電力供給不足に電力貯蔵の効用(NAS電池、日本ガイシ)
電力会社とメーカーである日本ガイシが現地調査をしてくれたのだが、その当日、本社に突然電話がかかってきた。その日本ガイシの技術担当者が「また一緒に仕事がしたいですね。」と懐かしい声で話しかけて来た。
数年前に用水処理など環境事業部門を切り離したが、2000年当時は、日本ガイシは焼却施設を手掛けていて、数社と競合させた上で選択した企業であった。
その焼却施設は食品企業の工場として最大規模のもので、ダイオキシン対策はもちろんのこと、熱回収装置も施されたエネルギー効率を高めた非常に完成度の高い設備であったが、連続操業に課題があった。これを、電話をくれた彼、設計者である若手技術者と解消したのである。
NAS電池は東京電力と日本ガイシが、NEDOの支援のもとで開発した二次電池(充電式電池、蓄電池)である。このNAS電池の設置に対し、瞬停(瞬間停電)、電力負荷平準化、ピークカット、非常用電源としての経済的なメリットが少なかったため、残念ながら、彼とは仕事が出来なかった。
東京電力の技術営業は、2000年以降何度となく売り込みに来ていたのだが、柏木孝夫東工大教授からも「電力貯蔵はエネルギー増大につながることを、忘れてはならない。」と直接ご指導いただいたこともあり、電力貯蔵には懐疑的であったので断り続けていた。
NAS電池はコンパクトで高効率と言われているが、放電(電池から電気を供給)が吸熱反応であるため300℃の加熱が必要であり、約80%である。
また高額であることがネックである。東京電力がその開発費を負担しているということで、東京電力とその他の電力会社とは価格が異なっていて、東京電力管内の方が安価であり、15~25万円/kWであったと記憶している。
またナトリウムを使用しているため消防法の適用も受けるので、離隔距離を取った十分な設置スペースが必要である。
発売から10年近くが経過し、風力発電、太陽光発電など自然エネルギー(再生可能エネルギー、グリーンエネルギー、クリーンエネルギー)発電の揺らぎを防止するなど、その適用はますます増加している。
この6月17日に東北電力は、原発停止対応として電力供給強化のために、能代火力発電所構内に大容量8万kWのNAS電池を設置する計画を発表した。電力需要が低い深夜のうちに蓄電しておき、需要が高まる時間帯に放電する仕組みである。
電力供給不足の節電対策として、キリンビールは取手工場のNAS電池を最大限活用するという。
ともあれ、高質な技術力と技術者が時代の要求に沿って開花していくことを期待したいと思う。
by ecospec33 | 2011-06-21 09:56 | ●エネルギー問題