日本の電力供給システムを考えるⅥ(自家用発電、コージェネレーション、経済的支援策、導入促進法)
電力小売りに新規参入している新電力(特定規模電気事業者、PPS;Power Producer and Supplier)については、その多くが自前の発電所を所有しないなど経営基盤が脆弱なことから、この電力自由化によって、電力小売りの全市場に競争原理が持ち込まれ、料金が低減されるといった淡い期待はしない方が良い。
また、これによって、電力会社の発電事業と送配電事業の分離も加速させるというが、東京電力を発電事業と送配電事業に早急に分割し、後者を売却して原発事故の賠償資金に充てることを最優先すべきと考える。
10.コージェネレーションと自家発電の課題②:
発電量などの情報不足と強制力のある導入促進策
資源エネルギー庁は自家用発電に関し発電設備容量と発電量をHPに公開している。「電力調査統計」にある自家用発電所認可出力表、自家用発電及びその他電力量実績などである。
前回も記述したが、2010年度から自家用発電に、独立発電事業者(IPP)と公共水力発電、共同火力発電を加わえたことから、それ以前のデータとの整合性が取れていない。
発電設備容量を「累積発電容量」と記しているので、廃止されたコージェネも含まれているかと思い、問い合わせたところ、休止分は含まれているが、廃止分は除外しているとのことであった。また、コージェネによって発電された電力量は把握していないことも確認した。
昨年夏場に電力需要のピークカットに大活躍した、このような小規模な自家用発電設備は、資源エネルギー庁は1,000kW以上の自家用発電設備しか集計していないこと、また「コージェネ・センター」はモノジェネ(自家発)を取り扱っていないことから、電力需給に関する統計において無視された存在となっている。
前述のとおり、「コージェネ・センター」では発電量という基礎的なデータが欠落しており、コージェネ含めた自家用発電設備の実態を正確に把握していないために、信頼性の高い将来予測が困難となっている。
ちなみに、日本ガス協会は2030年度の発電設備容量を、2010年度末の460万kWから、その約6.5倍の3,000万kWに拡大させる計画を打ち出している。これは、年平均約130万kWの伸びであり、原子力発電所を毎年1基増設する規模であり、日本ガス協会にとっては夢の見込みだろうが、過激な見通しと言わざるを得ない。
これを実行に移すためには、産業用のガス・コージェネばかりでなく家庭用の燃料電池などのガス・コージェネについても、再生可能エネルギーと同様に、設備導入時の経済的な支援策と発電時の全量買い取り制度などの経済的支援策、また強制力のある「コージェネ導入促進法」といった法整備が必要となる。
日本の電力供給システムを考えるⅠ(4月17日 http://ecoeng.exblog.jp/17793136/ )
日本の電力供給システムを考えるⅡ(4月19日 http://ecoeng.exblog.jp/17810463/ )
日本の電力供給システムを考えるⅢ(5月10日 http://ecoeng.exblog.jp/17955765/ )
日本の電力供給システムを考えるⅣ(5月13日 http://ecoeng.exblog.jp/17973363/ )
日本の電力供給システムを考えるⅤ(5月15日 http://ecoeng.exblog.jp/17986890/ )
by ecospec33 | 2012-05-21 07:39 | 〇日本の電力供給システム