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容器包装リサイクルの行方Ⅴ(社会的費用-便益=社会全体のコスト、再商品化手法)

容器包装リサイクル法の10年目の見直しの審議会において、『事業者側の再商品化の費用負担が約400億円に対し、自治体の容器包装廃棄物の分別・収集・保管の費用が約3000億円であり、特に容器包装リサイクル法施行後、新たに分別収集を始めたことにより約380億円の費用が増加しており、過大な費用負担である。』との指摘が、地方自治体と市民団体からなされた。

これに対し、事業者側から『自治体の算出根拠が明白でない、自治体で効率的でない運用がなされていないのではないか。』という指摘があったことから、2007年に環境省が一般企業と同様な会計制度を取り入れた「一般廃棄物会計基準」ガイドラインを地方自治体に示し、コスト分析と評価を行い、効率的な運営に努めるよう指導した。
また、これに合わせて、環境省は「一般廃棄物処理有料化の手引き」と「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」のガイドラインを示し、それぞれ、一般廃棄物処理(ごみ)の有料化の推進および廃棄物の減量とその適正な処理を指導している。

経済産業省は、容器包装リサイクル法の施行によって、事業者と自治体の「社会的費用」が増加したのに対し、廃棄物の焼却・埋め立て費用の削減、枯渇性資源の削減などによって「便益」を得たとして、その差額である「社会全体のコスト」を280億円であると算定している。
この「社会全体のコスト」を低減できたのか明確にすることが、今年から始まった容器包装リサイクル法の再見直しの課題の一つである。
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1年以上にわたる10年目の見直し審議によって、2006年に容器包装リサイクル法が改正されたが、「政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。」とする付帯決議が、衆議院で17項目、参議院で11項目なされた。非常に多い項目数であると言われている。
この中には、発生抑制を最も優先すべき、ファストフードなどでの再使用容器の利用、ペットボトルの再使用の検討などがあり、また『プラスチック製容器包装の再商品化手法については、循環型社会形成推進基本法の原則を堅持すること。』という1項目がある。
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これは、法の基本方針が改正され、プラスチック製容器包装の再商品化手法について、材料(マテリアル)リサイクルとケミカルリサイクル4 手法に加えて「円滑な再商品化の実施に支障を生ずる場合に、固形燃料等の燃料として利用される製品の原材料として緊急避難的・補完的に利用する。」とし、燃料化を追加したことへの抵抗的な決議と言える。
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2007年に、再商品化を担う日本容器包装リサイクル協会が、再商品化が高額となる材料リサイクル優先の問題点を明確化するために、「再商品化手法に関する環境負荷等の検討」を行い、『材料リサイクル手法が特段優れているとはいえない。』と結論づけている。
この再商品化手法に関しては、今年から始まった法の再見直しでも、検討されるものと思っている。

廃棄物と容器包装リサイクルに関し、1回の異なった話題をはさみ、これまで6回連載し、その現状を整理し、問題点を指摘した。とりあえず、この話題を終えたいと思う。

by ecospec33 | 2011-07-23 08:22 | 〇容器包装リサイクルの行方  

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