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原子力行政の更なる見直しⅡ(原子力基本法、原子力委員会、松田美夜子、原子力白書、原子力政策大綱)

2007年の正月に、松田美夜子女史から年賀状が届いた。それは原子力委員会の委員就任の挨拶状でもあった。
女史は、家庭ごみの分別排出とリサイクルを進めた市民活動の経験から生活環境評論家となり、各種のリサイクル法の審議会委員として法成立に関与し、その間、富士常葉大学環境防災学部の教授を務めた人物である。2005年から6年にかけての「容器包装リサイクル法」の改正時にお近づきにさせていただき、企業の立場を聞いて頂いたが、華やかで快活で、いつも笑顔の“おばちゃま”という感じであった。
私から女史に次のメールを差し上げたところ、ご指摘の通りとの返信があった。
「・・・長年のご活躍が、より大きな社会貢献の場へと飛躍されたことを心よりお喜び申し上げます。4年前の原子力発電所の不具合隠蔽問題、昨年の水力発電所(その後、原発にも波及)の検査改ざん問題など、電力会社と行政に対する社会の不信感を払拭させなければ、原子力発電所の核廃棄物の適正処理に科学的根拠があったとしても、長期にわたっての安全性の維持確保が求められる処理システムに対して、社会・市民からの同意は得られないのではないでしょうか。・・・」
その後の女史の原子力委員会委員としての活躍は承知していないが、今般、原子力規制委員長に就任した田中俊一氏が原子力委員会委員長代理であった当時の1期3年間務め、2009年末に下りられたそうである。

原子力委員会の委員には、松田美夜子女史のような経験と専門性が求められるが、原子力行政の実態がどうであろうとも、委員会として法で規定された役割と権限を認識し、それに伴う責任を痛切に感じてもらわなくてはならないだろう。それが全う出来ないのであれば、実態に適した法の改正が求められるのである。
骨抜きされたと言われる『革新的エネルギー・環境政策』の(2)原発に依存しない社会の実現向けた5 つの政策の中でも、「政府は、以下の内容を盛り込んだ新たな原子力政策を、エネルギー・環境会議の場を中心として確立する。なお原子力委員会についは平和的利用の確認など機能に留意しつつ、その在り方に関する検討場を設け、 組織の 廃止 ・改編 も含めて抜本的 に見直す。」と記載されている。

原子力委員会は原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画を示す、新たな「原子力政策大綱」の策定作業を進めてきたが、本年8月中旬に発覚した原子力推進派だけの秘密会議問題で頓挫している。
平成21年版「原子力白書」を最後に発行できていないにもかかわらず、「原子力政策大綱」だけを策定しようとするのが不思議なことで、また法律に規定された「エネルギー基本計画」や「科学技術基本計画」と同列に捉えて、これを策定するのが委員会の役割と思い込んでいること自体が誤りである。

ともあれ、原子力規制委員会が発足したが、原子力行政の根幹である原子力委員会の早晩の見直しが必要である。

by ecospec33 | 2012-09-26 12:20 | ●原発問題と電力需給逼迫  

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