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ピンチテクノロジーと省エネ、省水対策(熱ピンチ、水ピンチ、カスケード利用)

ピンチテクノロジー(Pinch Technology)は1970年代に英国のリンホフ博士(Linnhoff)が開発した省エネ手法である。
省エネルギーセンターの用語集では、「ピンチテクノロジー」を『プロセスシステムでは、冷却を要する流体と、加熱を要する流体が混在している。プロセス流体を与熱側と受熱側に分類して、複数の与熱流体に対して、同じ温度区分の熱量を統合すると「与熱複合線」が得られる。同様に複数の受熱流体からなる「受熱複合線」が得られる。これらを重ね合わせて「熱複合線図」を作成することが出来る。与・受熱複合線を、熱量軸に沿ってずらすことによって、プロセス流体間の理論的な最大熱交換量を推算することが出来る。又、与熱複合線と受熱複合線が接する点を「ピンチポイント」と言う。』と説明している。
この用語説明だけでは理解が難しいだろうから、「ピンチテクノロジー」(巽浩之・松田一夫(千代田化工)共著)を参考としていただきたい。
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ここでは、殺菌プロセスなどで使用する単体の熱交換装置をイメージしてもらうことが理解の上で最適である。『温度の高い(与熱、加熱、排熱)側と温度の低い(受熱、冷却)側の熱複合線図を図示化することによって、熱再生(熱回収)の最大熱量を見出すことができ、これを基にして省エネ改善を進める手法である。』と言えるだろう。
このような単体の装置(プロセス)での熱の授受の問題にとどまらず、ピンチテクノロジーは複数の装置、設備(プラント)、施設、工場、企業(コンビナート)に広げた熱の授受に関して、「熱のカスケード(Heat Cascade)利用(Heat Cascading)」を徹底する省エネ手法であると言うことも出来る。
ここまでは、熱投入量と排熱量を減らすための熱ピンチテクノロジー(Thermal-Pinch Technology)の概説であるが、用水使用量と排水量を減らすための水ピンチテクノロジー(Water-Pinch Technology)があり、さらには投入資源量と廃棄物を減らすための物質ピンチテクノロジー(Mass Integration)に発展している。
また、ピンチテクノロジーは「プロセス統合化(Process Integration)」の一手法であるとも言われる。
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水(ウォーター)ピンチテクノロジーについてはクリタが手掛けており、国内ではサントリーが初めて既設工場でこれに取り込み、飲料工場を新設する際にも適用し、用水使用の原単位を大幅に改善したという。
サントリーのCSR用語集では「ピンチテクノロジー」を『・・・「ピンチ」は、英語で『つまむ』という意味。飲料工場で製品を製造するには中味以外にも空容器の洗浄やタンク、配管、充填機などの設備の洗浄に水を使用する。こうした設備洗浄・冷却に必要な水の品質・量とそれらの使用後に出る水の品質・量を把握し、解析を行うことで使用後の水の再利用を図るしくみのこと。』と紹介している。

この水ピンチテクノロジーを乳業工場で適用したことがあるが、そのキーポイントは次のとおりである。
1.用水、排水の使用量と水質(CODなどのランク付け)を工程別に実態調査する。
2.工程別の用水使用箇所の要求水質を確認調査する。
3.「水質・水量線図(コンポジットカーブ)」を作成する。
4.用水使用量と排水量の削減余地を算定し、削減案を策定する。
5.削減案の経済的と技術的な実現可能性を評価し、改善案を策定する。
6.改善案を実施に移す。

これらの工程は省エネ手法と全く同じであり、水質を温度、水量をエネルギー(熱)量、用水をエネルギー、排水を排熱に代えれば、まったく省エネ手法となる。
複合線図を作成する準備の段階である1.と2.の段階で多くの時間と労力を要するが、その調査過程で削減案、改善案は見出されるものである。
ちなみに、日量約5,000トンの用水を使用する乳業工場では、その約10%に当たる約500トンを削減することが出来た。

by ecospec33 | 2013-02-19 18:18 | ●地球温暖化問題  

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