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大手食品企業のCSRの第三者評価と先進的な対応Ⅲ(サステナビリティー、SDGs、ESG、CSV)

1.3 CSR企業ランキング評価の検証

東洋経済の『CSR企業白書』のCSR企業ランキングの「非財務」の評価項目は、「環境:E」、「社会性:S」、「企業統治:G」に加えて、「人材活用:H」の4つである。

『CSR企業総覧(ESG編)』の企業データには、「CSR全般」、「ガバナンス・法令順守・内部統制」、「消費者・取引先対応」、「社会貢献」、「企業と政治の関わり」、「環境」の6項目について、アンケート結果が詳細に記載されている。また、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』には「人材活用」に関わる項目が詳細に記載されている。前者の6項目を、ESG(E:環境・S:社会性・G:ガバナンス)に整理すると、「環境」がEに相当し、「消費者・取引先対応」、「社会貢献」、「企業と政治の関わり」がSに相当し、「CSR全般」、「ガバナンス・法令順守・内部統制」がGに相当する。

ここで、東洋経済の評価方法は、『原則として全項目加点方式で、ネガティブなデータを回答したことによつて減点されることはない。逆に情報開示という観点から、一部の項目では数値の優劣にかかわらず、有効回答があつたことに対し加点している。』としているが、その詳細は不明である。

そこで、食品企業について、『CSR企業総覧(ESG編)』に記載された企業データの内容を比較し、その査定をおこない、評価の妥当性を検証した。この査定方法は、最高評価のアサヒグループHDの記載内容を基準として、他の企業のそれと比較して、未満であればマイナス査定、超えていればプラス査定するものである。

ここでは、6項目の中から「CSR全般」と「環境」の2項目を取り上げ、著者の査定結果を下表にまとめた。

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これによって、東洋経済の「CSR評価点(格付け)」では各社の差異は小さいが、査定した差異は大きいことが判明した。

これは、評価が加点方式の絶対比較であるに対し、査定が加点に減点も入れての相対比較であるためで、食品企業という同じ業態内で企業間比較する場合には、後者の方が優れていると考えられた。

ここで、「CSR全般」と「環境」の項目ともに、ビール・清涼飲料業は乳業より高い評価であることは明確である。

ちなみに、アサヒは2002年に、またキリンは2005年に、味の素は2009年に、国連が提唱する「グローバル・コンパクト」に署名しているが、これに対し、乳業界では2018年に森永乳業が初めて署名している。また、キリンは2003年に、食品業界で初めて環境対策部門を組み込んだCSR部門を創設した点も記録しておきたい。

そのキリンが「CSRレポート」を初めて出版したのが2005年であり、業界は異なるが、住友化学が「レスポンシブル・ケア レポート」から「CSRレポート」に変えたのが2004年である。この化学業界はCSR評価ランキング上位にランキングされており、この「レスポンシブル・ケア」とは「環境と安全」を意味しており、かっては企業内に環境・安全という部門が存在していた。ともあれ、CSRを推進するためには、業界内にとどまらず、グローバルな視点を生かしているかが大きな課題である。

この評価と査定の詳細な比較表を別紙1、2に示す。

このような比較をすることによって、それぞれの食品企業が改善すべき課題、新たに取り組むべき課題が明確になる。


by ecospec33 | 2019-11-06 05:58 | ●CSRと環境対策  

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