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企業倫理の確立に向けて(企業風土、社会的責任、CSR、ISO26000)

一昨日11月22日に、大王製紙の井川意高前会長が特別背任容疑で逮捕された。
大王製紙のエリエールはナンバーワンのシェアを誇るティシューであるが、同業他社と協調をしない強引な値下げ商法で、そのシェアを確保していると製紙業関係者から聞いたことがあった。これも創業者による同族経営によるものかは明らかでないが、創業家3代目が家業を危うくした。帝王学を学んだエリートらしいのだが、「長男の甚六」気質と言われる問題でもあったかと思う。
前会長はこの巨額借入の不祥事を個人的な問題として詫びてはいるが、大王製紙における企業風土、コンプライアンス(法令順守)とコーポレイトガバナンス(企業統治)といった企業倫理の問題である。
オリンパスの巨額損失隠し、読売巨人軍の内部紛争なり、一時代を反映する同根な事件が相次いでいるが、一流企業と呼ばれている大企業の多くが、過去の不祥事という負の遺産を背負って経営を継続している。

大手乳業会社も例外ではなく、各社それぞれの「脛に傷」を持っている。
森永乳業は「森永ヒ素ミルク中毒事件」(1955年)、明治乳業は「明治ヤシ油混入事件」(1971年)、雪印メグミルクは「雪印食中毒事件」(2000年)である。
このうち、「明治ヤシ油混入事件」は食中毒を起こした事件ではないため、あまり世間に浸透していないようである。これは、明治乳業が安価な異種脂肪(植物油脂)を牛乳に混入させ販売したという事件であり、数年前の中国でのタンパク質代替としてメラミンを牛乳に混入させた事件と同質のものである。
他社の事件が過失であったのに対し故意であったことが大きな社会問題となり、国会でも『明治乳業の社会的責任をどう考えているのか』と、政府と監督官庁の農水省が追及された事件であった。当時40年前には「CSR」という言葉は存在しなかったようだ。

2011年の年の瀬が気になり出した11月に入ってから、大手乳業会社から「CSR報告書2011」が送られてきた。
この2年間、1か月づつ発行が遅れてきているので、送り主のCSR室長に発行を早めるようにと叱咤激励し、また、大震災の対応が記されていたことは評価するが、CSRの言葉遊びをしているようで、また、まるでリクルート用の冊子となっていたので、骨太な内容にした方が良いと批評しておいた。
提供される様々な商品、新製品、サービス、また公表される「CSR報告書」などを含めて、この企業の現在の実力であるので、厳しい評価、批評をしたところで何の効果もないことは承知の上である。

この「CSR報告書」の基本とすべき概念を、ISO26000(社会的責任に関する手引)が示している。「社会的責任に関するコミュニケーション」の章、「社会的責任に関する情報の特性」の項で、社会的責任に関係する情報に求められる条件を規定している。
 1.完全であること
 2.理解しやすいこと
 3.敏感であること
 4.正確であること
 5.バランスが取れていること
 6.タイムリーであること
 7.入手可能であること
5.バランスが取れていることについては、『情報はバランスが取れ,公正であるべきである。また,組織の活動の影響に関する否定的な情報を省くべきでない。』と規定している。

この『否定的な情報』の視点から、大手乳業会社の「CSR報告書」を見比べると、雪印メグミルクだけが「雪印食中毒事件」に加えて「雪印食品牛肉偽装事件」を記載し、過去の不祥事を風化させてはならない姿勢がくみ取れる。
しかし、他の2社は現在の華やかさを見せつけるが、過去の不祥事を隠しているかのようであり、風化させない努力を垣間見ることは出来ない。
「CSR報告書」は社外に綺麗ごとの情報を発信する手段ではない。従業員の読み物でもあり、企業風土を形成する一手段であると考えたい。

企業は経営指標だけで推し量ることが出来ない生き物である。その生き物だけに、企業倫理は一朝一夕には確立しない。
ISO26000を取り込むであろうCSR担当部署の見据える先は、企業倫理の確立である。

by ecospec33 | 2011-11-24 12:05 | ●CSRと環境対策  

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