下水道を考えるⅦ(技術と法令の歴史、テムズ川、散水ろ床、活性汚泥法、水質汚濁防止法、浄化槽法)
1848年から52年にかけて、テムズ川に下水を放流している下流から取水した水を飲料した方が上流よりも、伝染病であるコレラによる死亡率が高いことが突き止められたが、これを防止するための本格的な下水処理施設の建設は1895年以降であった。
その処理法は1870年代から英国で開発が進められ、1895年から1920年にかけて多数の下水処理施設の建設で採用された『散水ろ床法』(Filer bed, Biological filter, Trickle filter)であった。英国では現在も中小規模の下水処理施設で採用されているが、ハエの大量発生ばかりでなく、ろ床に付着した嫌気性汚泥を排除が不完全なことなど大規模施設への対応が困難であった。
これに代わって開発されたのが、『活性汚泥法』(Activated Sludge process)である。1913年に英国で開発されたが、英国ではすでに散水ろ床法の下水処理施設建設に投資されていたために、その採用が遅れ、米国で大幅に採用され、世界の下水処理法の主流となった。
(国土交通省「下水道の歴史」、東京都下水道局「三河島水再生センター」、P. F. Cooper「Historical aspects of wastewater treatment」を参照)
1958年に旧法が廃止され、『都市の健全な発達と公衆衛生の向上に寄与すること』を目的とした「下水道法」が制定され、1970年には公害対策の観点から『公共用水域の水質保全に資すること』が目的に加わった。
また、同年の1970年に工場の排水処理施設と密接に関連する「水質汚濁防止法」が制定され、また、1983年に浄化槽の設置・保守点検・清掃・製造について規制する「浄化槽法」が制定された。
1970年度の下水道普及率は20%に達しておらず、1983年度でも約35%である。そのような下水道が整備される以前の1970年代の前半に、水質汚濁防止法に基づいて特定施設を有する工場には排水処理施設が完備された。また、家庭などに浄化槽が整備されていった。
by ecospec33 | 2012-11-05 11:39 | 〇下水道と汚水処理