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福島第1原発事故とローマクラブ

1975年に大手乳業会社に入社式で、高名な学者でもあった生産部門の役員から1972年にローマクラブが発表した「成長の限界」の話を初めて聞いた。
1973年の第1次オイルショックが社会に影を落としていた頃であり、「人口増加、環境破壊、食糧不足、天然資源の枯渇により成長が限界に達する。」という、現実的に起こりうるであろう将来に対し、不安を感じた。

この入社式のすぐ後に、本社と主要工場の横断的な「資源・エネルギー節減活動」の事務局のメンバーとなった。
当時は、資源といっても洗浄用の節水活動が主であり、エネルギー節減の本格的な活動は1980年の第2次オイルショックまで待たなくてはならなかった。
節水は容易にできて、全工場の使用水量を半減することが出来た。当時は、まさしく「濡れた雑巾を絞るように」という言葉通りに、目的を達成した。
余談であるが、第2次オイルショック後の省エネルギー活動もそうであったが、当時は全てが手書きであり、パソコンが今のように普及していれば、事務局は効率的で質の高い仕事が出来たと思う。
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ローマクラブの「成長の限界」は、環境ホルモンの脅威を指摘したカーソンの「沈黙の春」と並ぶ、環境問題を扱った古典的名著と言われている。
ローマクラブは、持続可能な社会実現に向けた活動を続けている。その事務局長であるイアン・ジョンソン氏のインタビュー記事が、6月12日の読売新聞「経済復興を聞く:原発議論 長期的視点で」に載っており、示唆に富む意見なので抜粋した。
「原発事故は、放射能汚染地域が限定される局所的な問題だ。CO2排出は地球規模で進む現実的な問題だ。・・・脱原発を優先するあまりCO2排出量が増えてもよいと妥協するのは誤り・・・既存の原発の廃炉コストを低く見積もったり、原発を止めても再生可能エネルギーで代替できる、と甘く想定したりしてはいけない。・・・日本は原子力の安全を見直すことになるだろうが、今以上の改善が可能なのか、どんなエネルギー源が使えて、コストはどれだけか。正しい情報を提供し、それに基づいて国民が選択することが重要だ。」

東日本大震災から3か月目に当たる昨日には、脱原発、反原発のデモ行進が全国各地であったそうである。
福島原発事故によって、一般市民と行政との関わり方が大きく問われることになった。
定期点検停止中の原発の運転再開は容易ではないと考え、電力供給不足が長期化することを前提に、企業も行動しなくてはならないだろう。

by ecospec33 | 2011-06-12 17:43 | ●原発問題と電力需給逼迫  

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