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国内のコージェネレーションの将来は?(日本ガス協会、CHP;Combined Heat and Power、熱電併給)

昨日10月27日、日本ガス協会の鳥原会長(東京ガス会長)が『天然ガスコージェネレーションシステムによる発電出力は現在460万kW(原発5基相当)であるが、2030年頃にはその6.5倍、3,000万kW(原発30基相当)の導入が可能と考えている。コージェネレーションは、分散型システムとしてエネルギーセキュリティーの向上に資するだけでなく、再生可能エネルギー導入による出力変動の調整機能を果たすこともでき、さらには「需要サイドでの効率的なエネルギー利用」という点から、社会的コストの低減にも寄与するシステムである。』と発表した。
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1993年という食品業界の中でも早い時期にコージェネレーションの導入を進めた私の経験から、この発表の内容と意義は良く理解できるのだが、コージェネレーションの導入予想があまりにも過大と思わざるを得ない。または、希望的な導入予測の発表とも思う。その予測が当たったとしても、それが運用(運転、稼働)されるとは限らない。
その理由は、燃料である都市ガスの高騰にある。都市ガスの原料であるLNGの高騰は円高によって緩和されているとはいえ、コージェネレーション設置する経済的なメリットは激減しているのである。
原子力発電の停止により火力発電を稼働させるために、電力各社の利益が減少しており、電力料金の上昇が考えられ、コージェネレーション導入の経済的なメリットが、相対的に増加する可能性があるが、2000年前後までのように、設備投資回収が数年となるような好条件は期待できない。
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2003年前後と記憶しているが、設置後数年間にわたり運転していたコージェネレーションを停止させたことがあった。燃料は重油であったが、運転するほど赤字になるからである。福島第一原発の事故による原発運転停止による電力需給逼迫までは、このコージェネレーションは不要の長物と化していた。
原発事故前の2010年末に、ESCO事業者の経営者に、1990年代に設置したコージェネレーションの更新を検討すべきと話したところ、「更新の提案など怖くて出来ない。経済的メリットが減少しているので、そのコージェネを撤去しろと言われかねない。」と話していたのである。

エネルギーの効率的利用、CO2削減という国家の大きな目的を持った、国の支援、施策を受けなければ、電力需給逼迫が解消された途端に、コージェネレーション導入件数は極端に落ち込むに違いない。
2010年7月26日~8月2日に「原子力発電の行方と代替電力」をブログに連載し、その中で代替となりうるコージェネレーションについても記述した。その時の導入予測は上の図の通りであり、日本ガス協会の予測の半分ほどである。
火力発電所の発電効率も上昇しており、コージェネレーションの省エネというメリットも、今後とも縮小していく。このため、ガス会社含めコージェネレーションを取り巻く業界は、国内において今年度のような好況が続くだろうといった甘い期待は止めた方が良い。

by ecospec33 | 2011-10-28 17:58 | ●エネルギー問題  

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