10数年ほど前に、自工場と関係会社工場の工場長が集合する会議で、ビール会社の事例をもとに水源涵養の必要性を説いたのだが、同席する経営者らも無反応だった。経営者の意識改革が優先するのかも知れない。

(注2)ボランティア活動について

2010年に業界で付き合いのあった仲間の計らいで、著者も気軽い気持ちでボランティア活動として、湘南にある防潮林の下草刈りを一日参加したことがある。主催する団体に500円の費用を支払い、お揃いの赤いバンダナをもらい、鋭く研がれた大きな鎌で林の下草を教わりながら刈った。きちんとした運営で1時間毎に休みをとったが、当日の日差しの強さから疲労困憊した。当然ながら、芝狩りより厳しかった。

しかしながら、この防潮林の背後には、役得を直接的に得ていると思われるマンションが建っている。その住民こそがやるべき活動ではないかと思い、また参加した学生の不真面目な態度が気になった。これに関し、仲間達も同意見だった。このように、たった一回のボランティア活動に不満を言っているようでは、精神的にも、体力的にも、“スーポーボランテイア”になる資格は全くない。

ここでの結論は、働き方改革という大きな命題があるこそ、企業の責任において、ボランティア活動の意義と目的および実行者の対価を明確にし、その記録を残すことが必要があり、企業が「ブラック・ボランティア活動」を推進してはならないし、個人としても企業人としても、「ブラック・ボランティア活動」には参加してはならない。

(注3)LCAの活用について

環境大臣として初めて国際会議に臨んだ小泉進次郎議員が、ニューヨークで、温室効果ガス排出量が高い牛肉を食して、環境団体から批判を浴びた。環境対策のみならずCSR、サステナビリティを担当者としては、このような初歩的な問題をクリアしておく必要があるだろう。

2006年に、食糧農業機関(FAO)は「家畜の長い影(Livestock's Long Shadow)」という畜産部門のLCAを発表した。畜産部門による土壌劣化、気候変動、地下水汚染、生物多様性について検討をおこない、畜産部門による温室効果ガス排出量は総人為的な温室効果ガス排出量の約18%という大きな数値であることを推定した。

これに対し、2010年に、FAOは酪農部門による温室効果ガス排出量は総人為的な温室効果ガス排出量の約4%であり、このうち肉生産を除いた排出量は総排出量の約2.7%であることを推定した。

畜産、酪農の両部門ともに、揺りかごから墓場まで、農場から製品消費までを扱っており、このうち農場からの温室効果ガスの排出が大半を占めている。

CSRの関係者は、このような基本的な知識を承知しておくべきである。

右図は、著者が2013年に日本乳業協会の環境委員会で、「カーボンフットプリントCFP対応」というテーマで講演した時の資料の一部である。

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この図は、温室効果ガス排出量に対する栄養素密度で、牛乳が他の飲料に比べて高い数値を示している文献紹介であり、その目的は誇りを持って牛乳を取り扱う意識を持ってもらうこと、また社会に周知徹底を図ってもらうことであった。


by ecospec33 | 2019-11-06 09:40 | ●CSRと環境対策  

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